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2021年6月23日
FOMCで利上げの1年前倒しが決定、市場は波乱の週末となる
◎日経平均(18日大引)28,964.08(▲54.25、▲0.19%)
◎NYダウ(18日終値)33,290.08(▲533.37、▲1.57%)
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鈴木一之です。関東に続いて東北地方も梅雨に入りました。肌寒い日が続いていますが、夏も一歩ずつ近づいています。店先のビワやブドウがおいしそうです。
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先週の東京株式市場は、それまでのこう着感から一転、急速に動きが出てきました。週後半に米国のFOMCが開催され、そこから新たな展開が広がりつつあります。
週を通じて目まぐるしい展開となりました。順を追って記してゆくと、週初は英国でG7サミットが開催され、週半ばにはスイスで米ロ首脳会談が行われ、日本では内閣不信任案が提出されて(否決)、「骨太の方針」が決定され、そして週末にはFOMCが開催されて、米国の利上げ時期の1年前倒しが明らかにされました。
そしてその間にビットコインは4万ドルを回復し、トヨタ自動車の株価は1万円の大台を突破して、日本では接種券を持った64歳以下の方にもワクチン接種が始まりました。ご高齢の方の接種回数はすでに1900万回(人)を超えています。
それぞれの出来事を材料として取り上げれば、それぞれに関してかなりの分量の論評が必要になります。しかし先週の相場を動かした要因としてやはりFOMCに尽きると思います。
それまでの株式市場は、日経平均で言えば29,000円をはさんで動きがぴたりと止まり、上がりもせず下がりもせずという状態が続いていました。6月15~16日(現地)に開催される米国の公開市場委員会、FOMC待ちだったということになります。
今回のFOMCは事前の見通しでは、テーパリング(資産買い入れの停止)の時期をどのように探ってゆくかがもっぱら焦点が集まっていました。物価の上昇に対してFRBやパウエル議長がどこまで関心を持っているのか、踏み込んだ発言が果たしてあるのか、という点がずっと議論されてきました。
それがふたを開けてみると、2023年中にゼロ金利政策を解除する方針が示しされました。3月の会合では、資産買い入れの縮小はあっても、ゼロ金利の解除は2024年以降とされていたので、突如として利上げ開始の時期に言及されたことに世界中のマーケットは意表を突かれました。
これまで一貫して議長が唱えてきた「足元の物価上昇は一時的」という見方は、表面的にはともかくとして、本心ではかなり違ってきていることとなります。それでも景気と雇用の回復を確実なものとするために、金融緩和は今後も続けると議長は記者会見で強調しています。
ゼロ金利解除の1年前倒しとは言っても、明確な言及があったわけではありません。具体的にはそれはドットチャートの形状で示されました。FOMCに参加したメンバー18人が示した中期的な見通しにおいて、2021年、2022年は前回と同様に中央値はゼロ金利のままですが、2022年中に利上げを見込む参加者が、前回の4人から今回は7人に増えました。
さらに2023年に関しては、前回の7人から今回は13人が利上げを開始するとの見通しを提示しました。そして2023年には、0.25%の利上げを2回実施するという内容を中央値は示していました。これが最大のポイントです。
FOMC後の記者会見においてパウエル議長は、インフレに関して「一時的な要因」との見方は変えないまま、「供給の制約が想定していた以上に大きい」と警戒していることを示しました。またテーパリングに関しては、今後の経済データを確認したうえで具体的に議論を開始する、という議論をしたと表明しました。
米国経済の回復ピッチは急激で、FRBも今回の会合で、前提となる2021年の経済成長率を7.0%に引き上げました。同じように物価見通しも2020~2023年の上昇率は平均で2.2%と、3月の1.9%から引き上げました。これまでの目標だった2%を上回っており、これだけでも今回の利上げ開始時期の前倒しはある意味では自然と言えます。
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マーケットはこの結果に意表を突かれた格好となりました。政策金利の引き上げ時期が早まったことに連動して、発表後から米国の短期金利は上昇、長期金利は低下しました。いわゆる利回り曲線のフラットニング(平たん化)の動きが強まっています。
米国の2年物国債金利は0.25%台(+0.04%)に上昇し、逆に10年国債利回りは1.43%まで低下しました。今後は景気拡大が緩やかなものになり、インフレの動きが抑えられることを意味しています。
株式市場ではそれまでの「インフレトレード」が急速に縮小する動きにつながっています。インフレトレード、すなわち景気の過熱やインフレを当て込んだポジションがこれまで積み上がっていましたが、それが今度は急速に反対の方向に動きます。
具体的には、金、プラチナなどの国際商品は下落し、鉄鋼・非鉄・化学などの素材セクターや資源エネルギー株、海運株などの景気敏感株が売られやすくなります。その反対に、金利上昇が不利となっていたテクノロジー銘柄などの高PER銘柄は、それまで売られていた分だけ買われやすくなります。
週末の米国市場では、NYダウ工業株が金曜日だけで▲533ドル下落しており、週を通じて5日間、丸々下げ続けました。1週間では▲1189ドル(▲3.4%)の下げとなっています。
金曜日はセントルイス連銀のブラード総裁が「インフレが加速すれば2022年後半にも最初の利上げをするだろう」との発言が伝わり、FOMCで前倒しされた利上げ開始の時期がさらに早まるとの見方が波紋を投げかけました。タカ派の中でもさらにタカ派的な発言です。
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これまでのマーケットに充満していた「インフレトレード」のバブル的な状況に対して、金融当局がガス抜きを図っているととらえることもできます。実際に利上げが前倒しされるとなれば、それに先立ってテーパリング、量的緩和の縮小の開始時期も早まることになります。早くも市場予想としては「9月のFOMCでテーパリングを決定、11月に開始」という線も浮上しています。
全人類を巻き込んだコロナ危機に対処して、1年以上にわたって前例のない金融緩和によって株式市場を支えてきたFRBの資産拡大、経済対策が役目を終えて、大きな転換期を迎えようとしています。ハト派からタカ派への変化は仕方がないとしても、それが本当にタカ派への転換なのか、これから市場が見極めてゆくことになります。
ただ、「インフレトレード」の終了の動きも、突如として始まったわけではありません。すでに過去2週間にわたって、代表的な景気敏感株の中の非鉄、鉄鋼、機械セクターには売り物が続いていました。海運セクターは高みまで駆け上がっている真っ最中でしたが、それ以外のシクリカルセクターはむしろ売りの最終局面に近づいているような印象を受けます。
テクノロジー銘柄もNASDAQ市場はFOMCに先駆けて史上最高値を更新しました。今回のFRBの決定も完璧に意表を突くものだったわけではないように感じられます。
ひとつだけ言えることは、歴史的な金融相場はこれで終わり、ここからははっきりと業績相場へと向かうという点です。長期金利はかえって低い位置で安定するようになりました。企業の業績と経営戦略がますます問われることは変わりません。
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先週の株式市場の動きについて、TOPIXは2週連続で下落しました。下落率は▲0.38%と小さなものにとどまりましたが、週前半は大きく上昇し、週の後半はそれ以上の下落となったために、結果としては軟調な印象が色濃く残りました。
その前の週までが非常にこう着感の強い展開だったために、保ち合い状況を上方向にブレイクしたと思ったとたんに、今度は下方向に振られるという目まぐるしい状況です。
規模別指数では、大型株の堅調さが後退し、小型株に流れが移りつつあります。バリュー株の優位が一段と後退し、引き続きグロース株に資金が移っているような印象です。東証REIT指数は5週ぶりに反落しました。
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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターが3業種にとどまり、値下がりセクターは14業種に広がりました。
値上がりセクターのトップは「電機・精密」です。東京エレクトロン(8035)、レーザーテック(6920)に代表される半導体関連株が無類の強さを発揮しています。
イビデン(4062)、三井ハイテック(6966)、トレックスセミコンダクター(6616)、日本電子(6951)、アルバック(6728)など相場全体の地合いに逆行して大きく上昇する銘柄が、後から後から登場してきます。
先週はG7サミットに始まって政治上の重要スケジュールが目白押しとなりました。週末の6月18日には、今年度の経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」が閣議決定されて正式に前進する方向に向かいました。
コロナウイルス対策、行政のオンライン化、デジタル通貨の実現、脱炭素、カーボンプライシングなど、コロナ後の世界で重点的に行われる政策が山盛り状態となっています。
中でも半導体のサプライチェーンを途絶させないことが急務となっています。対中国政策を前面に打ち出す米国は、防衛・軍事の観点からも同盟国との間で半導体の供給網の確立を急いでいます。世界的な半導体メーカーは今では日本以外に移っていますが、製造工程で役立つ部材、製造装置は日本にも数多く存在しており、それらの企業群の目の前の受注が急速に膨らんでいます。
値上がりセクターの第2位は「食品」です。ヤクルト本社(2267)、味の素(2802)、アサヒグループHD(2502)という、このセクターの中核的な銘柄がしっかりしました。食品セクターの全体としては動きは少なかったようです。
第3位は「化学・素材」です。これも同様で、富士フイルムHD(4901)、三菱ケミカルHD(4188)、信越化学工業(4063)などの少数の銘柄がリードしたように見えます。景気敏感株の色彩の強い住友化学(4005)、昭和電工(4004)などは軟調でした。
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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)
「電機・精密」
(攻略)