ブログ

2024年4月24日

日経平均は週末▲1011円、調整4週目で下げ基調が強まる

鈴木一之

鈴木一之です。株式市場の調整ムードが強まってきました。地政学的な緊張の高まりとインフレ心理の両方が理由です。それらが重なることで企業業績の伸びが抑えられると警戒されています。

先週の金曜日には日経平均がザラ場中に▲1300円を超える下げに見舞われました。リスク回避の動きが一気に強まって、一時は37,000円の大台を割り込んでいます。

G20財務相会合が開催されている最中に、イランの領土内で複数の爆発があったとのニュースが下げを増幅したようです。

その流れは金曜日のNY市場にも波及しており、NASDAQは6日続落しました。NYダウ工業株はプラスをキープしましたが、半導体関連株が軒並み安となっており、週明けの東京市場にも影響しそうな流れです。

NASDAQは週間ベースで4週連続の下落となりました。週間で▲893ポイントも下げたのは2年ぶりのことです。

イスラエルによるイランへの報復攻撃を世界中が警戒しており、インフレリスクと金利上昇の脅威が一段と高まっています。グロース企業の集まるNASDAQには厳しい投資環境に変わりつつあります。

@@@@@

先週は週明け早々、イランがイスラエルに向けてドローンを使った報復攻撃に出たというネガティブなニュースで始まりました。攻撃は人口の密集する地域を避け、事前に攻撃を通告していたこともあって、イスラエルは9割以上のミサイルを迎撃することに成功したようです。

イランも全面戦争に発展しかねない報復は、本心では避けたかったところのようです。しかし国内の保守強硬派を封じるために、限定的な報復措置に出たと解説されています。

宿敵同士とされるイスラエルとイランでも、これまで代理戦争にとどめ直接の武力行使は避けていたはずです。それがドローン攻撃とはいえ、相手の領土を直接攻撃した点は過小に評価はできません。

1979年のイラン革命以来、半世紀近くに及ぶ両国の敵対の歴史の中でも、今回のような直接攻撃は初めてです。中東地域での戦火拡大を警戒して、世界のマネー市場は週明けから一斉にリスク回避に動きました。株価は下落し金属資源やエネルギーの価格が上昇しています。

しかし「限定的な反撃」というのはあくまでイラン側の主張であり、それに対して19日(金)には、今度はイスラエルが再び反撃に出ています。

イランの複数州で防空システムが発動し、爆発音も聞こえたとの報道があって、東京株式市場はこの時間帯に日経平均が▲1300円も下落するまでにました。

核施設への攻撃は避けられたようですが、イスラエルの後ろ盾である米国の忠告を振り切って攻撃に出ており、中東情勢の混迷はエスカレートする一方にあります。これが物価と金利の上昇に拍車をかけています。

@@@@@

先週も米国の長期金利は高止まりを続けてました。10年国債金利は週半ばに4.66%まで上昇しています。

きっかけは15日に発表された3月小売売上高です。速報ベースで前月比+0.7%も増加しました。市場予想の+0.3%を大きく上回っており、2か月続けて前月比プラスで、堅調な雇用情勢が消費者心理を明るいものにしています。

本来であれば米国経済の好調は歓迎されるべきところですが、ドルディロック相場に慣れている現在はそうは受け止めません。4月10日の3月CPIに続いて、強すぎる経済データが物価と金利の上昇を通じてマーケットにネガティブに作用しています。

FRBによる今年の利下げ見通しは、これまでの「年3回」が、経済データが発表されるたびに後退を余儀なくされています。現在のところ「年1回」との予想が急速に浸透しつつあります。

パウエル議長は16日(火)にシンクタンクの討論会に出席して、物価の上昇率が目標である2%に戻るのは「予想以上に時間がかかる」との見通しを述べました。それまでの「目標に向かって順調に事態は進んでいる」との見方を大幅に後退させたことで、市場では利下げの可能性がさらに遠のいたと見ています。

@@@@@

パウエル議長は「必要な限り現在の引き締め的な政策を維持する」とも述べ、これによって年内は利下げどころか、利上げが再開されるとの見通しすらも浮上しています。

米国で利上げ再開の見方も浮上していることから、為替市場ではドル買い・円売りが継続しています。

政府・日銀による為替市場への介入警戒感も強く、日銀が近々に利上げに転換するとの観測も浮上しています。さらなるドル高・円安には踏みとどまっていますが、17日(水)には東京市場でも1ドル=154円台後半へと、34年ぶりの安値に入りました。

先週は米ワシントンでG20・財務相会合が開催され、そこでも現在のドル独歩高への懸念が議論されました。G20後には日米韓の3か国による財務相会合も開催され、日韓による協調為替介入の可能性も浮上しています。

週明け以降に極端な動きが出た場合の、両国の動きが注目されそうです。

@@@@@

各国の政治・経済が急速に変動しており、経営の前提条件が変わってきた企業の動きも急展開しています。

テスラが全従業員の10%以上を削減するという縮小案が報じられています。中国でのEVの販売不振に加えて、各国政府の補助金による販売奨励策が転機を迎えていることも要因です。

テスラが低価格EVからの撤退を検討していることも伝わりました。テスラは何のリリースも出していませんが、テスラの戦略転換は世界中の自動車メーカーのEV戦略に影響が出ることは間違いありません。

アマゾン、マイクロソフトに続いて、オラクルも日本で大規模なデータセンターを建設する計画を明らかにしました。今後10年間で80億ドル(1.2兆円)を投じて、クラウドや生成AI向けデータの設備を整える意向です。

経済安保の視点から、自国の機密データは海外には持ち出さず、自国内で管理するという機運がますます強まります。歴史的な円安もあって、海外から日本に向かって資金が流れ込みやすくなっており、今後も日本への投資額を増やす海外企業が出てくるでしょう。

金融では住信SBIネット銀行が短期プライムレートを引き上げました。マイナス金利が解除された後に、日本の金融機関で短プラ引き上げは初めてです。

資金の調達コストがそれだけ上昇しているので、今後も短プラ引き上げに踏み切る銀行が相次ぐことになりそうです。秋には変動型の住宅ローン金利が引き上げられる可能性が強まってきました。

新聞のチラシ広告にもマンションの販売物件のセールスが入ることが増えており、駆け込み的に住宅ローンを組む動きも活発化しそうです。

@@@@@
@@@@@

先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。下落率は▲4.83%とかなり大きく、前週の+2.11%の上昇と比較でもかなりの下落となりました。

規模別では大型株指数が▲5.09%に対して、小型株指数は▲4.08%で、いずれも大幅安となりました。ここまでの上昇をリードしてきた大型株に利益確定を急ぐ動きが見られました。

バリュー株は▲4.43%の下落ですが、これに対してグロース株は▲5.26%と下げが一段と大きくなりました。引き続き金利の上昇に対してグロース株の不利という状況が続いています。

全面安となる日が多く見られたため、騰落レシオは96.48%まで低下しています。2月25日以来の低水準となりました。日経平均のサイコロジカルラインは「5」の状態を4日間続けています。

@@@@@

TOPIX-17業種のうち、すべてのセクターが値下がりしました。

値下がり上位のセクターは「機械」、「不動産」、「電機・精密」です。

「機械」と「電機・精密」の値下がりはほとんどが半導体関連株の下落です。ディスコ(6146)、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、レーザーテック(6920)の主軸となる半導体関連株が軒並み大きく下落しています。

オランダのASML、台湾のTSMCが1-3月期の決算を発表し、それがいずれも市場では軟調な値動きとなって評価されたため、東京市場でも半導体関連株が週末にかけて一斉に下落しました。

ASMLは足元の受注が減少している点が嫌気され、台湾のTSMCは現在の利益水準は評価されたものの、先行きの見通しを引き下げたことが警戒されています。

特にTSMCの場合、2024年の半導体業界全体の生産予想を「10%以上の伸び」から「10%の伸び」に修正しただけで株価が急落しています。

株価の反応が過敏になり過ぎているようにも感じられますが、見方を変えれば、世界の投資家は半導体市場の将来をそこまで余すところなく評価していたわけで、そこにわずかな刃こぼれが生じただけでも、すべてが一度に否定されるということになりかねない状況です。

決算発表ではこのあとにアドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)など、日本の半導体大手が続きます。その内容を見てみたいという意向が強まりそうです。

値下がり第2位は「不動産」です。三井不動産(8801)、

(後略)

日本株に関する情報をいち早くゲット!

ここでしか読めないメールマガジンを配信しています。
登録無料!

鈴木一之