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2024年8月6日

日銀ショック、日経平均の下げ幅は▲2216円、史上2番目の下げ幅

鈴木一之

鈴木一之です。8月相場が始まりました。観測史上最も暑い夏を昨年に続いて迎えています。

株式市場は大きく下落しています。いくつもの下落要因が絡み合って、一筋縄ではいかない下げ相場を形作っています。

8月2日(金)の終値は日経平均で35,909円まで下落しました。前日比▲2216円まで下げています。下げ幅では1987年10月の「ブラックマンデー」で記録した▲3836円に続く、史上2番目の大きさです。

下げ幅はきわめて大きいのですが、しかし下落率では▲5.8%にとどまっています。歴代50位にも入りません。ブラックマンデーの時は1日で▲14.9%にも達しました。「日経平均4万円時代」の値動きに早く慣れなくてはいけません。

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それでも歴史的な騰落記録との比較が持ち出されるほど、下げ幅が大きかったことは事実です。現在の株式市場が直面している下落の要因は下のようになります。

・米国の景気後退懸念(失業率の上昇、ISM製造業の悪化)
・日銀の政策金利引き上げ(+0.25%、7月31日に決定)
・それに伴う急激な円高(154円→146円台半ば)

・中国経済の悪化続く(7月PMI、49.4)
・半導体関連株の下落(インテルが赤字転落、株価▲26%)

・日本の企業業績の苦戦(4-6月期の実績弱い)
・中東情勢の緊迫化(ハマス、ヒズボラのリーダー殺害)

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そもそも7月相場はむずかしい展開の連続でした。日米の金融政策を巡る市場参加者の心理面だけで動いていたように思います。

市場は細い道を注意しながら歩いてきましたが、それが最後になって注意が途切れ急変したようです。まさかこのタイミングで日銀が利上げを本当に実行するとは。

すべての思惑や予想がひっくり返る結果となり、それまで積み上がったポジションを整理する投げ売りが広がっています。文字通りの「日銀ショック」です。

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日経平均の直近高値は42,224円(7月11日)。日銀の政策金利に関して「利上げある、なし」で錯綜していた思惑は、どうやら「利上げなし」に傾いて、それ以前からの「円売り・日本株買い」のポジションが一段と積み上がり、株式市場は史上最高値を更新するに至りました。具体的な買い材料がないのもうなづけます。

米国ではほぼ同じ時期に、パウエル議長が議会証言を行い「リスクはインフレだけではない」との主旨を述べました。景気後退のリスクに初めて言及したことになります。

同じタイミングで米6月CPIが予想以下と判明し、米国の金融政策は利下げのタイミングを探るハト派に傾きました。思惑先行で推移していた米国の株高は徐々に修正される方向に向かっています。

もとから相場はかなりの過熱局面にありました。バンク・オブ・アメリカのマイケル・ハートネット氏は「世界で最も過熱しているマーケット」として「円売り、銅買い、AI買い」の3つを指摘しています。それらがここにきて順番に崩れ、先週は一斉に過熱感を解消する方向に向かっています、

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世界の半導体関連株への過度なポジションは徐々に減じる方向にあります。エヌビディアのような誰が見ても業績面で優位に立つ銘柄にさえ売りが勝るようになりつつあります。

先週までの2週間でアップル、アマゾン、マイクロソフト、エヌビディアなど「マグニフィセント7」は時価総額を▲200兆円も減らしました。この間に日経平均も▲6%下落しています。

そのような折に、半導体関連株の中でも弱い部類に入るインテルが4-6月期の決算を発表しました。赤字転落です。

PC向けCPU部門の売上高は+9%でしたが、データセンター・AI部門は▲3%にとどまりました。生成AI向けの半導体需要をとらえ切れず、最終損益は▲16億ドルに達し、15,000人の削減と無配転落もあわせて発表しました。インテルの株価は1日で▲26%の大幅下落となっています。

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中東情勢も混迷したままの状況です。先週はハマスとヒズボラのリーダーが相次いで殺害されました。明確にはわかっておりませんが、対抗しているイスラエルが手を下したとの見方がほとんどです。合意間近に向かっていた和平交渉がこれで振り出しに戻ったとされています。

日本の景気動向も気がかりです。6月の鉱工業生産指数は100.6となり、前月比▲3.6%も低下しました。自動車メーカーの認証不正問題による生産停止が響いて2か月ぶりのマイナスです。

このような時期に実行されたのが、日銀の政策金利の引き上げです。7月31日の金融政策決定会合で、政策金利を0.25%に引き上げると決定されました。

市場の一部には利上げ予想もありましたが、まさかこれほど最悪のタイミングで決定されるとは。マーケットの予想は完全にひっくり返りました。

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その日の15時半から行われた記者会見で植田総裁は、物価上昇が続けば政策金利の追加の引き上げも示唆しました。驚くほどのタカ派転換です。日本のインフレはここからさらに強まると予想されており、追加の利上げは思っている以上に早いことを市場参加者は考えるようになりました。

金融機関は一斉に預金金利と短期プライムレートの引き上げを発表しました。短プラの上昇は変動型・住宅ローンの金利引き上げに直結します。貸出金利も上昇し企業の行動は大きく変わることが予想されます。

為替市場では146円台半ばまで円高・ドル安が急速に進みました。これによって金曜日の株式市場では製造業、非製造業を問わず全面的に下落しています。

日銀がスタンスを豹変させた背後には、政治サイドからの働きかけがあったと見られる節もあります。日銀の独立性とは何か。それも今回の株安を招いた一因と見るべきでしょう。

株価上昇に伴ってわずかながら持ち直した内閣支持率ですが、株安によって再び低下しかねない雲行きとなっています。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週連続で下落しました。週間での下落幅は▲6.0%にも達し、その前の週の▲5.64%と合わせて激しい下落となっています。

規模別指数では、引き続き大型株が▲6.4%と最も大きく値下がりしています。中型株は▲5.1%、小型株も▲5.3%となり、あらゆる方面に売りが広がりました。

スタイル別では、大型バリュー株が▲6.55%と下げが加速しています。大型グロース株も▲5.52%と大幅続落です。グロース、バリュー問わず広範囲な下落が続いています。

騰落レシオは前週末の105.39%からさらに低下しており、週末は82.15%まで低下しました。日経平均のサイコロジカルラインも「3」の水準にとどまっています。

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前週に続いてTOPIX-17業種のうち、すべてのセクターが下落しました。値下がりの大きなセクターは「商社・卸売」、「機械」、「金融(除く銀行)」です。金利上昇に特に弱いセクターが一斉に売られています。

「商社・卸売」では決算発表を機に双日(2768)、丸紅(8002)が急落し、他の総合商社も総じて軟調でした。

「機械」や「金融(除く銀行)」も証券、生損保、ノンバンクを中心に全面安となりました。

反対に下げの小さかったセクターには「電力・ガス」、「小売」、「鉄鋼・非鉄」となりました。電力株は米国でも公共セクターに逃避資金が逃げ込んでおり、株価は相対的に堅調です。

「小売」は目立った上昇銘柄はないものの、サイゼリヤ(7581)、パルグループHD(2726)、大黒天物産(2791)、ニトリHD(9843)が全面安の中でも堅調です。業績面の裏付けのある銘柄には目立った売り物は出にくいようです。

「鉄鋼・非鉄」でも軟調な銘柄は多いのですが、東京製鉄(5423)、東京鉄鋼(5445)、大同特殊鋼(5471)のように、すでに好業績の確認された企業はしっかりしています。

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日銀の利上げによる株式市場の動揺が収まるには2~3か月を要するかもしれませんが、業績の好調な企業の株価はそれよりも先に底入れ反転するはずです。

先週もコマツ(6301)が最高益を更新し、TDK(6762)、アドバンテスト(6857)、日本酸素HD(4091)が好調な決算を明らかにしました。全体の地合いに押されて株価は軟調ですが、いずれは業績を評価する形で上昇に転じると予想されます。

今回の大幅な調整局面は、二極化相場のふるい落としが一段と強まるきっかけなのだと思います。このような銘柄がほかにもたくさん存在するはずです。東京海上HD(8766)、

(後略)

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鈴木一之