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2022年6月13日
週初は円安の進行で株高、週末は米国の物価上昇で波乱の展開
◎日経平均(10日大引):27,824.29(▲422.24、▲1.49%)
◎NYダウ(10日終値):31,392.79(▲880.00、▲2.72%)
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鈴木一之です。ウクライナ戦争の行方は小康状態を保っているように見えて、国際報道の目が行き届かないところでは激しさを増している模様です。
EUはロシア産原油の禁輸を年内にも実現する決定を下し、緊張の高まりから原油価格は再び1バレル=120ドル台に乗せました。
世界中で物価の上昇が強まっています。週末の米国5月・消費者物価指数の発表を前に、FRBによる政策金利の一段の引き上げ観測が強まってきました。
週前半は為替市場で進行している円安・ドル高を背景として、株価は堅調な動きを示しました。日経平均はあっさりと28,000円の大台を突破するほどの上昇を示しています。
前週末に発表された米国の5月・雇用統計で、非農業雇用者数の増加が+39万人となり、市場予想の32万人を上回りました。失業率も3.6%に高止まりしており、米国経済はほぼ完全雇用の状態にあります。
FRBがどこまで政策金利の引き上げを急ぐのか、現在の金融市場における関心はこの一点に集中しており、先週も連日のようにマーケットでは議論されました。日米の金利差拡大を背景として1ドル=132円台まで、20年ぶりのレベルに円安が静かに進行しています。
それが株価押し上げの原動力となっています。自動車セクターを中心に機械、電機、医薬品など、海外売上高比率の高いセクターが先週から大きく買い進まれてきました。
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しかし週後半になると、同じ理由から株式市場は波乱の展開となりました。ECBは6月9日(木)の理事会において、7月1日に0.25%の利上げを行い、同時に量的緩和も終了すると決定しました。主要国で政策金利を引き上げていないのは日本だけとぃう状況となり、ドル円相場は弾みがついて134円台まで一気に円安が進みました。
しかしこの決定と前後して、株式市場で人気の高い海運株と半導体関連株が木曜日から下げ幅を拡大し、週末にかけてエレクトロニクス、機械セクターには手仕舞い売りが広がるようになりました。
ここから先は金利差の拡大以上に、インフレに対する警戒心の方がまさってきた様子で、株式市場では週末に向かって神経質なムードが強まりました。金曜日に日経平均は▲422円の下落となり3週間ぶりの下げ幅を記録しています。
警戒されていた米国の5月・消費者物価指数は前年比+8.6%の上昇と判明しました。40年ぶりの高い伸び率を示したことから、米国の株式市場は週末にかけて再び大幅安となっています。NYダウ工業株は木曜日の▲638ドルに続いて、金曜日は▲880ドルとなりました。5月20日に記録した今年の安値に早くも接近しています。
インフレがピークアウトしつつあるという、それまでの市場の楽観的な観測は消え、FRBはタカ派的なスタンスを当分の間続けると見られています。今週は東京市場の値動きとともに、FOMCメンバーによる将来の金利水準の見通しが焦点となります。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが4週連続で上昇しました。円安を好感する形での週初の上昇分が効いています。ただし上昇力は週後半にかけて鈍っており、週間での値上がり率は+0.51%にとどまりました。前の週の+2.43%からはかなりダウンしています。
規模別では大型株が堅調で、次いで中型株です。小型株の上昇は少し鈍り気味となりました。グロース株はさえない展開で、バリュー株優位の値動きが続いています。それでも東証マザーズ指数は週末にかけて勢いが少し戻っています。週間では2週連続の上昇。値上がり率も+2.50%と健闘しています。
テクニカル面では、日経平均のサイコロジカルラインは円安を背景に「8」まで高まりました。騰落レシオは6月7日に112.38まで上昇した後、週末には99.64まで後退しています。
東証REIT指数は4週連続で上昇しました。高利回り銘柄に特化した配当フォーカス100指数も安泰で4週連続の上昇となっています。
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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がり業種が12業種、値下がり業種は5業種となりました。堅調な動きが続いています。
上昇率のトップは「エネルギー資源」でした。原油価格の上昇を背景にINPEX(1605)、石油資源開発(1662)、ENEOS(5020)、出光興産(5019)などのエネルギー株が軒並み大きく上昇しています。
値上がり率の第2位は「商社・卸売」です。三菱商事(8058)、三井物産(8013)がそろって上場来高値を更新しており、やはり資源エネルギー分野に強いところが評価されています。メタノールを得意とする双日(2768)もしっかりしています。
値上がり率の第3位は「不動産」です。三井不動産(8801)、三菱地所(8802)、住友不動産(8830)、野村不動産HD(3231)など、インフレ時代の到来をバックに大手不動産株がじわじわと上昇力を強めているようです。
反対に値下がりセクターのトップは「電機・精密」が登場しました。円安によって堅調な銘柄も多いのですが、一方でシャープ(6753)、パナソニックHD(6752)など業績面で不安の残る銘柄を中心に軟調な展開でした。
東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)の半導体セクターも、受注がピークを迎えつつあることを理由に下落基調が目立ちました。
値下がり率の第2位は「鉄鋼・非鉄」です。原材料価格の上昇から株価は弱含む動きが見られました。第3位は「金融(除く銀行)」でオリックス(8591)の下げが響いていると見られます。
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インフレが再び加速していることは、消費者としての肌感覚でも十分理解できますが、素材市況の上昇はその感覚をはるかに上回っています。
日本では今年の夏に電力需給がひっ迫し、電力不足が予想されることから、政府は「電力ひっ迫警報」を発令することになる模様です。電力不足という発展途上国のような状態が日本中を覆っており、産業界あげての生産調整、減産が心配されています。
それによってオーストラリア産の発電用石炭が一段と高騰しており、1トンあたり400ドルを超えました。昨年末比では2.3倍までハネ上がっており、ロシア産石炭の禁輸の影響が如実に表れています。
砂糖メーカーは昨年1月から4回目の値上げ(+6%)を取引先に通告しました。原油価格の上昇と円安で輸入コストの上昇がダブルでのしかかっています。生成された白糖はロンドン先物市場でトンあたり600ドルに迫っています。5年7か月ぶりの高値に達しました。
金属資源ではステンレス鋼板が一段高です。東京では1キロ=595円を記録し、