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2024年5月7日

連休の谷間、為替市場への介入が実施され局面転換へ

鈴木一之

GWの真っただ中にどうやら為替市場で円買い介入が実施されました。ドル円相場は1週間で1ドル=160円から、151円台まで円が急伸しています。

連休ということもあって日経平均の動きは鈍いままです。それでも米国市場はFOMCと4月雇用統計の発表により大きく変化し始めています。

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大きな休暇の前後で相場づきがガラリと変わる、と指摘されます。どうやら今年もそのような展開になりつつあるようです。

きっかけは為替市場における円の急伸です。連休が始まったばかりの4月29日(月祝)に円相場は対ドルで154円台まで急上昇しました。その直前に34年ぶりとなる160円台まで売り込まれていたために、為替市場における円買い介入が実施されたとの見方がもっぱらです。

財務省は一切コメントせず、為替介入の事実を認めていませんが、断続的に大口注文が入ったことから、トレーダーは異口同音に為替介入の発動を指摘しています。これほどの急激な値動きを見ても事実はそうなのでしょう。ヘッジファンドは一斉に買い戻しに動いている様子です。

3連休明けの4月30日(火)も東京時間の早朝に円相場が再度急伸したため、これも介入によるものと推察されます。

2日後に判明した資金移動では、1回目の介入で5兆円強の資金が投じられ、続く2回目の介入で3兆円強、合わせて8兆円の資金が一度の投入されています。介入金額としては、2022年9月から10月にかけて合計3回実施された時の9兆円に次ぐ規模となります。

それだけにとどまらず、さらに4月30日-5月1日の米FOMCの直後にも介入が入ったと見られます。円はそれまでの157円から153円まで、わずか1時間で4円以上も円高に動きました。

市場筋によれば、いずれの介入も5兆円規模のかなりまとまった金額が投入された模様です。トータルで2022年10月に実施された介入時の金額を大きく上回ることになります。これまで一貫して下落を続けたドル円相場の方向転換につながる可能性があります。

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もちろん介入だけで市場の流れを変えることはできません。しかし先週はマクロ経済統計やFOMC開催など、市場を取り巻く外部環境も大きく変化しています。これまでの流れが変わる可能性があります。

ひとつは、緊迫する中東情勢に関して、イスラエルとハマスとの間で停戦合意が成立する可能性が出てきたことです。

もうひとつは4月の米雇用統計です。発表された労働市場のデータは、強すぎる米国経済に対して緩和の兆しが見えており、高まっていたインフレ圧力が緩和に向かい、ゴルディロックス相場が戻ってくる可能性が浮上しています。

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まず中東情勢です。イスラエルによるガザ地区への攻撃が停戦合意に向かう可能性が浮上しています。

4月27日、イスラエルが人質解放を条件に初めて、恒久的な停戦を議論する用意があるとハマスに向かって提案したと報じられました。カタール、エジプト、米国が仲介しており、交渉のためにハマスの代表団がカイロに向かいました。

これまでの交渉では、ハマスはイスラエル軍のガザ地区からの完全撤退を要求しており、これにイスラエルはまったく応じませんでした。それが今回は双方とも歩み寄りの姿勢を見せています。

原油価格は週初の82ドル台後半から、週末には78ドル割れに急落しています。

イスラエルとハマスの間で急速に停戦合意が進みつつある背景として、ひとつはイスラエル国内でネタニヤフ首相への支持が急速に低下していることが挙げられます。

もうひとつは米国の名門・コロンビア大学への警官隊の突入です。パレスチナを支持し反戦デモを行っていた参加者に対して、大学側からの依頼によって警察が強制排除に乗り出しました。

西海岸のUCLAでも警察がデモ参加者の強制排除に踏み切っています。逮捕者は1600人に達したとの報道もあります。大統領選挙を控えるバイデン政権の中東政策に対して、若者の非難が高まっており、ここで対処方法を誤ると、4年前の選挙でバイデン氏に投票した若者票を失うことになりかねません。

民主党政権にとって大きな分岐点に差しかかっており、これ以上の混乱はイスラエル、米国双方が何としても避けたいところです。

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経済面では米国は好調を維持しています。好調どころか「米国の強すぎる経済」が世界のマーケットを攪乱させているのが現状です。

先週開催されたFOMCでは、FRBは予想通りに政策金利を据え置きましたが、同時に債券保有額を圧縮するQT(量的引き締め)のペースを6月から緩めることも決定しました。

パウエル議長は記者会見で「(物価目標の達成には)まだ時間がかかる」とあらためて述べましたが、同時に金利引き締め政策への後戻りも「可能性は高くない」と否定的な見解を明らかにしました。

FOMCの直前まで、市場では年内の利下げ観測が大きく後退しつつありました。それががパウエル議長の会見内容を受けて、「利下げ観測の後退」が再び後退しています。FOMCを経過することで、マーケットでは「FRBは思ったほどタカ派ではない」という受け止め方が広がっています。

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パウエル議長は今後の決定は、すべて「データ次第」であると繰り返し述べています。経済データを見ない限り、インフレが進んでいるのか、政策効果が上がっているのか、確かなことは何も判断できません。

その経済データでは、月初め恒例のISM・製造業景況感が発表されました。4月の製造業の景況感は49.2(前月比▲1.1)となり、分岐点となる「50」を再び割り込みました。市場予想の50.1も下回っています。

4月30日にカンファレンスボードから発表された4月の消費者信頼感は97.0(前月比▲6.1)でした。2022年7月以来、1年9カ月ぶりの水準まで低下しています。雇用関連の数字が低下したことが響いています。

そして世界中が注目する4月・雇用統計が労働省より発表され、非農業部門雇用者数は前月比+17万5000人(市場予想は+24万人)、失業率は3.9%(前月は3.8%)、時間当たり平均賃金の伸びは前年比+3.9%(予想は+3.8%)となりました。

強すぎる米国の景気が弱まり、週末にかけて米国の長期金利は低下して株価は大きく上昇に向かいつつあります。

それと同時に、弱かった中国の景気も持ち直しています。月替わりで中国の製造業PMIも明らかになり、4月は50.4(前月比▲0.4)と低下したものの、「50」の分岐点を2か月連続で上回りました。新規受注、生産ともに前月比マイナスでしたが、どちらも「50」のラインを越えています。

世界は連動性をますます高めています。目下のところ「弱さと強さの中間地点」として、ゴルディロックス相場が復活する芽が見えつつあるようです。

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先週の東京株式市場は、大型連休の谷間で立ち合い日数は3日間だけでした。TOPIXは3週ぶりに上昇しました。上昇率は+1.57%で、前の週の+2.29%に続いてまずまずの値上がりです。

規模別指数では、大型株指数が+2.09%と最も大きな上昇となり、それに対して中型株指数は+0.59%、小型株指数は+0.48%にとどまりました。引き続き大型株優勢の展開です。

スタイル別では、TOPIXグロース株が+1.63%の上昇に対して、TOPIXバリュー株も+1.51%と、ほぼ同じ程度の上昇を示しました。大型株はグロース株、バリュー株そろって戻り歩調をたどっています。

騰落レシオは引き続き93.68%まで低下しています。日経平均のサイコロジカルラインは「6」の状態を続けたのち、週末は「7」で引けました。目立った変化は見られません。

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TOPIX-17業種のうち、値上がりセクターは14業種、値下がりセクターは3業種となりました。

値上がり上位のセクターは「医薬品」、「電力・ガス」、「商社・卸売」でした。いずれも決算発表に絡めて株価が急上昇したセクターが上位となっています。

「医薬品」では第一三共(4568)、

(後略)

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鈴木一之