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2023年8月22日

中国の大手不動産会社が米国で破産申請、日経平均は32,000円割れ

鈴木一之

鈴木一之です。8月も半ばを過ぎました。暑い日が続きますが、セミの鳴き声もどことなく弱くなってきたように聞こえます。

1週間前、台風7号が日本列島を直撃しました。当初の予想よりもわずかに西にそれて紀伊半島に上陸し、東海道新幹線は計画的な運休を実施したほどです。お盆休みで遠出していた人々の足に大きな影響が出ました。

ハワイでは山火事による被害が一段と拡大しています。世界の至るところで高温による干ばつや水不足、大雨の影響が広がっており、今年は地球温暖化による生活への影響をことのほか厳しく感じさせられました。どうやら放置しておいて自然に元に戻ることだけはなさそうです。

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マーケットの動向は夏枯れに陥りやすい時期でもありますが、先週は市場を動かす材料に不足することのない、あわただしい1週間でした。どちらかといえばマイナス要因の多かったように思います。

大きな話題はふたつで、ひとつは中国、もうひとつは米国です。

中国では不動産不況が一段と深刻になっている模様です。不動産大手の恒大集団が米国で破産法を申請しました。

2年前から恒大集団は最終赤字に陥っており、資金繰りに苦しんでいた巨大企業がいよいよ行き詰った感があります。しかし会社側は、強制的な差し押さえを回避する手段として破産法を用いたと説明するばかりで、今のところ市場での目立った悪影響は見られません。

中国の景気鈍化が経済データの上でも明らかになっています。7月の主要70都市の新築住宅価格は、前の月と比べて下落した地域が全体の7割となる49都市に拡大したことが明らかになりました。マンション販売の低迷が長びいていることが主な要因です。

中国の7月の工業生産統計も、マンションやPC生産の落ち込みによって前年比+3.7%の増加にとどまりました。6月の+4.4%からさらに低下しています。

中国の景気がさらに鈍化していることから、中国人民銀行は銀行向けの1年物貸出金利を2.65%から2.50%に引き下げると発表しました。6月に続いて今年2度目の引き下げです。ここにも不動産市況の悪化が影響しています。

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中国では景気の弱さが世界を揺さぶっているその裏側で、米国では逆に強すぎる経済が世界を不安定化させています。

8月15日に米国の7月・小売売上高が発表され、これが+0.7%と4か月連続の増加を示しました。市場の事前予想である+0.4%を大きく上回っています。

FRBのパウエル議長は今後の金融政策について「すべては発表される経済データ次第」と繰り返し述べています。その経済データが経済の強い状態を示すものばかりで、これでは金融政策上はますますタカ派に傾くばかりです。

先週公表された7月のFOMC議事録では、インフレ抑制のために金融引き締めを続けるきだとの意見が多く聞かれたことが明確になりました。

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これを受けて米国の長期金利は一段と上昇しています。10年物国債金利は4.30%を超える場面もあり、2022年10月以来、10カ月ぶりの水準まで高まりました。

ドルが買われ続け、円は対ドルで一時146円台半ばまで下落しました。昨年11月以来、9か月ぶりの円安・ドル高となっており、政府・日銀が円買い介入に踏み切った昨年秋の水準をすでに下回っています。

それでも今回は介入に対する警戒感は薄れているように見えます。ひとつには非鉄金属などの資源価格が昨年ほどには上昇していない点です。

さらに日本の経済状況が良好だという点も影響しています。先週発表された日本の4-6月の実質GDPは前期比で+1.5%、年率換算では+6.0%の増加となりました。3四半期連続でのプラスで、しかも予想の年率+3.1%を大きく上回っています。

インバウンド消費を含めた輸出の好調が全体を押し上げています。目の前の経済状況はそれなりに好調で、円も独歩安という状況ではないことから、マーケットでは今の円安はごく流れの中で自然に形成され、それほど警戒心を抱いていない様子です。現時点では介入しても大きな流れに変化がない、と見られていることが影響しています。

それだけにここからの円安はメリットばかりでなく、原材料価格の上昇など輸入コストの上昇に警戒する必要もあるように思います。

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気がかりなのは、信用リスクが徐々に積み上がっている点です。先週は格付会社のフィッチ・レーティングスが、米国の大手銀行を含む70行以上を格下げする可能性を示し、これが市場で大きな話題となりました。

まだ正式にリリースしたわけではなく、CNBCの番組内で明らかにされたことですが、金利上昇が長引いて銀行の資金調達コストが上がっていることが格下げの理由です。

前回の米国債の格下げ、ムーディーズの地銀格下げ、そして今回の大手銀行の信用リスク引き下げ。それに加えて中国での不動産リスクの上昇。すべては金利が上昇する中での一連の信用リスクの高まりを示すものであり、説明のつくものばかりです。市場全体が警戒心をもって臨むようになるのも不思議ではありません。

その過程で日経平均は32,000円の大台を割り込みました。調整モードが徐々に強まっているのは仕方のないところです。下値めどの確認を丹念に行う時期に向かいつつあります。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。下落率は▲2.87%とかなり大きめの下げとなりました。前の週は週間上昇率では2か月ぶりの大きさとなる+1.27%の値上がりでした。それが一転して大幅安となっています。

規模別で見ても、大型株(▲2.95%)、中型株(▲2.87%)、小型株(▲2.36%)と、いずれも大きく下落しています。

スタイル別でもバリュー株からグロース株まで幅広く値下がりしました。東証マザーズ指数は2週ぶりの反落ですが、下落率は▲5.94%と最も大きくなりました。「金利上昇に弱い小型成長株」という性格が表れています。

騰落レシオは8月15日に112.22%まで上昇した後、週末には103.47%に低下しました。ちょうどニュートラルな位置です。日経平均のサイコロジカルラインは「5」で踏みとどまっています。東証REIT指数も2週ぶりに反落しました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、全17業種すべてが値下がりしました。今年初めてのことです。

値下がりセクターの上位は「エネルギー資源」、「商社・卸売」、「機械」が登場しました。

ワーストとなった「エネルギー資源」は、前の週にINPEX(1605)が急上昇した分の反動安が響いています。決算発表での大規模な自社株買いの公表で、1日に+16%も急騰した影響が見られます。

「商社・卸売」では、6月までの上昇相場の立役者の一角でもある総合商社が軟調でした。

バークシャーハザウェイが大量に取得している安心感もあって、現在も値保ちがよい状況が続いていましたが、三菱商事(8058)、三井物産(8031)、丸紅(8002)が、ここまで値保ちが買った分だけ下落する展開が目立ちました。

「機械」セクターでは、ダイキン工業(6367)、SMC(6273)、コマツ(6301)、クボタ(6326)、オークマ(6103)など、機関投資家の保有比率の高い主力銘柄が総じて軟調です。ここでも値を保っていた銘柄ほど下げが大きくなっています。

反対に週間で下げの小さかったセクターには「金融(除く銀行)」、「銀行」、「食品」が浮上しました。

「金融(除く銀行)」では損害保険各社が比較的しっかりしています。法人向け保険料の調整のようなことが行われていて調査対象となったことが嫌気されましたが、東京海上HD(8766)、

(後略)

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鈴木一之