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2024年7月30日

日経平均は理由が判然としないまま8日続落、1週間で▲6%下落

鈴木一之

鈴木一之です。夏休みが始まったとたんに猛暑、豪雨の被害が広がっています。

昨年に続いて今年は人類の歴史上、最も暑い夏になることは間違いなしと言われます。体調管理にはくれぐれもご留意ください。

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日経平均は先週末まで8日続落を記録しました。1週間の下落幅は▲6%に達しています。42,000円に達したと思っていたら、あっという間に37,000円台まで水準を切り下げました。ボラティリティが急変しています。

通常はこれほどの下げに見舞われると「〇〇ショック」という表現が付されるように、下げの原因が特定できるものです。それが今回は理由が明確には見当たりません。

6月末から7月初旬にかけての上昇も、物色の主役となる銘柄が見出せませんでした。その反動安が起きているとすれば、現在の下げの理由が特定できないのも理解できないわけではありません。

強いてあげれば「トランプトレード」が逆流していることになりますが、「トランプトレード」そのものもさほど強力なものではありませんでした。ここまで好調だった半導体関連株が米国で一斉に下落に転じており、そのマイナスインパクトが東京市場でも大きかったと見るべきでしょう。

生成AIは本当にこれまでの膨大な投資金額に見合う経済的な効果をもたらしてくれるのか、という疑問符が米国市場では次第に大きくなりつつあるようです。それが今回の決算状況で次第に明らかにされるはずです。

以下に株価に影響を与えたと見られるこのほかの要因も列挙しておきます。

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週初めの7月21日(日)にバイデン大統領は大統領選から撤退すると発表しました。民主党内でも吹き荒れていた「バイデン降ろし」に呼応する形で、現職大統領の不出馬という歴史的な決断が下されました。

後継候補にはハリス副大統領を支持することが明らかにされ、ここから共和党の「トランプ氏候補が優勢」というこれまでの流れに変化が生じています。

ハリス副大統領はわずか1日で、指名獲得に必要な民主党の代議員数の過半数(1976人)を大幅に上回る2668人を確保したと伝えられます。8月7日のオンラインでの指名投票を経て、8月19日からの民主党全国大会に臨みます。

ハリス氏はさっそく「中間層が強くなれば米国は強くなる」とのメッセージを打ち出し、トランプ氏に対する全面的な戦いを宣言しました。元検事、元州司法長官の経歴を前面に出して、有罪判決を受けたトランプ氏を断罪する格好で選挙戦を挑む構えです。

株式市場では「トランプトレード」の巻き戻しが始まっていますが、社会全体にはむしろ落ち着きが戻っています。ハリス氏の副大統領としての評価はイマイチですが、ここからの選挙戦の戦い方次第では、女性票、黒人票、若者票など反トランプ票を丸ごと獲得することも不可能ではありません。

秋の本選に向けてわずか1週間で、共和党に大きく傾いた流れが変わりつつあります。

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7月22日(月)は中国が利下げに踏み切った日でもあります。

中国人民銀行はこの日、事実上の政策金利である最優遇貸出金利(ローンプライムレート)の1年物、5年物の金利を引き下げました。期間の異なるふたつの金利を同時に引き下げたのは2023年6月以来、13か月ぶりです。

中国景気は低迷を続けており、4-6月GDPは前年比で+4.7%の伸びにとどまりました。1-3月期の伸びから▲0.6ポイントの低下です。内需の低迷が大きく資金需要がさえません。

中国政府は消費刺激策の一環として、3000億元(6.4兆円)にのぼる家電・自動車の買い替え用に補助金を出すと発表しました。EVの補助金は1万元から2万元に引き上げ、家電製品も冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコン、パソコンなど8種類を対象に、販売価格の15%、最大2000元を補助するとしています。

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中国政府によるこのようなマクロ経済刺激策が発動されても、なお世界は中国の「過剰生産問題」に対する警戒を緩めてはおりません。

日本製鉄(5401)は50年に及んだ中国・宝山鋼鉄との合弁事業から撤退すると発表しました。

合弁会社である「宝鋼日鉄自動車鋼板」は、日鉄グループの中国での鋼材生産能力の7割を占めます。そのすべての株式を宝山側に売却します。中国事業を大幅に縮小して、その分を米国とインドに集中させる方針です。

ホンダ(7267)も中国でのガソリン車の生産を3割削減すると報じられました。現在7か所あるガソリン車工場のうち、広州と武漢という主力の2工場を閉鎖・休止する予定です。広州にある別の工場も閉鎖か休止する方針のようです。

この措置によってホンダの中国におけるガソリン車の生産能力は、年149万台から100万台に大きく減少します。これまでに明らかになった日本メーカーの削減規模では最も大きくなります。

日本企業による設備投資計画は過去最大を記録するような現状で、日本企業による生産拠点の精査、統合、再配置が始まっていることがうかがえます。配置換えの中心は中国です。中国の不安定な政治状況は変わらない、と見切りをつける企業がこれから続々と出てくる構えです。

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先週の東京株式市場では、TOPIXが大きく続落しました。週間での下落幅は▲5.64%にも達し、2022年6月17日の週の▲5.52%を上回りました。

規模別指数では、引き続き大型株が▲6.23%と最も激しく値下がりしています。中型株も▲4.67%、小型株も▲3.83%と大きく下落しました。

スタイル別でも同様に、大型バリュー株が▲5.53%、大型グロース株が▲5.75%といずれも大幅安となっており、グロースとバリューを問わず軟調な動きが見られます。

騰落レシオは1週前の113.30%から96.51%に低下しました。日経平均のサイコロジカルラインは「3」まで一気に低下しており、2023年10月以来の低い水準です。

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TOPIX-17業種のうち、すべてのセクターが値下がりしました。中でも値下がりの大きかったセクターが「電機・精密」、「金融(除く銀行)」、「機械」です。半導体関連株の下げが影響しています。

反対に値下がりの小さかったセクターは「医薬品」、「運輸・物流」、「食品」です。ディフェンシブ色の強いセクターは比較的堅調でした。

値下がりトップの「電機・精密」は半導体関連株が中心に値下がりが目立ちます。ルネサスエレクトロニクス(6723)が第2四半期の決算発表をきっかけに急落し、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、ソシオネクスト(6526)などがそろって軟調です。

決算発表では2月決算の安川電機(6506)が下げ止まらず、ニデック(6594)も週を通じて見れば軟調でした。

値下がりセクターの第2位は「金融(除く銀行)」です。株価が高止まりしていた生損保株が急落しており、東京海上HD(8766)、MS&AD(8725)の下げが目立ちました。
値下がりセクターの第3位は「機械」です。ディスコ(6146)、オルガノ(6368)の半導体関連株が同じく軟調で、合わせて物色されていたDMG森精機(6141)、オークマ(6103)やトランプ銘柄とされるコマツ(6301)、日立建機(6305)も反落しました。

反対に値下がりの小さかったセクターのトップが「医薬品」でした。協和キリン(4151)、アステラス製薬(4503)、中外製薬(4519)、大塚HD(4578)など広範囲に上昇が見られました。

第2位の「運輸・物流」ではJR九州(9142)、第3位の「食品」セクターではニチレイ(2871)、明治HD(2269)、森永製菓(2201)とともに、これらの業種はディフェンシブ的なセクターとして資金の逃避先となっています。

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日本でも3月決算企業の第1四半期決算の発表が本格化しています。

日本郵船(9101)はコンテナ船運賃の上昇を背景に、2025年3月期の純利益を従来の2450億円から3900億円に大幅に上方修正しました。ニデック(6594)は産業用モーターの好調から、2025年3月期の純利益を1650億円から1850億円に引き上げました。

キヤノン(7751)も印刷機器やカメラの伸びによって、2024年12月期の純利益を3050億円から3350億円に引き上げています。日東電工(6988)も

(後略)

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鈴木一之