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2024年5月28日

エヌビディアの決算に沸いた1週間、日経平均は39,000円をはさんで一進一退

鈴木一之

鈴木一之です。先週はエヌビディアの株価と業績に沸き返った1週間でした。ただしそれを除けば、マーケットにはさほど動きのなかったような感じもいたします。

エヌビディアの空前の好決算と株価の上昇からもう1年が経過しました。生成AI用に画像処理半導体(GPU)に対する需要は依然として衰えていません。5月22日(水、現地)にエヌビディアが2-4月期の決算を発表し、今回も市場予想を大幅に上回る内容に世界中が興奮しました。

エヌビディアの決算は、売上高が260億ドル、前年比3.6倍に拡大しました。アナリストの事前予想は245億ドルでしたので、今回も予想を大幅に上回りました。すべての予想をぶっちぎる圧倒的な売上げの伸びによって最高益を更新し、株価は史上初めて1000ドルの大台を突破しました。

エヌビディアの業績拡大はとどまるところを知りません。続く5-7月期の見通しも、売上高は280億ドル前後に達し、市場予想の265億ドルを大幅に上回っています。

黒い革ジャンがよく似合うジェンスン・ファンCEOは「新しい産業革命が始まった、私たちは次なる成長への態勢が整っている」と全世界に向けて高らかに宣言しました。

同社の決算を実際に見るまでは、警戒して動きが取れなかった株式市場ですが、この決算内容を受けて5月23日(木)の東京市場では半導体関連株が軒並み高となりました。

レーザーテック(6920)とディスコ(6146)がそろって上場来高値を更新し、MARUWA(5344)、大阪有機化学工業(4187)、A&Dホロン(7745)という、これまであまり手掛けられてこなかった小型の半導体関連株が広範囲に買い直されました。

ただし、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、スクリーンHD(7735)のような半導体セクター、いわゆる中核銘柄の上昇は限定的なものにとどまりました。これらの銘柄はすでに買うべき人はすでに買ってしまい、株式市場での新たな買い需要が起こりにくくなっているように見えます。

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米国でも株価の上昇が見られるのは、エヌビディアとごく一部の銘柄にとどまっています。必ずしもテクノロジー銘柄の全面的な上昇につながっているわけではないようです。

翌日の5月23日(木、現地)の米国市場では、NYダウ工業株が▲605ドルも下落し、1日の下げ幅としては今年ワースト、2023年2月以来の下げ幅となりました。

エヌビディア効果が効かないというよりも、この日はS&Pグローバルが発表した5月の米PMIが速報ベースで54.4と、前月比+3.1も上昇したことが影響しています。これほどの上昇は2022年4月以来、2年1か月ぶりのことです。

この強い経済データによって、年内の利下げ回数の議論が再燃しました。「年2回」の利下げにようやく絞られてきたものが、あらためて利下げ見通しが後退する形です。米国経済は4-6月期も高い成長が続くことが予想として出始めています。

1週間が終わってみれば、米国の株式市場はNYダウ工業株で▲934ドルも下落して、週間ベースで今年最大の下げ幅となりました。FRBによる早期の利下げ観測が後退しつつあります。ゴールドマン・サックスは利下げ開始の時期を、それまでの7月から9月に遅らせた模様です。

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株価の騰勢は一服しましたが、世界中で大きなニュースは豊富に飛び交いました。先週はイランのライシ大統領がヘリコプターの事故で死亡する、という不穏なニュースから1週間が始まりました。

5月20日、台湾では1月の総統選で当選した民進党の頼清徳・総統が正式に就任しました。その頼総統が就任式で行った演説で「両岸がともに平和と共栄を追求する」点を強く訴えたことが、台湾独立への方針を言外に伝えたとして中国を刺激した模様です。

中国はすかさず台湾をぐるりと取り囲む海域で、陸海空軍とロケット軍が軍事演習を開始しました。台湾の国防省にあたる国防部は、今回の中国軍の演習開始を強いトーンで非難しています。

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日本では長期金利の上昇が続いています。週初に0.975%をつけた新発10年物国債金利は、週半ばには11年ぶりに1%の大台に乗せました。日銀が金融政策の正常化を進め、一段と金利は上昇するとの観測が強まっています。

日本でもコモディティ価格の上昇が続いています。銅市況は史上最高値を更新し、海外市場でニッケルが9か月ぶりの高値に達しました。ニッケルの産地であるニューカレドニアで人種問題をきっかけに大規模な暴動が発生し、それがニッケルの需給バランスに影響しています。

ソフトコモディティも上昇に弾みがついており、北欧産のサーモンの価格は3年で2倍に急騰しました。史上最高値を更新しています。回転寿司で最も人気の高いネタの「サーモン」が値上げ必至の状況に直面しています。

ポリエチレンやポリプロピレンの原料となるナフサも5月は+5%値上がりし、1年半ぶりに最高値を更新しました。低密度ポリエチレンやポリプロピレンの上昇に波及するのは確実と見られます。

基礎的な産業素材が広範囲に値上がりしており、そこに円安が追い打ちをかけます。金利が強含みで推移しているにもかかわらず円安が進行し、企業は原材料価格の上昇に苦慮することになるでしょう。

物価と金利、為替の値動きは相対的なもので、先週末にかけて円は下落し一時157円台まで円安・ドル高となりました。円買い介入が観測された後の最安値を更新しています。

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テクノロジー関係で言えば、エヌビディアばかりでなく、もうひとつ注目すべきニュースがありました。マイクロソフトから発表された「生成AIを搭載したパソコン」の開発です。

マイクロソフトは6月18日に、「ウィンドウズ」向けに新しい機能「コパイロット+PC(プラスピーシー)」を搭載したパソコンを発売します。端末に初めてAI処理機能が盛り込まれます。

新製品の半導体はアームが設計し、クアルコムが開発した高性能チップが搭載されます。ネットにつながっていなくても動作するため、AIの処理能力がこれまでより20倍も速くなります。これによって40か国以上の言葉をリアルタイムで翻訳することができ、文書の閲覧や過去の履歴も瞬時に検索できます。

従来のパソコンとはまったく異なる性質のガジェットが完成しました。エイサー、エイスース、デル、レノボ、HPなどのパソコンメーカーも「コパイロット+PC」を搭載したノートPCを相次いで発売する予定です。この方面の動きが活発になってきました。

マイクロソフトは「コパイロット+PC」によって「パソコンを再発明する」としています。新しい時代の扉が目の前で開かれたような気がします。エヌビディアの驚くべき決算以上に、こちらのニュースの方が消費面で今後の株式市場へのインパクトが大きいのではないかと思います。

日本でも先週は半導体とともに、一般の電子部品株が幅広く上昇しました。スマホとPCの在庫調整が徐々に終了に近づき、新しいPCサイクル、電子部品サイクルが始まる日が近づいているようにも感じられます。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。1週ごとにプラスとマイナスを繰り返していますが、下落率は▲0.11%とさらに小さなものにとどまりました。

規模別指数では、大型株指数は+0.16%と2週連続で上昇。中型株・小型株指数はともに2週連続でマイナスでした。

スタイル別では、TOPIX・バリュー株指数が▲0.14%と3週連続で下落し、TOPIX・グロース株は5週ぶりに軟化しています。大型バリュー株だけが+0.20%と上昇しました。金利上昇でグロース株が不利となる展開が見られました。

騰落レシオは7日連続して90%台となりました。週末値は98.92%で引けています。日経平均のサイコロジカルラインは「6」の中立状態を6日間続けています。

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TOPIX-17業種のうち、値上がりセクターは8業種、値下がりセクターは9業種とほぼ拮抗する状況です。

値上がり上位のセクターは「金融(除く銀行)」、「電力・ガス」、「鉄鋼・非鉄」です。

値上がりトップの「金融(除く銀行)」では、最も遅れて3月決算を発表した損保各社が一斉に上昇しました。中でも自社株買いを発表したMS&AD(8725)が急騰し、東京海上HD(8766)、第一生命HD(8750)も堅調でした。

値上がりセクター第2位の「電力・ガス」では、引き続き北海道電力(9509)を中心に、北陸電力(9505)、九州電力(9508)、四国電力(9507)、関西電力(9503)も上昇しました。

生成AI向けにデータセンターの需要の高まりが電力使用量の増大をもたらすと、先進国で一斉に電力株が物色されています。日本でも同様の理由から電力株が人気化しています。

値上がりセクターの第3位は「鉄鋼・非鉄」でした。ここでも電力需要の高まりを背景に、フジクラ(5803)、SWCC(5805)の電線株や、住友金属鉱山(5713)、三菱マテリアル(5711)など銅を産出する金属資源株が堅調です。

鉄鋼株は大きな動きは少なかったものの、上下水道管の神戸製鋼所(5406)、栗本鉄工(5602)は堅調でした。

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一方で値下がりセクターの上位は「不動産」、「医薬品」、「機械」となりました。

金利上昇を背景に不動産セクターは、三菱地所(8802)、三井不動産(8801)、住友不動産(8830)の大手3社を中心に、野村不動産HD(3231)、東急不動産HD(3289)まで全面的に軟化しました。

機械セクターでは、ディスコ(6146)、日本製鋼所(5631)が買い進まれる一方で、クボタ(6326)、ダイフク(6383)、タクマ(6013)が軟調と、決算内容による明暗がはっきりと分かれました。

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株価が軟調な分だけアクティビティストや買収ファンドの活動が目立っています。

先週はカーライルが日本KFC(9873)に対して

(後略)

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鈴木一之