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2023年12月12日
NYが年初来高値を更新、ドイツも史上最高値、かたや日本は急落
鈴木一之です。12月に入り師走のあわただしさがぐっと身近なものになりました。
文具売り場ではカレンダーと手帳売り場に人が集まり、お歳暮の品を山と積んだ宅配便のトラックが往来を行き来しています。
サッカーは天皇杯決勝、ラグビーはリーグワン開幕、フィギュアスケートはグランプリファイナル。賞金王、ドラフト、契約更改、年の瀬をますます実感します。
しかし戦争は続いています。イスラエル軍によるガザ地区への攻撃が止む兆候すら見えません。南部では避難所となっている学校まで空爆されました。すでに15,000人が犠牲になったと伝えられています。
クリスマスには攻撃がさらにエスカレートすると見られていますが、米国は国連安保理で拒否権を発動したままの状態です。来年の大統領選はどうなるのでしょうか。
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先週の株式市場は週を通じて軟調な動きが見られました。日経平均は1週間で1勝4敗、▲1124円の下落を記録しました。下げ幅としては9月後半以来、2か月半ぶりの大きさに達しています。
下げの主因は、為替市場での急速な円高の進展です。そこに自民党安倍派のパーティー券裏金問題を巡る政局の混乱、が重なっていると見られます。
海外ではNYダウ工業株が週末に年初来高値を更新するまで買い進まれました。ドイツのDAX指数も週央に史上最高値を更新しています。日本だけがここに来て息切れするようになってきました。
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市場の変化として最も注目されているのが、為替市場での円高の進行です。週明けの月曜日に1ドル=146円台半ばまで円高・ドル安が進み、月曜日の午前中に日経平均はいきなり▲400円下落するところからスタートしました。
週央にはいったん小康状態となりましたが、週末にかけて円買い・ドル売りの流れが再び強まっています。12月7日(木)の東京市場は147円台でしたが、夕方には145円台までドルが売られ、夜には143円台に。そしてニューヨーク時間では141円台後半まで入りました。
ドル高は継続すると見ていたポジションが一斉にロスカットに転じており、そこにアルゴリズム取引も加わって円の急騰につながりました。
今週は米国の11月雇用統計を週末に控えており、そこに月末月初の米国の経済データが重なっています。米国景気の弱さを示すデータが相次いだこともドル安進行の要因のひとつです。代表的なものが雇用動態調査「JOLTS(ジョルツ)」です。
12月5日、10月のジョルツが発表され、非農業部門の求人件数(速報値)が873万件と判明しました。市場予想の940万件を下回り、2021年3月以来の低い水準です。これによって米国の長期金利は大きく低下し、10年国債金利は4.1%台に入っています。
パウエル議長は前々週の講演でも、金融緩和に転じるタイミングについては慎重な見方を示していますが、現時点ではウォラー理事のようなハト派的な見解も急速が増えています。
インフレの抑制に成功した米国は、徐々に利上げから利下げモードに転換しています。これによる米金利の低下が円買い・ドル売りに転じる大きな流れを作っています。
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先週は日銀のスタンスの変化も市場では話題となりました。
12月7日、植田総裁は国会答弁で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と述べました。この「チャレンジング」という言葉がきっかけとなって、マイナス金利解除への思惑が急速に広がっています。
植田総裁の答弁の真意がどこにあるのかは定かではありませんが、金融市場ではどんな材料でも日銀のスタンス変化、円買いのきっかけになるような手がかりを探していたと見られます。
この発言をきっかけに、市場参加者の間では「日銀がマイナス金利政策から脱却する可能性が高まった」と見ている模様です。市場の予想する以上に金融政策の修正時期は近いとの見方が広がるようになりました。
ユーロに対しても、欧州中央銀行(ECB)が来年春から大幅な利下げに踏み切るとの観測が強まっています。これによってユーロが売られ、円は2か月ぶりの高値をつけました。週末の日本の株式市場では自動車セクターを中心に、輸出関連株が幅広く下落することとなりました。
輸入物価の上昇という観点から円安を憂いていた日本は、今度は輸出企業の収益悪化で円高を憂うるという状況に差しかかっています。
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実際に発表された米国の11月・雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比+19万9000人となり、市場予想の19万人をわずかに上回りました。失業率は3.7%、10月の3.9%から低下し、平均時給も伸びています。
それでもNYダウ工業株は+130ドルで1年11か月ぶりの高値に進んでいます。同じ日に発表されたミシガン大学の12月・消費者態度指数は69.4で、11月の61.3から大幅に改善しました。
米国の個人消費は今後も落ち込まず順調に伸びてゆくとの見方が強まって、株式市場を押し上げています。原油価格は70ドルを割り込みました。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週続落となりました。下げ率は▲2.44%と8月第3週以来の大きさの下げとなり、前週の▲0.35%から拡大しました。
規模別では、大型株が3週連続の下げとなりました(▲2.79%)。上昇を続けていた小型株も7週ぶりの下げと軟調です(▲2.26%)。JPX日経中小型株指数も7週ぶりに下落しました。
スタイル別では、上昇を続けていた小型グロース株が7週ぶりに下落し、大型グロース株は続落。大型バリュー株も3週連続の下げでした。
騰落レシオは100%超の水準を13週間維持した後に、先週末は98.28%と100%の大台を割り込んでいます。日経平均のサイコロジカルラインは5日連続で「4」の水準にとどまっています。テクニカル的にはいずれも軟調な動きが強まっています。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落は、3業種が値上がりし、14業種が値下がりしました。
値上がり上位のセクターは前週に続いて「電力・ガス」がトップです。続いて「運輸・物流」、「金融(除く銀行)」となりました。
値下がりセクターの上位には「自動車・輸送機」、「機械」、「鉄鋼・非鉄」の円高デメリット銘柄で占められました。
値上がりトップの電力セクターは、東京電力HD(9501)の上昇に尽きます。原子力規制委員会は運転禁止命令を出していた柏崎刈羽原発に対して、事業者としての適格性の問題で「問題なし」との判断を下しました。これによって年内にも運転禁止が解除される見通しが立つようになりました。
残るハードルは、東京電力が地元自治体から運転再開の賛意を得られるかどうかにかかっています。新潟県を中心に住民向けの説明会を開いていますが、トラブルが発生いた時の退避ルートの確保などまだ問題は残っています。
コストの安い原発が稼働できれば、電力料金は大幅に引き下げることができます。しかし問題はコストばかりではありません。年内再稼働にこぎつけられるかどうか、現時点では予断は許されない状況にあります。
値上がり第2位の「運輸・物流」、第3位の「金融(除く銀行)」は、いずれも円高による業績の感応度の低い内需セクターとして、資金の逃避先になったと見られます。
電鉄株では西武HD(9024)が一貫して買い進まれ、京成電鉄(9009)、近鉄グループ(9041)、JR東海(9022)などが堅調でした。年末年始の国内旅行需要は好調で、コロナ前のピーク更新が見込まれています。
金融セクターでは、SOMPOホールディングス(8630)が通期業績の上方修正から上場来高値を更新しました。東京海上HD(8766)も含めてビッグモーター事件で売り込まれた損保株が再び人気化しています。
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一方の値下がりセクターには「自動車・輸送機」を筆頭に、「機械」、「鉄鋼・非鉄」の円高デメリット銘柄が軟調でした。
中でも自動車セクターは、トヨタ自動車(7203)が金曜日に▲4.1%も急落したのをはじめ、デンソー(6902)が▲4.5%、アイシン(7259)が▲3.9)、フタバ産業(7241)が▲5.6%など、トヨタグループ各社の下げが目立ちました。
ほかにもホンダ(7267)が▲2.6%、日産自(7201)が▲1.8%、マツダ(7261)が▲3.0%といずれも下落基調にあります。
今年は年初から自動車メーカーの「挽回生産」が始まる年と見られていました。実際にその通りに生産回復が急ピッチに進んでいただけに、短期的な調整はやむを得ないところです。
来年はいよいよEV&自動運転のビジネス展開まったなしの年を迎えます。構想の段階はもはや過ぎ、EVをいかに収益化モデルに育て上げてゆくか、それが本気で問われる年です。これまで以上に企業間の差が浮き彫りにされることになりそうです。
円高デメリット銘柄として、「機械」ではDMG森精機(6141)、牧野フライス製作所(6135)、コマツ(6301)、荏原(6361)も大きな下落に見舞われました。「鉄鋼」も同様です。
自動車株と同様に、為替レートという他力本願の部分が剥落して、本当の実力が問われます。2024年はそういう年なのだと、この時期に急激な円高に直面してあらためて気が引き締まります。おそらくそれは日本経済にとって良い方向になるはずです。
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人材派遣大手のアウトソーシング(2427)が
(後略)