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2020年6月15日

木曜日、NYダウが史上4番目の下げ幅、▲1800ドル強の下落

鈴木一之

◎日経平均(12日大引):22,305.48(▲167.43、▲0.75%)

◎NYダウ(12日終値):25,605.54(+477.37、+1.89%)

 

 

鈴木一之です。マーケットは楽観と悲観が壮絶に入り乱れています。

 

週の初めは景気敏感の低位株、そして週の後半は景気回復に悲観的で再び「ウィズ・コロナ」の成長株へと目まぐるしく変化しました。

 

コロナウイルスの感染被害は小康状態に入ったと言ってよいのでしょうか。日本をはじめ先進国が経済活動を再開させました。日本は「ステップ3」にまで進んでいます。

 

先々週の金曜日に発表された米国の5月・雇用統計は、大方の予想をはるかに超えて、失業率の下げ止まりと雇用者数の増加が示されました。5月の失業率は13.3%、4月の14.7%からわずかながら改善しています。

 

職を失った点に関して、統計上のカウントが間違っているとの見方も根強いため、米国の経済状況に関してはもう1か月、数字を見てみないとはっきりしません。人種差別問題に再び火がついて、「BLM」の大規模デモが米国のみならず世界各地で続いています。これもコロナ危機とまったく無関係とは言い切れない部分があります。

 

いずれにしても感染者数の拡大が本当に心配されます。

 

それでも経済活動が再開されたことで、株式市場にも楽観的なムードが広がっていたのは確かな事実です。先週の米国市場では、NASDAQが史上初の1万ポイントを上回って最高値を更新しました。

 

NYダウも堅調で、キャタピラーやボーイングなど景気に連動する銘柄の反転が上昇を支えています。

 

コロナ危機で売り上げが消滅してしまった典型的な業種(航空会社、旅行代理店、外食店、アパレル、スポーツジム、テーマパーク)、あるいはもう少し周辺領域でも、チケット販売、イベント、通所介護、人材派遣あたりの株価が、厳しいながらも徐々に底値を入れて反転しつつあったところです。

 

そのような楽観ムードが広がっていたそのすぐ目の前で、株価が再び大きく下落しました。水曜日のNYダウは▲1860ドルの下落で、過去4番目という大きな下げ幅です。

 

3月下旬から4月初旬にかけて、崖から落ちるように株価が下落したあの時の状況がまざまざと思い出されました。ボーイング、キャタピラー、JPモルガンなど景気動向に連動する銘柄が下げています。アップルの株価は健在です。

 

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きっかけとなったのは、米国の水曜日に結果が判明したFOMCと、それに続くパウエル議長の記者会見です。

 

FOMCでは、少なくとも2年後の2022年末までは、現在のゼロ金利政策が継続される方針が明らかにされました。声明文は前回の4月とほとんど変わっていません。ポイントは先行きの政策金利に対する見方で、FOMC構成メンバー17人のうちの15人が、2022年末まで「0.00-0.25%」の水準を続けるとしました。

 

同時に量的緩和による資産購入の目標も明らかにされ、米国債を中心に月間1200億ドルの買い入れ方針が決定されました。これが楽観的な見方に傾いていたマーケットに冷や水を浴びせかける形となりました。

 

パウエル議長の記者会見でも、米国経済の先行きに対してきわめてネガティブな表現で慎重な見方が示されました。

 

ゼロ金利の長期化、量的緩和の一段の強化、という強力な金融緩和策が続けられることが判明したにもかかわらず、米国の株式市場は大きく下落しました。

 

これまで「経済に関する悪いニュース」は、金融緩和を引き出すことになって「株価にとって良い材料」でした。それが適温相場の時代の定番的な思考パターンでした。

 

それが今回はもはやそうではなく、「経済への悪いニュース」はすなわち「株価にとっても悪い材料」へと変化したようです。「パウエル・プット」の効き目がなくなってきたとも見られます。

 

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米国は追加の経済対策を含めると4兆ドル(400兆円)を超える財政支出を決定したばかりです。日本も200兆円を越える経済対策を組み、EUでも財政規律派のドイツを財政支出に踏み切らせるほどに、各国とも巨額の経済支援に踏み切る体制を整えました。

 

借金に依存する財政構造への懸念はつきまといますが、今はそんなことを言っている場合ではありません。民間企業も政権ももちこたえられず、中小・零細企業が消滅してしまったところから再び経済を立ち上げるのは容易なことではありません。

 

これほどの経済対策を打ち出しても、今後の経済の回復力は緩慢なものにしかなりません。FOMCの構成メンバーの見方はきわめて慎重です。米国の失業率は2020年10-12月でも9.3%にとどまり、2021年末でも6.5%にしか届きません。コロナ危機が起こる前の3~4%台に戻るのは相当の時間がかかるとの判断です。

 

それがパウエル議長の記者会見での慎重な見方につながっています。2008年のリーマン・ショックの時は、中国が経済的な存在感を強めていました。4兆元(50兆元)を越える財政支出をすばやく決定し、そこに米国と日本が追随して、世界経済は回復に向かいました。「百年に一度の経済・金融危機」がわずか10か月で修復できたのも、中国のプレゼンスがものを言いました。

 

今回は米中貿易紛争もあるせいか、中国が表に出てくることが少ないように感じられます。楽観ムードとはほど遠いところで、株価だけが上昇を続けていました。

 

「コロナバブル」と一部で呼ばれるほどの株価のリバウンドが5月は続きましたが、6月はスタートから再び波乱状態です。現在の経済状況を楽観視するにはあまりに時期尚早で、あらためて米国の長期金利の上昇、低下のリズムに目を凝らす状況に向かいます。

 

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東京市場に関して言えば、今週のポイントは以下の数点です。

 

(1)マザーズ市場

 

東証1部市場には存在しない、DX時代の猛者が集います。市場全体が軟調になればなるほど、これらの成長(期待)企業に対する注目度が高まります。

 

すららネット3998(オンライン学習)、サーバーワークス4434(クラウド)、

 

(後略)

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鈴木一之