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2024年7月23日
トランプトレード2週目、日米ともに最高値更新から最初の下落へ
鈴木一之です。小・中学校では夏休みが始まりました。関東地方は梅雨も明け、セミの声が一段と大きくなっています。
それとともに熱中症の被害も拡大しています。コロナ感染も拡大しているようですので、くれぐれも体調にはご用心ください。
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衝撃のトランプ前大統領・暗殺未遂事件から1週間。ずいぶんと長く感じられますが、あれから世界は大きく動き始めました。
折しも共和党全国大会がウィスコンシン州で開催され、トランプ氏が正式に共和党の大統領補として選出されました。日本でもメディアの報道はこの話題でほぼ埋められています。
トランプ氏狙撃の直後の写真が世界中で話題となりました。雲ひとつない青空にはためく星条旗。その前でシークレットサービスに囲まれながら拳を突き上げる流血のトランプ氏。ニューズ・ウィーク誌は「振りあげた拳は長い間の抑圧や権力に対する抵抗の象徴だ」と報じました。
たいへんな賛辞です。この写真がメディアやSNSを通じて世界に配信された直後から、トランプ氏を取り巻く空気や立ち位置が大きく変わりました。
選挙戦でトランプ氏を「標的にする時が来た」という表現で攻撃していたバイデン大統領、および民主党の責任を追及する声が大きくなりました。共和党もすかさずその流れを利用しています。
民主党内部からバイデン大統領では勝ち目はないと、大統領選からの撤退を求める動きが強まっています。オバマ元大統領やペロシ元下院議長など党の重鎮が、バイデン大統領を擁護する姿勢から徐々にスタンスを変えつつあります。
実業界の大口献金者もバイデン大統領の出馬に見切りをつける方向に態度を変えつつあります。現副大統領のカマラ・ハリス氏で本当にトランプ氏と戦えるのか、残り時間が短くなるばかりで、近々大きな決断が出てくる可能性をはらんでいます。
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株式市場では「トランプ大統領」の誕生を先取りする「トランプトレード」が活発化しています。
共和党が党綱領に採択した「トランプ減税の恒久化」に沿って、米国では代表的な優良企業、大型株が物色されました。NYダウ工業30種平均は7月16日(火)、17日(水)に大きく上昇して史上最高値を更新しました。
7月16日に発表された米6月・小売売上高は前月比横ばいとなり、市場予想の▲0.3%より良い内容でした。Eコマースの伸びが全体の落ち込みをカバーしています。
これまでなら「景気に対して良いニュース」はインフレ抑制に反するとして株式・債券市場ではネガティブに受け止められてきました。
しかし7月に入ったとたんに、今度は行き過ぎた金融引き締め策がオーバーキル、景気を必要以上に悪化させてしまうとされています。「景気に対して悪いニュース」を額面通りにネガティブ視する状況に市場の見方が変化していました。
そしてその見方がまたもや覆されて、景気の落ち着きを示すデータが好感されています。金利が低下し、それに支えられてキャタピラー、ボーイング、ホームデポなどの大型株の株価が好調です。トランプ政権下では環境規制、銀行規制も大きく緩和されるとの期待も手伝っています。
中・小型株を代表する「ラッセル2000」の上昇も市場の関心を呼びました。7月16日(火)には1日で+3.5%も大きく上昇して、軟調を続けていた中・小型株にも投資資金が向かい始めています。空売りの買い戻しかもしれませんが、このような動きが「トランプ大統領」待望の気運の中で一段と強まってきました。
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しかしトランプ氏のことなので、マーケットにとって上向きの評価ばかりではありません。債券市場では長期金利が低下した後に一時4.25%まで上昇しました。
トランプ氏が公約に掲げる中国への関税強化の方針、トランプ減税の恒久化、ドル安政策を現実に実行すれば、それらはいずれも財政赤字を拡大させインフレ圧力を高めることになります。今年6月、ノーベル経済学賞を受賞した16人の著名な経済学者が共同で、「トランプ氏の無責任な予算計画がインフレを再加速させる」と表明し注意を喚起しています。
債券市場よりも大きな影響が見られたのがテクノロジー、および半導体関連株です。金利上昇に弱いとされるグロース株の一環としてエヌビディア、マイクロソフト、テスラなど「マグニフィセント7」がそろって軟調です。
半導体関連株に関しては、民主党と共和党が対中国への政策では強硬な姿勢が珍しく一致しています。大統領選挙でも競い合うように中国に対する規制を強化される恐れがあり、半導体産業には逆風が強まるとの見方が出ています
実際に先週はバイデン政権より、同盟国である日本とオランダに対して、先端半導体製造装置の輸出規制を強化する可能性が示されました。これによって東京エレクトロン(8035)、スクリーンHD(7735)をはじめ、製造装置関連株が軟調な動きとなりました。
トランプ氏もTSMCの高収益に対して、台湾の安保ただ乗りは許さず防衛費負担の増額に言及しています。今も昔も半導体は先端テクノロジーの集積であり、それだけに国際政治の波に翻弄される要素がかつてなく増えています。
株式市場ではこれまでロング(買い持ち)ポジション一辺倒だった半導体、テクノロジー株ですが、政治の秋のリスクに備えて「ニュートラル」に調整する動きが出てきそうな雲行きです。
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先週の東京株式市場では、TOPIXが4週ぶりに反落しました。週間での下落幅は▲1.17%に達しています。これは4月中旬の▲4.83%以来の下げ幅です。
規模別指数では、前の週に続いて大型株が▲1.59%と軟調でした。これに対して中型株は▲0.19%、小型株は▲0.73%と下げは比較的軽微にとどまりました。
スタイル別でも同様に流れが継続しています。バリュー株が▲0.47%と小幅安にとどまり、グロース株は▲1.89%と大きく反落しました。
騰落レシオの週末値は113.30%まで低下し、4週ぶりの低さとなりました。日経平均のサイコロジカルラインは6月中旬以来の「6」に低下しています。
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TOPIX-17業種のうち、値上がりセクターは6業種にとどまり、値下がりセクターは11業種に広がりました。
値上がり上位のセクターは「食品」、「銀行」、「建設・資材」となっています。「食品」と「建設・資材」は4週連続の上昇で、内需セクターへの資金シフトがより鮮明となっています。
値上がりトップの「食品」はこの秋にも再び値上げが予定されており、収益の安定が確保されていることが好感されています。キユーピー(2809)、味の素(2802)、ニチレイ(2871)、理研ビタミン(4526)、明治HD(2269)、森永乳業(2264)、グリコ(2206)が一斉に物色されました。
「建設・資材」では、アメリカの住宅市場の回復を期待して住友林業(1911)、積水ハウス(1928)が堅調です。大手ゼネコンの大成建設(1801)、大林組(1802)も週を通じて買いが勝りました。
一方の値下がりセクターの上位には「自動車・輸送機」、「電機・精密」、「鉄鋼・非鉄」となりました。
自動車セクターではトヨタ自動車(7203)、ホンダ(7267)、スバル(7270)、マツダ(7261)など完成車メーカー、および部品メーカーがそろって軟調です。
「電機・精密」では東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、ソシオネクスト(6526)、アルバック(6728)、レーザーテック(6920)などの半導体関連の中核銘柄がそろって下落しました。
ほかにもキーエンス(6861)、
(後略)