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2022年7月5日

5月の鉱工業生産が大幅にダウン、6月の日銀短観も弱めで株価は軟調

鈴木一之

◎日経平均(1日大引):25,935.62(▲457.42、▲1.73%)
◎NYダウ(1日終値):31,097.26(+321.83、+1.04%)

鈴木一之です。今週も実に目まぐるしい展開となりました。

6月末は1年の折り返し地点であり、月末と四半期末、半期末が重なってただでさえマーケットを刺激しやすいところですが、そこにG7首脳会合と参院選、「電力需給ひっ迫注意報」、コロナ感染の再拡大など、これでもかというほど数々の材料が押し寄せました。

しかも連日の記録的な猛暑です。熱中症で救急車で搬送される人が急増しており、しかも梅雨明けが史上最も早く訪れたことから西日本ではダムの貯水量の少なさが心配されています。今年の夏はまだ始まったばかりですが、この先にどのような展開が待ち受けているのか、誰にも予想がつきません。

1週間前の金曜日、米国ではミシガン大学の消費者態度指数が悪化したのに対して、それに伴って将来のインフレ見通しも低下するという調査結果が伝わりました。それが米国の株式市場では好感されて、NYダウ工業株は+823ドルの大幅高となりました。

週明けの月曜日、東京市場でも日経平均は+380円と、週初めとしては3週ぶりのプラスという久々に明るい幕明けとなりました。まだ6月だというのに全国各地の気温は35度を超える猛暑日で、電力需給のひっ迫を気にしながら冷房もがんがん使用するという綱引き状態の中で、株価はまずまずの滑り出しとなりました。

それが暗転したのは週の半ばです。米国のコンファレンス・ボードが発表した6月の消費者信頼感指数は「98.7」となり、前月比で▲4.5もの記録的な低下となりました。インフレが消費マインドを低下させており、市場予想の「101」も大きく下回りました。ストラテジストは米国がリセッションに陥る確率を次々に引き上げており、その見通しが実現する可能性がまたひとつ加わりました。

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日本では6月30日に発表された5月の鉱工業生産指数が▲7.2%も低下しました。こちらも市場予想(▲0.3%)を大きく下回る結果となっています。上海のロックダウンで生産と物流が停滞した影響が出ているようで、下落幅としてはコロナ危機直後の2020年5月以来の大きさです。自動車工業が▲8.0%の大幅なマイナスとなったことが響いています。

翌7月1日は日銀短観の6月調査が発表され、大企業・製造業の業況判断DIは「+9」となりました。3月調査の「+14」から5ポイント悪化して、市場予想の「+12」も下回りました。

非製造業は「+13」と2四半期ぶりに改善していますが、製造業は前回の3月調査で7四半期ぶりに悪化に転じて、今回で2四半期連続での悪化です。

景況感は次第に悪化しているのに、物価の上昇は止まりません。食品業界の値上げが多くコカ・コーラは10月から缶チューハイ「檸檬堂」を7%値上げします。ロッテも9月から「パイの実」や「チョコパイ」を10%前後値上げすると発表しました。

アップルは日本で販売する「iPhone13」など主要製品を、7月から一斉に+20%前後値上げすると発表しました。東京電力も8月の電力料金を12か月連続で引き上げます。

選挙戦真っ只中の参院選では、各党とも物価対策を全面に打ち出しているものの、即効性という点ではどの政党の主張も期待できるものではありません。物価上昇という、本来であれば野党有利に傾くはずですが、現状では攻め手を欠いたまま与党有利で終盤戦を迎えることになる雲行きです。

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景気に対しては気になる動きも徐々に表面化しています。自動車部品のヨロズは節電要請に応えるために、7~9月の3か月間はすべての製造拠点で最低でも月2日間、一斉に休業を取る体制を敷くそうです。工場休止の理由として電力不足が加わりました。

テスラは200人の工場作業員を解雇しました。メタは今年予定していた技術者の採用を最大で4割削減します。

世界中でコロナウイルスの感染者も増え始めています。オミクロン型の派生型が流行の兆しを見せており、日本でも感染者数の増加が連日のように前の週を上回るようになりました。ただしどの国も経済再開を優先しており、行動規制を強めることには至っていないようです。

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G7首脳会議が開催され、首脳宣言が採択されました。物価上昇もあって対ロシア政策では経済制裁の強化を打ち出しただけにとどまり、それが有効な手立てになるとは思えないような内容でした。

反対にロシアはG7およびNATO首脳会議に照準を合わせるかのように、ウクライナの商業施設にミサイルを打ち込み多くの犠牲者が出ました。

また「サハリン2」の運営を新会社に無償で譲渡するよう命じる大統領令も発しました。資本参加している三井物産、三菱商事は「サハリン2」の運営から除外される可能性が出ています。

日本のエネルギー政策に関して、以前から懸念されていた事態が現実のものとなりつつあります。「サハリン2」はLNGを年間で1000万トン生産しており、日本はこのうちの600万トンを輸入しています。その半分の300万トンが火力発電用の燃料です。

代替LNGを確保しようにも、LNGスポット市場には余力がほとんどありません。今後の展開次第では、ただでさえ不安定な電力供給がさらに脅かされることになり、電気料金の引き上げもいっそう強まると見られます。これも企業の生産活動と人々の暮らしを直撃します。

今回のウクライナ危機で、ドイツが直面している状況は決して他人事ではありません。東日本大震災による福島第一原発事故から11年。この間の政権がことごとく先送りしてきたエネルギー政策の本質的な部分が、このような形で日本が抱える決定的な弱点として経済・社会を揺るがす事態となってきました。

もはや逃げることはできません。現実を直視して、根本からエネルギー政策を作り直すことが必要です。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。週前半の貯金があるため、下落率は▲1.16%の小幅マイナスにとどまっています。

規模別指数では、大型株の下落(▲1.57%)が大きく、それに対して小型株(▲0.57%)、中型株(▲0.43%)は下げが小さくなりました。グロース株が全般に弱く、バリュー株の下落は小さなものとなっています。東証マザーズ指数は▲3.78%の下落となりました。

テクニカル面では、日経平均のサイコロジカルラインは「6」の中立状態を4日間続けています。騰落レシオの週末値は95.77%と安定した位置にあります。上昇と下落がちょうど半々で、騰落レシオは上がりにくい状況が続いています。東証REIT指数は反発しました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが5業種、値下がりセクターが12業種となりました。

上昇率の上位には「エネルギー資源」を除いて、「電力・ガス」、「医薬品」、「食品」などディフェンシブ的なセクターが前の週に続いて上昇しています。「小売」もどちらかと言えばディフェンシブ株と見ることができます。

上昇率トップは「電力・ガス」でした。東京電力HD(9501)が週を通じて堅調な動きを示しています。電力需給のひっ迫で東電管内には節電要請が週初から出され、7月からは全国に拡大されます。

東電の株価上昇の理由は、何を置いても「原発再稼働」と見られます。10年以上も停止状態にある世界最大の柏崎刈羽原発の再稼働が実現すれば、東電管内の電力不足はそれだけで解消されることになります。

しかしそれにはまず安全審査に通ることが絶対条件で、地域の理解が得られることという大きなハードルも控えています。使用済み核燃料の問題も手つかずのまま残されており、国民の間で議論が深まっているとは言えません。ここで大きな政治判断が求められます。

反対に東京ガス(9531)、大阪ガス(9532)は「サハリン2」問題で週末にかけて急落しました。

「小売」は決算発表を受けて、しまむら(8227)、高島屋(8233)、Jフロントリテイリング(3086)などが買われました。決算ではありませんが、パンパシフィックHD(7532)、三越伊勢丹HD(3099)も堅調です。インバウンド消費の再開への期待が次第に高まっています。

ドラッグストアも猛暑の折、前週に続いてマツキヨココカラ(3088)、クオールHD(3034)、アインHD(9627)、ウエルシアHD(3141)、サンドラッグ(9989)などが堅調な値動きを維持しています。その一方で決算内容の悪化から良品計画(7453)、DCM(3050)が下落しました。

反対に値下がりセクターの上位は「自動車・輸送機」と「電機・精密」が登場しました。どちらも日本を代表する製造業です。

今週は一時1ドル=137円まで円安・ドル高が進行しました。しかし自動車セクターが今回の円安に反応する動きはまったく見られませんでした。

むしろ鉱工業生産指数や日銀短観でも浮かび上がってきた製造業の苦戦が気にかかります。電力危機は製造業の生産計画を直撃する恐れがあります。自動車部品のヨロズのように、工場の生産を停止する企業が今後も増えることが考えられます。

さらに梅雨明けが異例の早さとなったことで、西日本ではこの夏の水不足が警戒されています。取水制限が発令されれば、これも工場の生産活動に影響するはずです。

今週は米国でバンク・オブ・アメリカが半導体業界の見通しを引き下げました。今年はプラス成長を維持できたとしても、来年(2023年)は半導体業界の売上高はマイナスの伸びに落ち込むとのことです。

これを受けて日本のバンク・オブ・アメリカ証券も半導体関連株の見通しを引き下げました。東京エレクトロン(8035)、

(後略)

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鈴木一之