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2024年10月8日

石破政権発足、米9月雇用統計を受けて週末の夜、日経平均先物は急伸

鈴木一之

鈴木一之です。10月になりました。

アメリカ式に言えば第4四半期の始まりです。今年もラストの四半期です。学校も新しい学期がスタートします。何かが変わる予感があります。

株式市場は2週連続で大きな変動に見舞われました。要因は次の3つです。

(1)石破政権が発足(衆院解散・総選挙の日程が決定)
(2)中東の戦火拡大(イスラエルとヒズボラ、イラン)
(3)日米の経済状況(日銀短観、米雇用統計の発表)

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最初に1週間の株式市場を概観します。

<先週の日経平均>
9月30日(月):37,919円▲1,910円
10月1日(火):38,651円△732円
10月2日(水):37,808円▲843円
10月3日(木):38,552円△744円
10月4日(金):38,501円△83円

石破茂内閣が正式に発足し、臨時国会において石破首相が所信表明演説を行いました。

「変節」と呼ばれても仕方のないない、政治的な主張の変化が見られますが、政治というものはそういうものです。今週は各党からの代表質問を受けた後、すぐに衆院解散・総選挙に突入します。あわただしい政治の季節が始まります。

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週明け早々に臨時国会が召集され、10月1日(火)に両院による首相指名選挙によって石破氏が首相に就任。10月4日(金)に所信表明演説、7日(月)に各党の代表質問、9日(水)に与野党による党首討論、そしてすぐに衆院解散、総選挙に移ります。

首相就任から8日目の衆院解散は戦後最短となります。これらすべてが9月30日(月)にあっという間に決定され、10月1日夜の記者会見で政権の基本方針と解散日程が説明されました。

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その月曜日、株式市場はいきなり大幅安からスタートしました。前週末の金曜日に自民党総裁選が行われ、株式市場の取引が終了した後に、決選投票で石破茂氏が逆転で高市早苗氏を破ったことから引け後に先物市場から急落しました。

アベノミクスに似た「拡張財政、金融緩和」を継承する「高市トレード」で26日(木)、27日(金)の2日間で2,000円近く上昇していた分を、そっくりそのまま打ち消す結果となりました。

為替市場でもドル円相場が急速に円高方向に進み、時価総額が最大のトヨタ自動車でさえ一時は▲8%安まで売られる週明けの全面安です。

これほどの株価下落を見て初めて、マーケットでは「高市総裁誕生」にそれほど期待していたのかと驚きが走りました。一番驚いたのは石破氏本人と石破陣営の幹部かもしれません。総裁選の初期に言及した金融所得課税はさっさと封印。衆院選での政治資金規正法での帳簿不記載議員の公認問題も軌道修正する方向のようです。

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この1週間、石破氏のこれまでの持論が次々と腰砕けとなってゆくのを目の当たりにしました。10月1日夜の記者会見では「資産運用立国の政策を発展させる」、「コストカットから付加価値型経済に転換する」と述べ、岸田政権の政策を引き継ぐことを明らかにしました。

また防衛力の強化や少子化対策に対して、財政政策を活用する方針も示しました。これまで石破氏は財政規律を重視する発言を重ねて表明してきましたが、その持論はいったん棚上げした格好となります。

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極めつけは金融政策に関する言動です。

元々は金融政策の正常化を急ぐ引き締め論者としてマーケットでは認識されていましたが、10月2日(水)に日銀の植田総裁と首相として初めて会談し、その場で個人の意見と断った上で「追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と表明しました。

石破首相が金融正常化(利上げ)の看板を下ろしたと判断され、マーケットはそこからすぐに反応し、ドル円相場は一時1ドル=147円台まで3円以上も下落しました。

円安・ドル高を受けて10月3日(木)の株式市場は日経平均で38,552円(△744円)と大きく反発。ザラ場中の上昇幅は一時+1,000円を超えるまでに達しています。

日銀がつかさどるのは物価と金融政策のみです。為替動向は日銀の専管事項ではありません。政治と日銀とのスタンスの取り方について、疑問を投げかける動きではありました。

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変節ばかりが目立つ石破首相の言動の中で、唯一揺るがない方針が地方創生です。10月1日の記者会見において、「成長の起爆剤」として地方創生をあらためて位置づけました。

地方には豊かな農・漁・林業があり、海外からのインバウンド需要も惹きつけています。この好条件を上手にすくい上げて、若い女性が大都市に流出しないような経済を地方に作り上げる、としています。

そのために政府内に新たな本部を設置して、10年がかりで本気で取り組む姿勢を打ち出しました。

日本経済新聞の世論調査によれば、石破首相の就任当初の内閣支持率は51%。岸田文雄政権が発足した時の59%に及ばず、高からず低からずというところです。

政策を判断する材料がどこにもないのですから仕方ありませんが、ボロが出ないうちに一刻も早く衆院選を行うという、それだけが石破政権の発足1週間の基本的なスタンスです。

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海外情勢もマーケットに変化をもたらしました。10月1日(火)、イランがイスラエルに向けてミサイルを200発近く発射したという報道が世界を揺さぶりました。

ミサイルの大半は迎撃されましたが、マーケットの緊張は一瞬にして高まりました。原油価格は急騰し、2日(水)の東京市場では日経平均が▲800円以上も値下がりしています。

イスラエルのネタニヤフ首相は「イランは代償を払うことになる」と述べ、報復措置を宣言しています。中東情勢は混迷の度合いをさらに強める方向に向かいつつあります。

すでにイスラエルは、イランがバックにつくヒズボラへの攻撃を始めており、10月1日にはレバノンへの地上戦を18年ぶりに開始しました。

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イランとイスラエルは今年4月に、ミサイルとドローンでの攻撃を双方で交戦したばかりですが、この時は限定的な報復の応酬に収まりました。今回はどこまで軍事的な緊張が高まるのか懸念ばかりが強まっています。

一次産品価格では原油に続いて、銅、アルミ、ニッケルなどの非鉄金属も上昇含みにあります。中国が国慶節を前にして景気刺激策を打ち出したこともあって、金属・エネルギー市況が少しずつ動き始めています。金(ゴールド)は連日の最高値更新です。

これらの動きは景気の上向き加減を示しているのか、それとも軍事的な緊張の高まりによる金属市況の強ばりなのか。ここでの判断が重要です。

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マーケットを動かした3つ目の要因は景気動向です。10月に入って月初の経済統計が相次いで発表されました。

10月1日に日銀短観が発表され、大企業・製造業の業況判断DIは、前回の「13」から変わらずの「13」となりました。先行きは「14」で評価としてはまずまずです。

個々の業種でみると自動車は「12」から「7」へ低下。反対に電気機械は「1」から「11」へ、化学は「10」から「15」と上昇しています。

大企業・非製造業は「33」から「34」へと引き続き好調を維持しました。先行きの判断は「28」でした。インバウンド消費でにぎわう「宿泊・飲食サービス」は「49」から「52」へとさらに上昇しました。絶好調が継続していますが上限に達しつつもあります。

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米国では10月1日にISM・製造業景況感指数が発表され、前月比横ばいの47.2となりました。分岐点の「50」の水準を4月から割り込んでおり、市場予想も下回りました。

同じく10月3日にはISM・サービス指数も発表され、前月の51.5から54.9に上昇しました。こちらは3か月連続で「50」を上回っており、市場予想も上回っています。

米国南部をハリケーン「へリーン」が襲い130人が死亡した模様です。イスラエルの紛争もあって、原油価格は10月3日に+5%以上も急騰しました。銅市況も7月以来の1万ドル突破に動き始めています。

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そして週末には米・9月雇用統計です。

10月4日(金)に発表された米国の9月・雇用者数の伸びは前月比+25.4万人となりました。市場予想の14万人を大きく上回っています。

同じく失業率は4.1%(予想は4.2%)、平均時給の伸びは前月比+0.4%、前年同月比+4.0%でした。いずれも市場の予想を上回っていますが、米国の株式市場はこれを歓迎してNYダウ工業株が+341ドル上昇しています。

米国はリセッションを回避しながら、インフレ抑制へと向かいつつあります。好景気が株価を押し上げ、日経平均の夜間取引も+1000円近い上昇となり39,000円の大台を越えました。週明けは日本株も強含みの動きが予想されます。

なんとも目まぐるしい展開の1週間でした。政治上の日程は日本の衆院選、そしていよいよ米大統領選となります。ここから大きなヤマ場が待ち構えています。

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先週の東京株式市場はTOPIXが3週ぶりに反落しました。それでも下落率は▲1.71%にとどまっており、前の週の+3.73%と比較すれば小幅な低下です。

これまでの上昇をけん引してきた大型株が軟調です。大型株指数は▲2.00%と目立って下げているのに対して、小型株指数は▲0.88%の反落にとどまりました。中型株指数も▲1.25%の下落です。

スタイル別でも前週とは反対に、大型グロース株の▲2.56%の下げに対して、大型バリュー株は▲1.02%の下げにとどまりました。小型バリュー株は▲0.31%と下げ幅がさらに縮んでいます。(小型グロース株は▲1.45%の反落)

プライム市場の騰落レシオは、週を通じて102.80~108.77%の狭いレンジ内の動きにとどまりました。週末値は108.56%と中立です。日経平均のサイコロジカルラインは「9」まで高まりました。8月28日以来の高水準です。

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TOPIX-17業種の騰落は、値上がりセクターが5業種、値下がりセクターは12業種でした。

値上がり上位のセクターは「エネルギー資源」、「銀行」、「商社・卸売」。前の週の下落率上位がそっくり上昇率の上位に並んでいます。

値上がりトップの「エネルギー資源」は、原油価格の上昇を受けてINPEX(1605)、石油資源開発(1662)、ENEOSホールディングス(5020)、出光興産(5019)が一斉に上昇しました。

セクターは異なりますが、住友金属鉱山(5713)、

(後略)

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鈴木一之