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2020年10月5日

トランプ大統領がコロナウイルスに感染、激動の1週間が週をまたいで続く

鈴木一之

トランプ大統領がコロナウイルスに感染、激動の1週間が週をまたいで続く

◎日経平均(2日大引):23,029.90(▲155.22、▲0.67%)
◎NYダウ(2日終値):27,682.81(▲134.09、▲0.48%)

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鈴木一之です。10月になりました。なんという事態の展開の速さでしょう。

「激動の~」という表現はマスメディアでもよく使われますが、これほどまでに変動の激しい日々を過ごしたこともあまり記憶がありません。強いて挙げれば、ソ連のペレストロイカに沿って東欧諸国が次々と市民革命を起こし、最後はベルリンの壁崩壊とソビエト連邦の解体につながった1989年後半の日々を思い起こさせます。

先週の出来事を時系列に振り返ってみます。

9/28(月):キオクシア上場延期、SMICとの取引に報告義務、9月権利付き最終日
9/29(火):NTT、ドコモをTOBで完全子会社化、基準地価3年ぶりに下落
9/30(水):米大統領選、第1回テレビ討論会、「史上最悪」との評で後場から急落
10/1(木):東証システム障害で初の終日取引停止、日銀短観(11四半期ぶりに改善)
10/2(金):東証再開、トランプ大統領夫妻がコロナ陽性反応、後場から急落

このうちのどれとどれがリンクしている、いないはここでは問いません。目下のところでは、トランプ大統領の容体が世界経済の最も重要な関心事であることは疑いの余地はありません。

1か月後に迫った大統領選挙を本当に戦えるのか、岩盤支持層と見られた白人低所得者からの求心力が衰えはしないか。再選戦略が大きく揺らいでいることは事実です。

お伝えしたいことは、毎日のように非連続的な変化のきっかけが連発して出てきたということです。

「非連続的」と記しましたが、必ずしもそうではないのかもしれません。キオクシアの上場延期は、半導体市場に対して先行きの不透明感が急速に高まってきたからでもあります。それは前週のうちに明らかにされた、SMICとの取引を米商務省に対して報告義務を課したことからつながっています。

そしてそれはファーウェイに対する全面的な禁輸措置とも連携しており、米中間の対立がテクノロジーの先端技術を巡る争いに完璧に舞台を移していることにもつながります。

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ファーウェイが半導体を調達できなければ、頼みの「5Gスマホ」の製造計画に支障をきたすことになり、世界中が期待を寄せていた「5G元年」の2020年商戦はたちどころに大きな停滞局面に直面します。

5Gが前に進まないと、その技術を底流とした自動車の自動運転技術やIoT(工場のデジタル化)、スマートグリッド、スマートシティ構想も滞ることになりかねません。

現実問題として日本も、通信基地局の中継器にはファーウェイの通信機器や半導体に頼っていた部分が大きく、他社製品での代替は簡単には効きません。ドコモはNTTのグループにもう一度戻り、再び子会社となって次世代通信規格である「6G」での覇者を目指すと言い始めています。5Gでの競争を戦う前からあきらめたかのように見えます。

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その米中間の対立の中心人物として立ちはだかるトランプ大統領が、コロナウイルスに感染し病院に隔離されました。思っている以上の重病説も流れています。政治家の健康不安説はタブー中のタブーです。政敵につけこまれ、メディアも相手にしなくなります。

大統領選まであと1か月。今週は副大統候補によるテレビ討論会が現地・水曜日に開かれます。トランプ氏vsバイデン氏による第1回目のテレビ討論会の評価は散々なものでした。わざと偽悪的な態度を採って、最低の悪役を演じたとしか思えないような振る舞いで、討論に費やした時間はほとんどなかったように見えます。ある意味では歴史的なイベントとなりました。

ひょっとしたら切れ者の選挙参謀がバックにいて、戦略として考え抜かれた上で第2回、第3回のテレビ討論会で華麗な逆転劇を画策しているのかもしれません。しかしそれもコロナ陽性による2週間の病院隔離でむずかしくなりました。

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バイデン候補が大統領選で勝利するとの観測が強まるたびに、東京市場を含めて世界の株式市場が下落します。富裕層、大企業への課税強化、銀行規制の強化、オバマケアの復活。まともな政策のようにも見えるのですが、株式市場はそれらをことごとく嫌がります。

そうこうしているうちに、先週からハイイールド債の上乗せ金利が上昇しつつあります。金融リスクが次第に蓄積しつつあります。

商品市況も海運運賃を除けば、半年ぶりに下落基調に入り始めています。ロンドンの非鉄市況は9月15~20日にかけてピークを形成し、先週末にかけて軒並み大きく下落しております。WTI原油価格も再び37ドル台まで値下がりしました。

上がって下がってばかり繰り返している景気敏感株が下げ基調から抜け出すのはいつ頃になるのでしょうか。バリュー株に再びバリュー株としての価値が生まれつつあります。

目下のところはマザーズ銘柄を中心として、今期・来期の業績のプラスの伸び率の大きな銘柄を物色する流れが続きそうです。出遅れている銘柄もまだまだたくさんあります。

「不確実性」という意味でのリスクが急速に高まっている模様です。「秋は魔物が棲む」と言われる10月相場。米国では益出しと損出しの売りが出やすい、換金売りの時期に入りました。

東証のシステム障害に関しては、少し大騒ぎし過ぎているようなところもありますが、通常のシステム障害にバックアップの不備が重なるという単なる技術的な問題にとどまらず、相場の転機につながりかねないというジンクスを呼び覚ましています。

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数少ない明るい話題は「GoToトラベル」の東京発着分の拡大です。感染者数の増加が気になりますが、旅行関係者にとってはこの上ない朗報です。

何よりもご高齢の方々の姿が街に戻りつつある点です。3月以降はシニア層の姿が日本中から消えていました。コロナウイルスの感染力は年齢の高い人ほど厳しい状況です。もちろん感染リスクは存在しますが、それでは経済が立ちいかなくなり、両者の兼ね合いが難しいところです。

それが最近は、高齢者の方々の姿を街で見かけるケースが増えているように思います。若者(Z世代)、ビジネスマン、働く女性、そしてご高齢の方々。インフルエンザ流行の季節が近づいていますが、それでも一般社会で止まっていた時計は、少しずつですが歩みを開始しています。

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先週の東京市場は、TOPIXが続落しました。その前の週に5週ぶりに下落した影響を引きずっています。

前週は4連休明けで立ち合い日数が3日間しかなく、それに続いて先週は東証のシステムダウンがあったため、実質的には「祝日」が1日は行ったようなもので4日間の立ち合いでした。

東証1部では中・小型株に対する売り物が目立ちました。マザーズ市場は活況を呈しており、東証マザーズ指数は3週連続で上昇しています。東証の小型株とマザーズ上場銘柄の位置づけが同じ方向ではなくなりつつあるかのようです。

引き続きバリュー株は総じてさえない動きに終わりました。景気指標がかんばしくなく、商品市況も軟調なために、「バリュー株」イコール景気敏感株には投資マネーが向かいにくくなっている模様です。

それでも東証1部では、引き続き上場来高値を更新する銘柄が目立っています。先週は協和発酵キリン(4151)、三浦工業(6005)、荏原実業(6328)、ダイフク(6383)、富士通ゼネラル(6755)、カプコン(9697)、バンダイナムコHD(7832)、オリンパス(7733)が上場来高値に到達しました。二極化相場が続いています。

セクター別の騰落では、TOPIX-17業種のうち値上がりしたのは「情報通信・サービス」の1業種のみ。残りの16業種が値下がりしました。

「情報通信・サービス」にしても、NTTドコモ(9437)がTOB価格の3900円に向けて+40%も上昇した影響が大きく出ています。「マーケット・アナライズplus」でも述べましたが、ドコモの完全子会社化、非上場化にはこれから解き明かすべき疑問点がいくつも浮かんできます。

・なぜ子会社化するのか
・それを誰が判断し推進したのか
・5G戦略はどうなるのか
・同業他社はこの事態をどう判断するのか
・日本中で「親子上場の解消」が始まるのか
・外国人投資家の評価はどうか
・4兆円の買収資金は次にどこに向かうのか
・次なるTOB対象はどこか
・ドコモの後継となる日経平均採用銘柄は何か

どの疑問点をとっても簡単に回答を得ることはできそうになく、株式市場では今秋以降も様々な注釈や解説が出てくることでしょう。

日本を代表する大企業、業界トップの超優良企業、時価総額で12兆円規模の巨大企業が市場から忽然と姿を消すという事態が、あとに何の影響も残さないはずはありません。

このほかでは「「自動車・輸送機」や「電機・精密」が意外としっかりしていました。HOYA(7741)に続いて

(後略)

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鈴木一之