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2022年3月8日
ロシアのウクライナ侵攻から11日目、事態は混迷の度合いを深める
◎日経平均(4日大引):25,985.47(▲591.80、▲2.23%)
◎NYダウ(4日終値):33,614.80(▲179.86、▲0.53%)
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日本時間の2月24日(木)昼過ぎにロシアがウクライナに軍事侵攻を開始しました。ロシアによるこのような蛮行には断固反対します。ロシアは戦争行為を即刻停止して、一日も早くウクライナに平和が訪れることを願ってやみません。
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この1週間で世界は大きく変わりました。ロシアによるウクライナ侵攻は一段と激しさを増しています。
3月4日(金)未明、ロシア軍はウクライナ南部にある欧州最大のザポロージエ原発を攻撃しました。言語道断の行為です。世界が息を飲んで行方を見守りました。
幸いなことに砲撃による火災は原子炉の脇の訓練棟にとどまりましたが、周囲をロシア軍が固めていて消防隊が現場に到着するのも難儀したようです。あわや大惨事になるところの寸前で被害は食い止められました。
ウクライナ第2の都市、ハリコフでは軍事施設だけでなく民間の住居や学校に砲撃が加えられています。首都キエフにもロシア軍が大挙して押し寄せており、今週中にも大規模な攻撃が開始されるとの観測が流れます。
金曜日に北京パラリンピックが開幕しました。開幕直前にロシアとベラルーシの選手団の参加が認められず帰国を余儀なくされました。そのような措置を取らなければ他の国の選手団が一斉に大会をボイコットした恐れがあります。
世界中でロシアの軍事行動に対する抗議運動が起こっていますが、その声がプーチン大統領に届くことはありません。国境を越えて隣国に脱出する人々の数はすでに100万人を超えました。最終的には400万人が難民化すると見られています。国内で避難している人々も食料や飲料水が底を突きかけていると報じられています。
ウクライナ戦争の情勢が悪化するにつれて、世界の物資の流れも混乱に拍車がかかっています。原油価格はWTI先物で先週末は115ドルに達しました。アルミニウムは史上最高値を更新し、天然ガス、小麦、金属資源、ガソリン、あらゆるモノの値段が値上がりしています。
1週間前に経済制裁の一環として、欧米諸国は国際金融ネットワーク「SWIFT」からロシアの大手銀行の排除を立ちどころに決定しました。「金融核兵器」とも言われるほど強力な制裁措置は、制裁を科す側にも影響が大きく、西側はそこまでは踏み切らないだろうと言われていました。それがこれほどの短期間で決定されることに事態の深刻さが映し出されています。
それだけ今回のロシアの軍事侵攻への危機感、西側の決意の強さが示されたのですが、やはりその影響は全方位的に広がっています。「SWIFT」からの排除で決算不能になることを恐れて、原油や天然ガスは取引市場に出てこなくなり、あるいはそうなるという見通しだけで、資源エネルギー価格の大幅な上昇につながっています。
物価は上がる一方ですが、金融市場では安全資産を求めて、逃避先として債券市場に流れ込んでいます。長期金利は低下基調に入りつつあり、反対に世界中の株価が値下がりしています。中でもドイツ、フランスなど欧州市場の株価の下落が厳しさを増しています。
FRBのパウエル議長は先週行われた議会証言で、3月のFOMCでは利上げを開始する。0.25%の利上げを行う、と異例の利上げ幅を確約しました。利上げによって物価の高騰を抑えながら、同時に世界経済の下押し圧力にも配慮するというむずかしいかじ取りを迫られています。
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ウクライナはNATO加盟国ではないため、欧米諸国からは軍隊を送ることはありません。ロシアとの全面戦争を恐れて、ウクライナからNATOに対して要請されたウクライナ上空の飛行禁止措置の発動は今回は見送られました。
誰もロシアの暴挙を止められず、世界はただリアルタイムでSNSの映像を見て恐れおののくしかありません。このまま行けばロシアの全面的な勝利に行き着くとされています。3度目の停戦交渉が行われており、その結果を待つしかありません。
ビジネスの世界も大きく動いています。BP、シェル、エクソンモービルなど世界の巨大エネルギー産業が相次いでロシア事業から撤退を表明しています。アップルは「iPhone」の販売を停止しました。マイクロソフトもすべての製品、サービスの販売を一時停止し、グーグルも広告を止めました。ビザとマスターカードもロシアでのカード決済を行わないと決定しています。
今後事態が好転したとしても取引を再開するのはむずかしくなると見られますが、そんなことには誰も躊躇していない様子です。その点でサハリン1、2を巡る日本の大手商社の態度が気になります。トヨタはサンクトペテルブルクの工場稼働を停止せざるを得ませんでした。
人道的な見地からロシアを排除する動きは今後さらに世界で加速すると見られますが、それはとりもなおさず世界経済の悪化を招きます。アップルは確実に売り上げが落ち、そこに原材料価格の上昇や物流費の高騰が加わります。これまで株価上昇を支えていた企業収益の好調さにブレーキがかかることは覚悟しなければなりません。
中国で3月恒例の全人代が始まりました。冒頭から今年の成長率の目標は「5.5%前後」に引き下げると発表されました。それまで死守してきた「6%以上」の目標をあっさりと取り下げたことは、それだけ国内外の情勢が不透明さを増していることの表れでもあります。エコノミストの間では5%成長でも厳しいと早くも警戒感が出ています。
中国に限らず、人々の消費者心理にも悪影響は当然出てくるはずです。ロシア発、あるいはロシア上空を飛ぶ欧州便のフライトは次々にキャンセルされ、路線が変更されています。燃料代はかさみ、コロナ禍から立ち直りかけていた旅行需要に陰りが出てくることが心配です。
そこに企業からの値上げラッシュが重なります。日本マクドナルドはハンバーガー、マックシェイク、チキンナゲットなど13の品目を10円から20円値上げします。日清食品は「カラムーチョ」やグラノーラの容量を減らす「ステルス値上げ」を実施します。花王は紙おむつ「メリーズ」を+10%値上げします。花王の紙おむつとしては初めての値上げです。岩谷産業もカセットボンベの価格を+15%引き上げます。
日銀の掲げる「+2%の物価目標」どころではない、それをはるかに超える広範囲な物価上昇が私たちの身の回りで現実に始まっています。消費者が消費活動に身構えるのはごく自然のように思います。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。今年に入って2度目の3週連続で下げました。下落率は▲1.67%となり、前の週の▲2.50%に続いて大きく値下がりしました。日経平均も金曜日に一時25,774円まで下落して昨年来安値を更新しています。
グロース株の下落は依然として厳しくなっています。大型ファンドの解約に備えた換金売りが出ている模様で、大型株ほど値下がり率が大きくなっています。その一方で、ここまで下げの厳しかったマザーズ市場には底値圏での買いも見られ、東証マザーズ指数は3週ぶりの上昇となりました。
日経平均のサイコロジカルラインは木曜日に「4」まで低下し、週末は「5」で終わりました。激しく下落する銘柄が増える一方で、資源エネルギー株を中心に上昇する銘柄も数多く、騰落レシオは依然として100%前後の位置に貼りついています。
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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは6業種に広がり、値下がりセクターは11業種となりました。値下がりセクターが優勢ですが、値上がり業種も少しずつ増えています。
上昇セクターのトップは前週に続いて「エネルギー資源」です。原油、石炭、金属、食品などあらゆるコモディティ価格が急上昇しています。先行したINPEX(1605)に続いて、三井松島HD(1518)、出光興産(5019)、コスモエネルギー(5021)などが連日急騰しています。
同様に値上がり第2位は「鉄鋼・非鉄」です。アルミニウム、銅、ニッケル市況の上昇を受けて、住友金属鉱山(5713)、大阪チタニウムテクノロジーズ(5726)、東邦チタニウム(5727)、DOWAホールディングス(5714)が軒並み物色されました。
鉄鋼でもフェロニッケルに強い大平洋金属(5541)をはじめ、日本製鉄(5401)、
(後略)