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2023年12月20日
クリスマス週、NYダウ工業株は史上最高値を更新、円高の日本も持ち直す
鈴木一之です。NYダウ工業株が史上最高値を更新しました。先週末の終値で37,305ドルに達しています。
金利低下を背景にキャタピラーやボーイングなどの大型株が軒並み急騰しています。マイクロソフトに続いてアップルも史上最高値を更新しています。
先週半ばに開催されたFOMCの結果を受けて、米国の長期金利が急速に低下しています。10年国債金利は4%の大台を割り込み、3.89%まで下がりました。1週間の低下幅としては3年9か月ぶりの大きさです。
金利低下を受けてNYダウ工業株は2017年11月以来、7週連続で上昇しました。S&P500も同様に7週連続の上昇ですが、こちらはまだ最高値には届いておりません。
テクノロジー株の上昇には本格的には火がついておらず、NASDAQは高値更新まであと一息というところです。それでも株式市場は記録づくめの上昇となり、ひと足早いクリスマスプレゼントが届いた、と言えそうです。
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中心はやはり米国の金融政策です。12月13日に行われたFOMC会合で、2回続けて政策金利は据え置きとされました。
同時に発表されたボードメンバーの政策金利見通し(ドットチャート)は、2024年末が中央値で4.6%となり、これまでの「2024年に2回の利下げ」から「3回の利下げ」に変わりました。これが市場の予想を覆した決定的な理由となったようです。
記者会見に臨んだパウエル議長は「利上げサイクルのピークにいるか、それに近い状態にある」と述べました。ミーティングでの議論も「利上げではなく、いつ引き締めを縮小するかを話し合った」とまで明かしました。タカ派的な発言を予想していた市場では、パウエル議長のハト派転換の発言に心底驚き、これでようやく金融政策が転換したことを確信するに至りました。
「Fed Watch Tool」はFOMC直前の「2024年中に4回の利下げ」という予想から、FOMC後には「5回から6回の利下げ」に変わっています。
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米国、および欧州のインフレとの戦いは大きな転換点を迎えたと判断されます。2022年3月から始まった引き締め政策はいったん終了し、来年は利下げの時期が本格的に議論されそうです。市場では今回の金融政策の転換を「グレート・ピボット(大転換)」と表現し、「金融史に残る転換かもしれない」との意見が早くも出ています。
これで今回の引き締め期は1年4か月に及んだことと確定しました。この間の利上げ幅は合計5.25%となり、1980年以降では最大となります。
しかし喜んでばかりはいられません。消費者物価指数は昨年9月の+9.1%から、直近では+3.1%に鈍化しただけです。利下げに転じてもすぐさま緩和状態に移るわけではなさそうです。
「量的引き締め」政策は継続され、金融市場はあくまで「引き締めの度合いが弱まる」というほどの意味合いです。来年の大統領選挙を控え、ここから先は景気への配慮が意識されそうです。
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景気の現状はしっかりしています。14日に発表された11月の小売売上高は、前月比+0.3%の7056億ドル(100兆円)となりました。
1か月前は7か月ぶりに前月比マイナスとなっていましたが、クリスマス商戦が始まって再びプラス圏に浮上しました。市場予想の▲0.1%も上回っています。感謝祭からサイバーマンデーまでのネット通販の売上高は前年比+7.8%で活況だったとアドビが集計しています。
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東京市場も前の週は円高・ドル安に振り回されましたが、先週は徐々に落ち着きを取り戻しました。前週よりもさらに円高がじわじわ進んでいるにもかかわらず、です。
自民党・安倍派のパーティー券裏金問題が広がり、松野官房長官、荻生田政調会長をはじめ「5人衆」が閣僚・党の要職を辞任しました。岸田政権の内閣支持率は26%まで低下しています。これほどの異常事態にもかかわらず、株価がしっかり持ち直しているところがカギです。
12月13日には今年最後の日銀短観が発表され、大企業・製造業の業況判断DIは「プラス12」でした。前回調査の「プラス9」から改善し、これで3四半期連続で製造業の業況は上向きとなっています。
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株式市場では1月決算企業(4月、7月、10月も)の決算発表がピークを迎えています。決算内容の好調・不調とともに、配当金の増額や中期経営計画の見直し、「資本コストを意識した経営」への言及など、1月決算期とは思えないほどの熱気です。
年が明ければ早々の1月12日(金)には、早くも2月決算企業(5月、8月、11月)の決算発表が集中的に発表されます。この日だけで216社もの多数の企業が決算発表を行います。
「会社四季報・2024年新春号」も発売されたばかりです。業績相場の真っただ中で、決算データに関心が向かいやすいタイミングを迎えています。個々の銘柄ごとの動きも活発になっており、あとから日経平均などの株価指数がついてきているような展開です。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが4週ぶりに反発しました。上昇率は+0.34%ときわめて小さいものにとどまっていますが、円高のプレッシャーを受けての反発に意味があります。
規模別では大型株の上昇が顕著です。前の週に最も大きく下落した分の反動もあるのでしょうが、大型株は+0.45%としっかりしました。小型株も7週ぶりの下落からすぐに切り返して、+0.54%と大型株以上に堅調です。
スタイル別では、グロース株は前週の7週ぶり下落から反発しました。一方で金利低下もあってバリュー株は軟調でした。4週連続の下げです。
騰落レシオは先週末の98.28%からさらに低下して、週末は97.43%となりました。それでも比較的高い水準をキープしています。日経平均のサイコロジカルラインは「4」~「5」を10日間続けたあと、12月相場では初めて「6」に浮上しています。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落は、9業種が値上がりし、8業種が値下がりしました。
値上がり上位のセクターは前週から大きく反発した「機械」がトップです。
続いて「電機・精密」がこちらも前週のマイナスから大幅に切り返しました。値上がり第3位の「素材・化学」も同様です。
「機械」セクターは、オークマ(6103)、DMG森精機(6141)、ジェイテクト(6473)が軟調ですが、ダイキン工業(6367)が円高にもかかわらずようやく反発し、広範囲な上昇が見られました。
半導体関連のディスコ(6146)、栗田工業(6370)、野村マイクロ・サイエンス(6254)が力強い上昇を見せ、引き続きセクター全体をリードしました。ダイフク(6383)、北越工業(6364)、巴工業(6309)などの設備投資関連株も堅調です。
「電機・精密」でも東京エレクトロン(8035)が上場来高値を更新し、アドバンテスト(6857)、ソニーグループ(6758)、アルバック(6728)、ミネベアミツミ(6479)など半導体関連株が物色されました。
日本CMK(6958)、大真空、(6962)、TDK(6762)の電子部品株の一角にも買い物が向かっています。
「素材・化学」ではやはり信越化学工業(4063)の上場来高値更新が光ります。同じく半導体関連株ではレゾナックHD(4004)も堅調でした。太陽HD(4626)のようなプリント基板に関連する銘柄の堅調さも目に入ります。
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反対に値下がりセクターの上位には「銀行」、
(後略)