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2023年2月13日
日米ともに膠着感の強い展開、ナスダックは6週ぶりの反落
鈴木一之です。トルコとシリアで大地震が発生して1週間が経ちました。亡くなった人の数は2万人を超え、今も増え続けています。寒さが厳しい季節です。一刻も早い救助活動の進展と国土の復興を願っております。
2月も半ば近くに達し、株式市場は膠着状態に陥っています。先週の東京市場は、日経平均の終値だけを見れば前日比で上下100円に満たない日が4日間も続きました。TOPIXも上下10円に達しない日が連続しており、それでも6日続伸を記録しています。
それは米国も同じです。NYダウ工業株は高止まりを続けており、上にも下にも行けない状況です。世界中のマーケットがいったん足踏み状態となっています。
このような膠着状態に陥っている理由は、ひとつに米国の景気動向がはっきりしないからだと考えられます。経済活動は強いのか、弱いのか、肝心な部分がわかりません。
2月3日に発表された米国の雇用統計では、失業率が3.4%まで低下し、非農業雇用者数が51.7万人も増加しました。この結果を受けて金融政策のタカ派とハト派の意見対立が再び強まっています。
米国の10年物国債金利は、雇用統計が発表される前の3.39%から週末は3.73%に上昇しました。世界の金融市場が、米国の長期金利という小数点2ケタの小さな数字にすっかり左右されています。
FRBのパウエル議長は2月7日(火)、ワシントン経済クラブでの対談に登壇し「雇用統計のデータは驚きだった」、「(強いデータが出れば)市場が思っている以上に政策金利を引き上げなければならない」と述べました。
先日の記者会見での発言「ディスインフレのプロセスは始まっている」を繰り返し述べた上で、「しかし先はまだ長い」と付け加えています。仕方のないことですが、タカ派かハト派かはっきりしません。
同様にFRBのウォラー理事も「想定よりも高い政策金利が長く続く可能性がある」と述べています。インフレの収束を期待していたマーケットは、楽観的な見通しの修正を余儀なくされた一週間となりました。
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日本ではそれ以上に、日銀の総裁人事を巡るニュースがマーケットを驚かせました。
先週は週の初めに雨宮副総裁がスライドで新総裁に就任するとの見方に大きく傾きました。しかしどうやら雨宮氏自身が総裁就任を固辞した模様です。
そして週末になって、かつて日銀の審議委員を務めた経済学者の植田和男氏が新総裁に就任する方向に向かいました。
植田氏は1998年4月から2005年4月まで日銀審議委員を務め、当時の「ゼロ金利政策」の導入をリードしました。2000年のITバブル時に日銀はゼロ金利を解除しましたが、その際に反対票を投じたことで知られています。
マーケットでは早くも植田氏の金融政策を巡って思惑が広がっています。週末に植田新総裁に関する報道が流れてすぐに、ドル円相場は1ドル=129円台まで円高が進み、その後は131円台に戻りました。日本の10年国債金利は誘導目標である0.50%に再び張りついています。
この動きだけを見ると、植田新総裁は弊害の目立っているイールドカーブ・コントロールを早期に解除すると見ているようですが、それ対しても時間をかけると市場は考えている様子です。金利が急激に上昇すると経済全体に影響が出かねません。
植田氏の考えを探る動きが早くも活発化しています。2022年7月に日本経済新聞の「経済教室」に掲載された論考では、「日本の2%インフレの達成はまだ道のりが遠い」と指摘していることから、政策金利の引き上げには慎重であることがうかがえます。
市場の激変を避けながら、次第に市場実勢に合わせた金利水準に戻してゆくことになるのではないかとマーケットは考えている模様です。週明けの動きが非常に重要です。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが小幅反発となりました。膠着感の強い地合いでしたが、何と言っても6連騰が効いています。週間の上昇率は+0.85%となり、前の週の下落率(▲0.63%)を埋めています。
東証マザーズ指数は5週ぶりに下落しました。バリュー株の流れが戻っており、グロース株は総じて弱めの動きとなりました。これも前の週とは反対の動きです。大型株と中小型株との間には強弱の差がなく、そろって反発しました。
テクニカル面では、膠着感が強い割に騰落レシオは上昇しています。過熱圏とされる120%を越え、週末には130.02%に達しました。日経平均のサイコロジカルラインは警戒水準とされる「9」を続けた後、週末は「7」に低下しています。日経平均ボラティリティ指数は4週連続で低下しています。
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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは14業種に広がり、反対に値下がりセクターは4業種にとどまりました。
値下がりセクターの上位は「情報通信・サービス」、「不動産」、「自動車・輸送機」でした。3月決算企業の決算発表が佳境を迎えており、個々の銘柄の動きが活発です。
「情報通信・サービス」では、決算発表を好感したインターネット・イニシアティブ(3774)、テレ東HD(9413)、山田コンサルティンググループ(4792)が買われましたが、一方でカカクコム(2371)、リゾートトラスト(4681)、共立メンテナンス(9616)が大きく下落しました。個別物色が広がっています。
「不動産」は金利上昇局面に弱く、三菱地所(8802)、カチタス(8919)が決算発表をきっかけに急落しています。「自動車・輸送機」でもトヨタ自動車(7203)が木曜日に決算発表し、年間の生産計画を下方修正したことから売りが優勢です。
ホンダ(7267)、マツダ(7261)も軟調ですが、日産自動車(7201)だけはルノーとの資本関係の見直し交渉に合意したことから上昇しています。
一方の値上がりセクターの上位には、「商社・卸売」、「銀行」、「金融(除く銀行)」が入りました。
丸紅(8002)、
(後略)