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2021年1月17日
バイデン政権の誕生前夜、経済対策への期待から金利は上昇、株価は調整含み
◎日経平均(15日大引)28,519.18(▲179.08、▲0.62%)
◎NYダウ(15日終値)30,814.26(▲177.26、▲0.57%)
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鈴木一之です。コロナウイルスへの厳戒態勢の下で大学入試共通テストが挙行されました。受験生の皆さん、吉報を待っています。
年明けから瞬く間に半月が過ぎました。時の流れが加速しているような錯覚に陥ります。先週も世界は激動のうちに推移しました。
コロナウイルスの感染者数はついに全世界で9300万人を超え、死者数は200万人に達しました。勢いは衰えるどころか速度が上がっています。
日本政府は大都市を中心に緊急事態宣言を発令し、海外とのビジネス客の往来を全面的にストップしました。変異種が国内に広がるのを防ぐためと見られます。
午後8時に閉店しなければならない飲食店への影響はきわめて大きいでしょうが、今のところ人の出には目立った変化は出ていません。これを感染リスクの観点から危険の兆候と見るか、経済活動の観点から落ち込みはさほどでもないと見るかは判断の分かれるところです。
確かに昼間のオフィス人口は大幅に減少しています。ビジネス街の東京・丸の内周辺は明らかに人通りが少なくなっています。リモートワークへの移行がそれだけ進んでいることの表れで、実際に私自身も仕事上の打ち合わせや取材はかなりの部分がオンライン上で完結するようになりました。
しかしオフィス街から出て銀座や渋谷などの商業地を歩くと、人の流れはさほど減ってはいないことが実感されます。オンラインに移行できる部分とそうでない部分のすみ分けが徐々に明らかになっているようです。
この辺の動きは株価にも表れつつあります。先週は2/8月決算期の小売企業の決算発表がありました。そこではっきりしたことは、昨年春先に急激に売上を伸ばした食品スーパーやドラッグストア、ホームセンターは勢いが鈍っています。
その反対に、昨年は塗炭の苦しみにあえいだ外食産業やアパレルなど、消費者に直結する小売企業の業績が底入れしたかのような印象を受けます。モメンタムの変化という言葉がふさわしいのでしょうか。
ことわざで言うところの「朝三暮四」のたとえのように、同じ増益(減益)でも「朝3つ、夕方に4つ」と「朝4つ、夕方に3つ」ではそこから得られる感触や印象はかなり違ってきます。
春先にどん底の厳しさを味わった分だけ、外食ビジネスや百貨店、アパレル産業はわずかな変化でもプラス方向への反応が先週は随所に見られました。
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年明けの世界経済は回復への期待から始まりました。12月31日に発表された中国・12月の製造業PMIは「51.9」で市場予想の52.0とほぼ同じ水準でした。引き続き堅調と言えるでしょう。
1月5日の米国・ISM製造業景況感指数も12月は「60.7」+3.2ポイントときわめて好調です。世界の株式市場は昨年暮れまでの上昇基調をそのまま継続してスタートしました。
しかしその後の統計数字が続きません。米国の12月・雇用統計では非農業部門雇用者数が▲14万人の減少となりました、事前の予想は+7万人程度の増加を見越しており、それが実際には8か月ぶりの悪化に転じました。
先週の米国株式市場はNYダウが1勝4敗で、その前の週の4勝1敗からそっくり逆転しました。下げ率は小さいままで、キャタピラーなどの景気敏感株は堅調に高値追いを続けていますが、テクノロジー株を中心に上昇が鈍りました。
バイデン新政権の第1弾の政策が明らかにされ、総額で1.9兆円(日本円で200兆円)に達する巨額の財政支出が政権発足からすぐにスタートします。それを受けて金利の上昇がじわじわと始まっており、これまで高騰を続けた株式市場にはプレッシャーとなりつつあります。
今週の最大のヤマは米国の大統領就任式ですが、それに日銀の金融政策決定会合が注目を集めそうです。
大統領就任式に関しては。これはもうありとあらゆるデマ、噂、観測が飛び交っています。トランプ大統領の熱烈な支持層が就任式に合わせて大規模な集会を行い、そこでテロまがいの混乱が発生する、というものです。首都ワシントンは厳戒態勢で、軍隊が議事堂を泊まり込みで警護するのは南北戦争以来のことだそうです。
日銀会合ではそこで決定される事柄よりも、終了後に予定される黒田総裁の会見内容が注目されそうです。3月をメドに現在の金融政策の点検が行われる予定で、なにかと批判の多いETF購入の買い入れに関して関心が高まってゆく可能性があります。
今の段階で日本の金融政策が変更される確率はきわめて低いと見られますが、すでに株価は30年ぶりというレベルまで上昇しており、ETF購入による金融緩和には一定の効果がありました。これ以上続けるどうか、金融政策の是非が問われそうです。
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1月第2週の株式市場は、TOPIXは小幅の続伸となりました。3連休明けでようやくお正月休みが明けて本格的な経済活動がスタートした印象がありますが、上昇率はわずか+0.09%にとどまり、ほとんど横ばいに近い値上がり幅です。
物色の中心は引き続き大型株です。規模別指数では大型株が小型株をアウトパフォームする状況が続いています。7連騰まで上昇を続けたジャスダックも騰勢は一服しました。
グロース株とバリュー株では、引き続きバリュー株に流れが傾いています。REITは前の週に7週ぶりに反落しましたが、これはそのまま続落しました。
TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、9業種が上昇し8業種が値下がりしました。プラス業種とマイナス業種がここまで拮抗するのは久しぶりです。
値上がりトップは「エネルギー資源」です。原油価格が53ドル台まで上昇した影響がストレートに現れました。昨年末のOPEC総会におけるサウジアラビアの減産決定をそれほど評価しています。
値上がり上位には続いて「運輸・物流」が久しぶりに登場しました。前の週はワーストワンから急浮上しました。緊急事態宣言の発令拡大を受けて、ネット通販が再び拡大するとの見方から日通(9062)、ヤマトHD(9064)などのトラック輸送がそろって買われました。本来は行動規制の強化に弱いはずの電鉄株も、株価はかえってしっかりした動きとなりました。
バリュー株の代表格である「銀行」セクターや、これまで動きの鈍かった「食品」セクターも緊急事態宣言の拡大を受けて堅調な値動きとなっています。
食品セクターで動きが目立っているのは好決算のわらべや日洋(2918)、市場変更のブルドッグ(2804)をはじめ、味の素(2802)、キッコーマン(32801)、プリマハム(2281)、ピックルス(2925)、柿安本店(2294)、宝HD(2531)、など巣ごもり消費関連株が中心です。
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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)
「エネルギー資源」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=272&mode=D
「運輸・物流」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=282&mode=D
「食品」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=271&mode=D
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反対に値下がりした業種は、「鉄鋼・非鉄」がワーストで、続いて「自動車・輸送機」、「電力・ガス」となりました。
鉄鋼や非鉄セクターは昨年暮れからのバリュー株の人気回復と景気敏感株の流れに乗って買い進まれてきました。そのために先週は一服感が強まったと見られます。
自動車セクターに関しては、週初に報道された半導体不足によって減産を余儀なくされていることが嫌気されているように見えます。「電力・ガス」に関しては原油価格の上昇が響いているものと見られます。
このほかにも「素材・化学」や「小売」が値下がり上位に並びました。グリーン成長戦略のテーマに沿った環境重視の銘柄がこれまでマーケットでは人気となってきましたが、それも物色がかなり広範囲に広がったため、いったんは一服気味に動いているように見えます。
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値下がり業種のチャート(日足、直近3か月)
「鉄鋼・非鉄」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=277&mode=D
「自動車・輸送機」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=276&mode=D
「素材・化学」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=274&mode=D
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さて、ここからが本論です。株式市場は年明け最初の正念場を迎えそうなムードです。年末年始をはさんで活況を続けるのが半導体や電子部品株ですが、それがここからはいったん調整に入りそうな雲行きです。
先週話題にのぼったニュースの中でもきわめつけなのが、先ほども触れた世界中の自動車メーカーが半導体不足で減産を余儀なくされていることです。
それだけ足元の半導体業界は受注が殺到して需給がひっ迫している状況にあります。折しも韓国のサムスン電子や台湾のTSMCが2020年12月期の決算を発表し、それがいずれもびっくりするほどの好調ぶりだったことから、日本でも半導体、電子部品株はそれに連動して堅調な値動きを続けていました。
自動車業界が減産を強いられるのは余程のことです。トヨタ自動車のジャスト・イン・タイム、「カンバン方式」に象徴されるように、自動車メーカーの在庫管理、生産管理システムは世界の製造業の中でも群を抜いて精緻な仕組みで、長年にわたって積み上げられた至芸の技です。
人類が到達した最高レベル、究極の生産工程と言ってもよいはずです。予期せぬ自然災害や今回のような感染症の拡大でサプライチェーンが滞ることはあっても、生産計画にミスがあって製造ラインがストップすることなど、通常では考えられません。
その「普通では起こり得ない」ことが目の前で起こっています。スマホメーカーと半導体や電子部品の奪い合いに陥っているとの指摘もあり、需要は絶好調ととらえることもできますが、しかしこの手のニュースが報じられる時は少し距離を置いて、冷静に考えた方がよいように感じます。
電子部品や電子機器の業界では、繁忙に直面すると仮需が発生しやすいものです。仮需とは、必要な個数を調達するためにあえて必要以上の数量を発注しておき、あとで必要な個数が手元に集まった時点で、先に出した発注量をキャンセルするというものです。
商行為上ではもちろん許されませんが、部品不足で工場の生産ラインを止めるよりはましだという理屈から過去の繁忙局面ではたびたび見られました。
それが製品サイクルの異なる半導体にまで同じような動きが広がっているというのはあまり経験がありませんが、ひょっとしたら同様のことが発生しているる可能性もあります。中国・武漢のロックダウンにより自動車業界を襲った昨年春の工場の生産ラインの停止と、その後の工場再開という急激なストップ&ゴーを経て、トヨタやホンダでは今下期に生産が急回復しています。
すでに自動車メーカーはコロナ危機に先立って、2018年春ごろから生産調整を始めています。当初は米中貿易紛争の激化が理由でした。それが続いているところへ、今度はコロナウイルスによるロックダウン、
(後略)