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2021年1月11日

年明け、NYダウは最高値を更新、日経平均は28,000円の大台乗せ

鈴木一之

◎日経平均(8日大引):28,139.03(+648.90、+2.36%)
◎NYダウ(8日終値):31,097.97(+56.84、+0.18%)

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鈴木一之です。年明け第1週の取引から大きなニュースが飛び交いました。今年を暗示するような展開です。

まず緊急事態宣言です。東京都をはじめ首都圏に緊急事態宣言が発令されました。大阪や京都も後を追う形で、それぞれ新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるべく、動きを活発化させています。

今回の規制は飲食店にとどまっています。昨年春の学習効果が浸透していることもありますが、その一方で医療現場では危機感が一段と高まっています。コロナ危機が社会に与えるダメージや職種や所得階層によってかなり濃淡があるようです。

1月4日、月曜日の大発会は軟調なスタートとなりました。30年ぶりの高値となった暮れの熱気はどこかに忘れてきてしまったような年の始まりでした。

月曜日から水曜日まで日経平均は続落となりました。このあたりまではマーケットは表面的には静かな展開を余儀なくされましたが、最初のヤマ場はやはり米国からもたらされました。

1月5日にジョージア州の上院議員選の決選投票が行われ、2議席をめぐって民主党が勝つか、共和党が勝利を収めるかで今後の議会運営ががらりと変わってきます。

結果はすでに判明しています。民主党が2議席とも確保して、これで上院でも多数派は民主党という結果となりました。この投票結果を待っていたかのように、全世界の株式市場が一斉に上昇を開始しました。

米国の大統領選挙および議会選挙は常にマーケットでも大きな話題となりますが、これほどの劇的な変化をもたらしたことは、これまでなかったのではないでしょうか。NYダウ工業株、NASDAQともに大きく上昇し、新年早々から史上最高値を更新しています。

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バイデン大統領が誕生し、上院と下院の両方で民主党が多数派となる、いわゆる「トリプルブルー」、「ブルーウェーブ」が現実のものとなった瞬間です。このような状態は民主党の選挙公約である増税とハイテク規制を強化させるため、株式市場にとって明確な売り材料とされていました。

しかし現実にはそうはなりませんでした。売り材料視されるどころか、上院決選投票の結果を待たずに株価は上昇を始めています。景気対策に前向きな民主党政権の誕生を、諸手を挙げて歓迎している様子がうかがえます。

コロナ禍で苦しむ米国民に対して、バイデン政権は増税を棚上げして、これまで以上に景気対策を強めざるを得ないとの見方が急速に広がっています。それがマーケットを押し上げています。株価は上昇。長期金利も上昇、ドルも原油も金も上昇、ビットコインまでが上昇しています。

ジョージア州の選挙結果を受けて、トランプ大統領の熱烈な支持層は首都ワシントンで大規模な抗議集会を開き、議事堂に乱入するという異常な事態を引き起こしました。残りの任期は2週間を切っていますが、民主党は週明けにもトランプ大統領の弾劾決議を求める構えです。

トランプ大統領のツイッターのアカウントは永久に閉鎖され、政権末期はまるでひどい有り様です。選挙に基づく米国の政権交代がこれほどの事態に発展することを誰が予想できたでしょうか。

それでも株価は上昇しています。バイデン新政権の新しい閣僚の顔ぶれもほぼ決まり、バイデン政権が実施する経済と外交関係の根底からの立て直しに早くも期待する動きが広がっています。

日経平均は年末年始をまたいで27,000円台に乗せたばかりですが、それが先週末には早くも28,000円の大台を突破しました。景気敏感株を中心に物色対象は日を追って拡大しています。

バイデン新政権の目玉政策である気候変動、環境関連株が次々と人気化しています。米国ではテスラの株価は年末から11連騰を記録して、先週末も史上最高値を更新しました。

マーケットは「いいとこどり」と評されても仕方のないほどに、よい側面ばかりを評価して株価が上昇しています。個々の銘柄ベースでは、出遅れている割安株を物色する冷静さを保っています。それはそれで安心感につながります。

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昨年末から年明けの物色の方向性を見ていると、明らかに景気敏感株およびバリュー株にシフトが始まっています。鉄鋼業界の大きな設備投資機運を受けて、黒崎播磨(5352)、イソライト工業(5358)が動き出し、電力業界でもJパワー(9513)、太平電業(1968)、東京エネシス(1945)が活況です。

愛知製鋼(5482)は希土類磁石の出遅れ物色です。エー・アンド・デイ(7745)は半導体関連の計測需要です。サンケン電気(6707)、新電元(6844)、三社電機(6882)はいずれもパワー半導体に関連しており、それは富士電機(6504)につながってゆくと見られます。

そうなると今年の本命株には、あらためて日立製作所(6501)を取り上げてみたいものです。昨年暮れから鮮明になっている気候変動関連の投資ニーズは、最終的には電力設備投資の再燃につながると見られます。日本のエネルギー構成そのものを大きく変えてゆかないと、2050年の温暖化ガスの削減目標には届きません。

そうなると企業家たちは、今年のどこかの時点で大規模な設備投資に踏み切ることになるはずです。景気の動向は最終的には設備投資が左右します。輸出に頼らなくても、日本国内の企業の設備投資によって、景気拡大のかなりの部分をまかなうことができるタイミングが近づいているように思えてなりません。

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1月第1週の株式市場は、TOPIXが年をまたいで続伸しました。年明けは軟調な動きでしたが、週後半にかけて騰勢が強まり、2018年2月以来の高値水準に達しています。日経平均は30年ぶりの28,000円台となりました。

物色の中心は昨年末と同様に大型株が中心です。規模別指数では大型株が小型株をアウトパフォームする展開が続いています。それとともにジャスダックの騰勢も強まりました。日経ジャスダック平均は年末年始をはさんで7連騰となりました。

グロース株とバリュー株では、先週はバリュー株に流れが大きく傾きました。REITの連騰は途切れ、東証REIT指数は7週ぶりに下落しました。REITオフィス指数は10週ぶりの反落です。

TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、14業種が上昇し3業種が値下がりしました。

値上がりトップは「鉄鋼・非鉄」です。昨年末は動きが鈍く騰落率では下位に位置していました。それが値上がりトップに浮上し、セクター間の循環物色が再び始まっていることを強く印象づけられました。

値上がり第2位は「エネルギー資源」です。原油市況が50ドルの大台を突破してきたことが素直に好感されています。

それに続いて値上がり第3位が「金融(銀行除く)」、続いて「銀行」という金利敏感株が登場しました。米国の10年国債金利が1%の壁を突破しており、再び強まってきた金利の上昇と株高がどこまで共存できるか、綱引き状態が始まりつつあります。

このほかにも「機械」、「電機・精密」、「商社・卸売」という景気敏感株が広範囲に買われました。

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「鉄鋼・非鉄」のチャート(直近3か月)
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=277&mode=D

「エネルギー資源」のチャート(直近3か月)
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=272&mode=D

「金融(除く銀行)」のチャート(直近3か月)
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=286&mode=D

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反対に値下がりした3業種には、「運輸・物流」、「食品」、「不動産」という内需関連株がそろいました。「不動産」セクターは金利上昇を嫌気している部分が大きいようです。

緊急事態宣言に見られるように、国内の人の移動は当分の間、減少することは避けられません。「運輸・物流」には

(後略)

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鈴木一之