ブログ

2021年11月15日

NASDAQは11連騰、物価高をものともせず最高値を更新

鈴木一之

◎日経平均(12日大引):29,609.97(+332.11、+1.13%)
◎NYダウ(12日終値):36,100.31(+179.08、+0.49%)

@@@@

鈴木一之です。先週も東京株式市場は一進一退の展開となりました。決算発表シーズンの終盤を迎えて個々の企業の値動きは非常に活発です。今回発表された決算の内容を受けて株価が好反応を示した企業は、今後もしばらく上昇トレンドをたどってゆく構えのように見えます。

反対に、決算発表によって株価が下落した企業は、業績の中身が好転するまでしばらくの間は市場からの厳しい評価が続くのではないでしょうか。それが業績相場の本質的な部分であると受け止められます。業績のよい企業だけが買われ、そうでない企業は人気離散が続くと見られます。

米国ではNYダウ工業株やNASDAQ総合指数が週の半ばまで、連日のように史上最高値を更新しました。今回の決算発表において各方面から事前に出されていた予想値を大幅に上回っていることが評価されています。過半数を超える企業がそのような状態にあります。

日本も企業業績は一見すると好調に見えますが、ずば抜けて内容のよい企業とよくない企業が半々に分かれます。全部を足して平均すると日経平均などの株価指数はほとんど横ばい、わずかに上昇するくらいの良好さにとどまります。

日米で見られる株価指数の騰勢の差は、企業業績の内容だけで十分に説明できるように見えます。

@@@@@

市場を取り巻く外部環境は引き続き動きが活発です。イギリスのグラスゴーで開かれていた気候変動に関する国際会議、COP26は会期を1日延長してかろうじて合意文書をまとめました。

会議が紛糾することは開催前から十分に予想されていました。温暖化ガスの削減量で合意を形成しようとする先進国と、厳しい数値目標を拒んで資金援助を求める途上国との間でまったく意見が合わないのは自明のことです。

最後にまとめられた合意文書でも、議長国のイギリスが強く打ち出した石炭火力発電の利用に関しては、当初の「段階的な廃止」から「段階的な削減」に表現が弱められました。

「パリ協定」では気温の上昇を産業革命前から1.5度以内に抑制することを目指しており、それには2030年に温暖化ガスの45%削減が必要ですが、現状では+13.7%増えることになります。今回の合意ではそれすらも危ういものとなります。

先週から2週間以上にわたり続けられた会議での議論は尽くされており、行動に着手すべきなのは誰もがわかっています。しかしそれができません。先週の株式市場ではテスラが話題を独占したようなところもありました。

@@@@@

テスラの株価が暴騰し時価総額が1兆ドルの大台を突破しました。生産台数が年間70万台のテスラが1兆ドル(114兆円)で、同1000万台のトヨタ自動車が28兆円です。イーロン・マスク会長は保有株式の10%分を売却し、納税資金に充当すべきかどうかツイッターで意見を問いかけました(実際に売却を実施)。

「第2のテスラ」を狙って株式市場ではEV関連企業の人気が一段と高まっています。アマゾン・ドットコムが22%出資する(上場前)するリヴィアン・オートモーティブがNASDAQに上場し、こちらは時価総額が9.7兆円に達しました。GMの規模とほぼ同額です。

リヴィアンは三菱自動車の旧・イリノイ州を買収してEV生産を行っています。今回初めて市販車を出荷しましたがまだ赤字の状態で先行投資がかさんでいます。それでもアマゾンやフォードがバックに控えていることが信頼を呼び、上場に際して発行された新株はブラックストーンやサード・ポイントが引き受けました。

環境規制に厳しい欧州ではEVの市場シェアがじわじわと高まっています。欧州の主要18か国の今年7-9月の新車販売では、EVが30万3273台で全体の比率では12.7%に達しました。前年の2倍です。9月単月ではテスラの「モデル3」がすべての新車販売のトップとなりました。EVのシェアが10%を超えた国は13か国に広がり、前年の3か国から大きく上昇しています。

EVは「走る家電」と言われるようにたくさんの半導体が搭載されます。EVの普及によってバッテリー、モーター、回路基板の需要が増えると同時に、さらに大量の半導体が必要になることが必至の情勢です。2022年に向けて世界中の半導体不足に拍車がかかる恐れが高まっています。

@@@@@

先週は首相指名のための特別国会が召集されて、第2次岸田政権がスタートしました。さっそくコロナ対策を中心に据えた経済対策が打ち出されることとなります。補正予算を組むことになりますが、選挙期間中の30兆円規模から40兆円を超える見通しに拡大しつつあります。

すでに公明党が選挙公約としていた18歳以下への一律10万円の給付金は、年収960万円の所得制限をつけて実施されることとなりました。今回の給付金に関して、世論調査によれば国民の3分の2は「必要ない」と回答しているようで、自民党も及び腰でしたが公明党に配慮して一番に動員されることとなりました。

経済対策と言っても、地方創成交付金の拡充やデジタル化の推進、雇用調整助成金の拡充、GoToトラベルの復活にとどまり、目玉となる政策の柱が見えてきません。成長や改革はあと回しにされており、規模ありきの姿勢が強くなっています。

それは政権運営サイドも承知しているはずです。岸田首相は看板政策を具体化させるための「新しい資本主義実現会議」での有識者による会議でここから具体策を打ち出してゆく構えです。先週は「デジタル臨時行政調査会」、「デジタル田園都市国家構想実現会議」、「全世代型社会保障構築会議」、「公的価格評価検討委員会」の、政策立案のための組織を新たに4つ設置しました。

同時に安倍政権の看板政策を進めた「1億総活躍」、「働き方改革」、「人生100年時代」、「統計改革」推進した4つの部署と、菅政権の「成長戦略会議」の廃止を決定しました。それらの機能はすべて新設された4つの組織が引き継ぎます。

例年、年末は来年度予算の骨格が固まる季節です。年明け早々の通常国会の召集に向けて、政策的な新しい展開が待たれるところです。

@@@@@

米国ではバイデン大統領が推進した1兆ドルのインフラ投資法案が下院で可決しました。バイデン大統領の署名によって成立します。老朽化したインフラの改修に加えて、中国とのグローバル競争を見すえた次世代インフラの整備も目指します。

EV向けの充電設備、高速通信網の整備にも資金を振り向けられる計画です。もう一方の子育て支援などに向けた1.75兆ドル法案はまだ時間がかかるために先送りしています。

11月第1週にFRBがテーパリングのスケジュールを決定したことから、長期金利の上昇は抑えられました。コロナ危機からの経済再開に向けて、これまで市場は延々と金利上昇の懸念を議論してきましたが、パウエル議長による「市場との対話」はひとまず上手にコントロールされていると見ることができます。

その一方で物価の上昇は容赦なく続いています。先週は10月の消費者物価指数が前年比+6.2%まで上昇したことが明らかになり、5月のような「CPIショック」が再来するのかとマーケットは再び緊張に包まれました。

物価の上昇に焦点を当てると、決定されたばかりのテーパリングとその後の利上げのスケジュールは明らかに前倒しされるリスクがあります。しかし同時に個人消費の動向を考えると、利上げスケジュールは延期される可能性もあります。

先週末に発表された11月のミシガン大学・消費者態度指数は、2011年11月以来という10年ぶりの低い水準にまで落ち込みました(66.8、前月比▲4.9ポイント、市場予測は72.5)。政策動向に敏感な2年債利回りは上昇し、それに対して長期金利の上昇は以前ほどではありません。為替市場では114円台まで再びドル高・円安が進み、インフレ指標の金(ゴールド)が急騰しています。

テーパリングは決定されましたがマーケットはまだ当分の間、米国のインフレと景気動向に神経質な状況が続くでしょう。

@@@@@

先週の東京株式市場は、TOPIXが小幅に反落しました。米国では好調な企業業績を反映して勢いよく株価が上昇しましたが、東京市場は岸田政権の打ち出す新しい政策の行方を気にしてか小さな動きにとどまりました。下落率は▲0.04%にとどまっています。

規模別では引き続き大型株がしっかりしており、小型株ほど軟調な動きとなりました。東証マザーズ指数の下げが再び目立ちました。

全体の動きをリードしてきたグロース株が背景に回り、バリュー株の堅調さが目立ちました。REIT市場は総じて軟調な動きを落けています。

@@@@@

TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが6業種にとどまり、反対に値下がりセクターが11業種に広がりました。

値上がりセクターのトップは「情報通信・サービスその他」です。ソフトバンクG(9984)が決算発表に合わせて1兆円の自社株買いを表明しましたが、株価の動きは限定的でした。

代わってしっかりしているのがソフトウェア各社です。企業の間でデジタルトランスフォーメーションに即したソフトウェア投資が活発化しており、株価の上でもNTTデータ(9613)、野村総合研究所(4307)、コムチュア(3844)、TIS(3626)などが好決算を背景に上昇しています。

同様に値上がりセクターの第2位は「商社・卸売」でした。こちらも伝統的な丸紅(8002)、伊藤忠(8001)などの総合商社に加えて、トーメンデバイス(2737)、

(後略)

日本株に関する情報をいち早くゲット!

ここでしか読めないメールマガジンを配信しています。
登録無料!

鈴木一之