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2021年4月19日
株価指数はこう着、個別銘柄では上値追いが随所に見られる
◎日経平均(16日大引):29,683.37(+40.68、+0.14%)
◎NYダウ(16日終値):34,200.67(+164.68、+0.48%)
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鈴木一之です。コロナウイルスの感染拡大が続いています。大阪では5日連続して新規の感染者数が1000人を超えました。英国型の変異ウイルスが猛威を奮っています。
海外では、インドで新規感染者数が1日で20万人を超え、ブラジルでは4000人を超える人が亡くなっています。もはや夏と冬とが反対になる南半球、北半球の区別はありません。
一方で、5か月間に及ぶ厳しい外出制限を課していた英国は、感染者数の拡大を抑え込み飲食店や学校がこの春から再開されています。ワクチン接種も世界最高レベルのスピードで英国民の間で普及しており、きちんとした手順さえ踏めば経済の再開にこぎつけることができるとの十分な事例を示しています。
カギを握るのはやはりワクチンです。日本ではようやく高齢者向けに接種が始まりましたが3600万人分の必要量の確保はまだ不透明な部分があります。遅々として進みませんが、今の日本にとって前進といえば前進です。
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そのような国内事情を抱えながら、株式市場は先々週と同じように週を通じて動きの乏しい展開となりました。史上最高値を更新し続ける米国の株式市場とは明確に異なる光景が見られます。この辺にワクチン接種の普及度の違いが投影されているようです。
株価の上値の重さは、感染拡大によって経済の先行きが再び不透明になってきたこと、3月決算の発表を目前に控えていること、および週末に日米首脳会談を控えていること、などが重なっているようです。
日米首脳会談に関しては共同声明が出され「台湾海峡の平和、安定」が明記されました。これが日本の将来にとってどのような意味を持つか、その影響は現時点では未知数ですが無風というわけに行かないことは明白です。
台湾問題は3月末の「2×2」で盛り込まれたから今回は見送ってもよいのではないか、との見方もあったようですが、米国が強く望む形ではっきりと記述されました。中国を刺激することは間違いないでしょう。トランプ政権とは違って、同盟国を重視するバイデン政権の方向性がこのような形で出ています。
日本はいよいよ集団的自衛権の行使が現実的なものとなってきました。防衛費の増額を求められることはほぼ間違いありません。先週、バイデン大統領は9月までにアフガン撤退を明言しており、地政学的な重点はインド太平洋に急速にシフトしています。
菅首相との会談は、「バイデン大統領が世界で初めて対面で会う一国の首脳」という触れ込みですが、どことなく「先生に職員室に呼び出された生徒」というイメージでした。出されたハンバーガーを前にして進路相談をしているような雰囲気です。
米国の大統領は就任すると、真っ先に最重要の同盟国である英国、カナダの首脳と会うことが慣例だとされています。それをあえて避けて中国を念頭に置いて、日本を呼び出した上で「台湾海峡」を明記するというところに今回の主眼があったように受け取れます。
今回の共同声明を受けて多くの市場関係者の関心は、これで次に中国がどう出てくるのかに集中します。プラスの影響であるはずがありません。日本経済にとってどの程度のマイナスの影響になるのか。不安視する方向に向いているのは間違いありません。
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2017年に韓国に駐留する在韓米軍が、北朝鮮に向けて迎撃用地対空ミサイルを配備した「THAAD」問題の際に、中国は韓国へ観光客の渡航審査を厳しくして韓国に中国人観光客がまったく訪れなくなり、韓国の観光業界が甚大な被害を受けたことがありました。
あるいはフィリピンのドゥテルテ大統領が南シナ海問題の領有権問題で中国に激しく怒りをぶつけた時に、中国はフィリピンの最大の輸出品目であるフィリピン産バナナの検疫を厳しくして、中国向けにバナナの輸出が9割以上も減少するということが起こりました。
現在はオーストラリアです。鉄鉱石やワインへの非関税障壁、オーストラリアへの留学審査の厳格化など、これをやられたら経済的に非常に困るという点を中国は巧みに突いてきます。
日本に関しては自動車と半導体、海・畜・農産物です。1年前に起きた武漢でのロックダウンが、自動車業界と日本の産業界のサプライチェーンにどれほどのダメージを与えたか、想像するだけでおそろしくなります。
コロナ禍における世界経済の回復は、その大部分が米国と中国の回復に負っています。トランプ政権の時は、トランプ大統領が楯となって安倍首相はそのうしろに隠れていました。日本は中国とはできるだけ事を荒立てずに穏便に済ませたいのが本音ですが、しかしバイデン政権ではそうも行きません。
はっきりと自分の意思を示すこと。「ショウ・ミ-・ザ・フラッグ」。旗幟鮮明にしろということです。中国に対する外交スタンスと環境問題に関して、日本はここからは甘えを捨てて、難しい局面に自分自身でかじ取りすることを迫られることになります。覚悟を決めなくてはなりません。
1969年以来。52年ぶりに日米共同声明に「台湾」が明記されることによって、封印されていたパンドラの箱が開けられました。新冷戦時代がまたひとつ、新しい局面を迎えたという実感がひしひしと迫ります。
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先週の株式市場の動きについて。
4月第3週の東京株式市場は、TOPIXが4週ぶりに反発しました。ただし上昇力は限られており、TOPIXの上昇率は+0.07%にとどまりました。下落も小さかったですが、その分だけ上昇率も小さいものになっています。こう着感が一段と強まっています。
グロース株とバリュー株の物色の違いは依然としてはっきりしませんが、次第にグロース株優位の展開となりつつあります。東証マザーズ指数は3週連続で上昇しました。コロナ禍で物色される「ウィズ・コロナ銘柄」が集まるマザーズ市場に資金が向かっています。
安全志向の強まりからか、東証REIT指数は6週連続で上昇しました。
TOPIX-17業種のセクター別の騰落は、値上がりが11業種、値下がりが6業種となりました。TOPIXや日経平均などの株価指数の動きはこう着しているのですが、個々の銘柄や個々のセクターでは上昇する銘柄、業種、下落する銘柄、業種の区分けがなされつつあります。
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値上がりセクターのトップは前の週に続いて「鉄鋼・非鉄」です。
2週続けて週間上昇率のトップに特定の業種が登場することは非常にまれです。上昇率はさほど大きくはないのですが、止まらない鋼材価格の値上がりに支えられて収益の回復期待が高まっていることが背景にあります。
鋼材市況の上昇は止まる様子がありません。最近はコンテナ船不足もそうですが、石油化学製品、穀物市況、半導体価格など、素材市況があまりに激しく変動しています。コロナ危機がもたらした世界的な素材市況の供給不足感はますます強まっています。
上昇率の第2位が「自動車・輸送機」です。自動車株はほとんど動きがありませんが、自動車部品株に一段と底堅さが出てきました。
EV全盛時代がやってきても、ガソリン車はある一定の水準は残ります。EVもそうですがシャシーやトブレーキ、プレス機器など、自動車部品は軽量化した上で必要とされるものがほとんどです。為替市場で1ドル=108円台のドル安・円高に振れた週に、自動車および自動車部品セクターが値上がり上位に登場することがとても印象的でした。
現在の世界のマーケットはドル高を恐れ、ドル安を歓迎していることがうかがえます。背景には新興国で積み上がるドル建て債務の問題と、ドル不足の問題がくすぶっているようにとらえられます。
米国では長期金利の上昇に一服感が見られました。それに伴ってドルが下落するのであれば、新興国で膨らむ債務問題やドル不足の問題も深刻なことにはならない、という安心感につながるのでしょう。
このほかの値上がり上位には「金融(除く銀行)」、「不動産」の金利敏感株が登場しました。米国の金利上昇に対する懸念が一段落しつつある様子がうかがえます。
前年度の決算発表をほぼ終えた「小売」セクターも上昇しました。日本経済新聞の調べでは、小売125社の前期の売上高は22兆円で▲3%、純利益は1748億円で▲58%の厳しい内容でした。今期の見通しはそれぞれ+3%、+400%(3倍)となっています。
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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)
(中略)
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反対に値下がりセクターのトップは「電力・ガス」です。日米首脳会談が終了して、政治経済上の次なる大きな関心は、今週末に開催されるオンラインでの環境サミットです。
果たしてそこで日本政府は、どこまで温暖化ガスの削減目標に踏み込むのか、再生可能エネルギーの導入などが大きくクローズアップされることになります。電力業界の役割は一段と大きくなってきます。既存の電力設備がどれほど活かされるのか、おおいに注目されるところです。
値下がりセクターの第2位は「運輸・物流」でした。大阪府に続いて東京都も「まん延防止等重点措置」の適用を申請し採用されました。JR各社を中心に鉄道株が総じて軟調な動きとなりました。
「電機・精密」が第3位、「医薬品」が第4位でした。半導体関連株の上昇は続いているものの、それ以外のエレクトロニクス株が総じてさえない展開となりました。東芝(6502)の買収問題は中心とされる車谷社長が突然の辞任を発表し、ますます事態は混とんとしてきました。
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値下がり業種のチャート(日足、直近3か月)
(中略)
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2月決算の小売業界の決算が通過すると、いよいよ次は3月決算企業の番が回ってきます。今週の木曜日に注目の
(後略)