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2024年8月13日

日銀ショックが継続、日経平均は週初▲4451円の過去最大の下げ幅

鈴木一之

鈴木一之です。今回は「お盆休み特別号」としていつもとは異なる体裁でお送りします。

「日銀ショック」から1週間が経過しました。週初に日経平均が1日で▲4451円も下落するほど、驚くほどの下落に見舞われましたが、その後は少しずつ失われた地点を回復しています。

しかしまだすべての動揺が収まったわけではありません。世界中の株式市場の動揺が続いています。日経平均が上昇する日はほぼ全面高となり、反対に下落する日は全面安となる日が続いています。

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7月31日(水)39101円△576円(上昇数:1450/下落数:177)日銀利上げ
8月1日(木)38126円▲975円(97/1541)今年3番目の下げ幅
8月2日(金)35909円▲2217円(14/1626)今年最大の下げ幅

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8月5日(月)31458円▲4451円(14/1625)過去最大の下げ幅
8月6日(火)34675円△3217円(1575/64)過去最大の上げ幅
8月7日(水)35089円△414円(1092/526)
8月8日(木)34831円▲258円(588/1027)
8月9日(金)35025円△194円(1225/392)

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日本は決算発表のシーズン真っただ中にあるために、本来なら下落するような日でも決算内容によっては急上昇したりします。その反対に、基調として上昇するはずの日に決算発表を受けて急騰する銘柄も見られます。

記録的な株価下落の要因としては、大きく分けてふたつあると考えられます。

ひとつは米国経済です。7月・雇用統計で失業率が4.3%まで上昇したことです。

パウエル議長が7月半ばの議会証言で「リスクはインフレだけではない」と述べ、景気の急速な落ち込みに警鐘を鳴らしたことが実現しつつあります。米国が本当にリセッション、景気後退に入る懸念が現実のものとなって市場は警戒心を強めています。

ふたつめの要因が日銀の金融政策です。日銀が政策金利の引き上げに踏み切ったことが株式市場に影響していることは疑いの余地はありません。

問題は、今回の利上げの理由です。物価上昇を抑制するために行われたのか、緩和状態が長すぎることを是正する「出口戦略」の一環なのか、それとも通貨安を食い止めるために実施されたものかどうか、という点です。

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利上げによって円は150円台から140円台半ばまで急上昇し、円安トレンドは転換したかに見えます。しかしその結果、円キャリートレードが一斉に解消され、日本株をはじめあらゆるリスク資産が一斉に売られることとなりました。

8月5日(月)は、プライム市場の上場銘柄のうち、800銘柄超がストップ安まで売られることとなりました。まさに1987年のブラックマンデーの再来です。

ブラックマンデーは、強すぎるドル高を是正することを望む米国の意向を汲んで、他のG7諸国が自国通貨の切り上げを推進したこと(プラザ合意)に対して、破綻の兆候が見えたことが発端でした。

米国が金利を引き下げ、他の国が金利を引き上げることが求められましたが、短期的にはともかく、長期的にいつまでもそのような都合のよい政策が通用するはずがありません。

今も昔も財政・金融に厳しい当時の西ドイツが反旗をひるがえして、米国が求める政策金利の引き上げの要請に応じなかったことが発端となり、金融市場では米国に対する不安と不信から売りが売りを呼ぶ展開となりました。

先進国(中でも米国)の自国優先的な政策運営に対して、市場が警鐘を鳴らした最初の事例ではないかと見られます。この時を境に世界中のマーケットは連動性を強め、世界同時株安が起こる頻度が増えていったように思います。(世界同時株高、はあまり増えておりません。)

ブラックマンデーの時は市場の修復まで半年以上を費やしました。例外は日本です。日本は世界的な株価暴落の直後に、米国からの要請を受け入れて金融緩和を実施し、その緩和策を必要以上に持続したことによって、そこから正真正銘のバブルに突き進んでいきました。

その後のバブル崩壊は「失われた30年」につながっていったのです。ブラックマンデーとつい先日までのデフレ、そしてデフレ脱却は同じ土壌としてつながっているのです。

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今回の「日銀ショック」とはどのようなものでしょうか。国際協調は1987年当時ほど強くは求められていない状況です。

日銀が利上げに踏み切った選択も重要ですが、むしろ決定会合後の記者会見で述べた植田総裁の発言が尾を引いているように見えます。

植田総裁の発言の中から、印象的な言葉を抜き出してみると、

「幅広い地域、業種、企業で賃上げが広がっている」
「(賃上げが)むこう数か月続いていくという予想が得られた」

「(利上げは)景気に強いブレーキをかけるとは考えていない」
「(政策金利の)0.5%の壁が意識されるかというと、そうではない」

記者会見は一連の文脈の中で行われますので、一言一句の言葉だけを取り出して植田総裁の真意をくみ取ることはできません。それでも植田総裁の従来のハト派から一変したかのような一連の発言が市場では驚くをもって受け止められました。

これによって日銀の政策運営は、さらなる追加利上げに傾いてゆく方向にマーケットの見方は転換したと見られます。

まさに日銀の豹変ぶりが市場を驚かせたという内容です。「政策の意図」という点では、景気や物価は脇に押しやられ、円安を阻止するための通貨対策という見方が市場では広く受け止められるようになっていまs。

利上げの決定直後は株式市場も冷静に推移していましたが、為替市場では一足先に急激な円高が始まり、そこから翌日以降の株式市場において急速に売りスタンスが強まっていったという流れです。

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週明け月曜日の史上最大の下げ幅と、翌火曜日の急反発(△3217円、史上最大の上げ幅)を受けて、政府および日銀はすかさず状況の修復に向かい始めたと見られます。

8月7日(水)の函館での記者会見において、日銀副総裁の内田真一氏は「(追加の利上げは)慎重に考える」と述べました。さらに「(市場の変動の)影響を注視して政策に反映する」ことにも言及しています。

植田総裁のタカ派スタンスに対して、今回も内田副総裁が修正に動いている様子がうかがえます。水曜日の午前10時過ぎに行われた会見の内容が市場に伝わるにつれて、水曜日の前場から株式市場は急反発に向かいました。

動揺はまだ完全には収まっわわけではありません。日銀ショックの部分は少しずつ吸収しているように見えますが、残るは米国の経済状況です。週末のNY株式市場は落ち着きが見られます。日本と米国の両にらみでしばらくは上下動の激しい展開を余儀なくされそうな状況です。

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今週の株価の推移はおおむね4つの方向に分かれています。

(1)翌日にはすぐに値を戻した銘柄(三菱重工業、日立、HOYA、信越化学工業)、(2)少し遅れて値を戻しつつある銘柄(レーザーテック、ニッパツ、ユニオンツール)。

これらは株価の基調が強い銘柄群と言えるでしょう。「クオリティ銘柄」とも呼ばれ、押し目買いの意向が強く働く銘柄でもあります。

それに対して(3)まだ値を戻し切れていない銘柄(TDK、村田製作所、ダイキン工業、川崎重工、銀行セクター、総合商社)も数多く存在します。

現時点ではこのような銘柄が大多数を占めています。決算発表をにらみながら、次のリバウンド相場の焦点はここに集まってくることが考えられます。

さらに(4)まったく下がらず波動が異なる銘柄(ニトリHD、サンリオ、SHOEI、住友ファーマ)も存在します。

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ブラックマンデー時との比較で言えば、企業のアクションもはるかに臨機応変になっているように感じられます。

資金を潤沢に持つ企業は、株価が急落した際にすからず大規模な自社株を実施します。今回もソフトバンクG(9984)をはじめとして、

(後略)

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鈴木一之