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2024年11月19日

トランプ政権の誕生に米国は期待、世界は警戒

鈴木一之

鈴木一之です。依然として米大統領選の結果が世界を揺さぶっています。

NYダウ工業株は投開票直後の4日間で+2000ドル以上上昇したのちに、先週末は急落しました。何よりも半導体セクターが再び大きく下落しています。

週末のSOX指数は▲3.4%の下落となりました。ASMLの中期経営計画が波紋を投げかけています。「ASMLショック」が再燃する気配も感じられます。

政治・社会面ではトランプ大統領の誕生に米国の産業界が沸き返っている一方で、アジアや欧州市場を中心に株価が急落する国が見られました。関税の引き上げ、防衛費の増額要求がこれから強まるとの警戒からです。

その米国でも長期金利の上昇が続いています。米10年国債金利は4.4%台に定着しつつあります。最近の経済統計の好調さを受けて、パウエル議長はダラスでの講演で「利下げは急がない」と見解を表明しました。ハト派が一歩後退した形となっています。

間隙を突く形で、石破首相は中国の習近平国家主席と首脳会談を実現させました。

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トランプ新政権の構想には驚かされるばかりです。なんでもトランプ大統領の政権移行チームは、すでに大統領選の投票の3か月も前から閣僚人事の選定に着手していたそうです。

そのためか当選が確定した直後から閣僚人事が次々と明らかにされており、1期目のスタートダッシュ時に人事でまごついた反省がしっかりと修復されています。

現時点で判明しているところでは、国務長官に上院議員のマルコ・ルビオ氏、国防長官に元FOXニュース司会者のピート・ヘグセス氏、司法長官には前下院議員のマット・ゲーツ氏、国家情報長官には元下院議員のトゥルシー・ギャバード氏が挙がっています。

いずれも保守強硬派で知られており、トランプ氏には絶対の忠誠を誓うゴリゴリのトランプ・シンパです。内紛で瓦解した1期目の反省がこの点に明確に見られます。

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大統領選から2週間も経っておらず、トランプ政権は発足してもいません。しかし実質的には政権移行チームによって「トランプ2.0」がスタートしたようなものです。

ロイターはトランプ氏の政権移行チームがEV購入時の補助金(1台最大7500ドル=117万円)を廃止することを計画していると報じました。トランプ氏自らも「国家エネルギー会議」を新設して化石燃料の掘削を拡大する方針を明らかにしています。

来年1月に大統領に就任した最初の日に、大統領令によって新規の石油・ガス掘削プロジェクトを認可するという観測もあります。それらの言動をマーケットのみならず、政界・産業界の重鎮が世界中で息をひそめて見つめています。

予想のつかない状況が目の前に出現し、しかもこの状態が数年は続くものと考えられます。各国市場の動きがペースダウンしてしまうのも無理はありません。

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しかし経営者は泣き言は許されず、限られた情報の中で最善の判断を下そうと走りまわっています。日本でも自分たちでできることなら何でもやろう、という動きが生まれつつあるようです。

先週は決算発表シーズンのピークでした。3大メガバンクはいずれも好決算を発表しました。

しかし単に政策金利の上昇を受動的に待っていたわけではありません。融資を拡大しコンサルティングやM&A仲介のサービス提供を強化しています。

かつて規制産業の代名詞でもあった銀行業界とは打って変わって、他行との違い、店舗やサービス内容の見直しを大胆に進めています。三菱UFJ銀行は向こう3年間で全国300
店のうちの250店舗で大幅な改装する計画です。

入りにくい店構えをやめて外からでも店舗内を確認しやすくし、タブレットの操作で住所変更や暗証番号の再設定などの手続きが済むようにします。その上で店舗のスペースをワンフロアにまとめて賃料、光熱費の合理化も進める計画です。

三井住友銀行は銀行アプリ「オリーブ」を強化しながら、ショッピングモール内の小型店舗の出店も増やします。みずほ銀行も口座開設に特化した小規模店舗をオープンし、いずれも対面営業を強化する構えです。

メガバンクは、みずほFG(8411)が決算発表に合わせて5000万株、1000億円の自社株買いを発表しました。同様に三菱UFJフィナンシャルグループ(2億3000万株、3000億円)、三井住友フィナンシャルグループ(6000万株、1500億円)、りそなホールディングス(3000万株、200億円)と、競うように大手銀行グループは自社株買いを表明しています。

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地銀からも、コンコルディア・フィナンシャルグループ(3900万株、200億円)、京都フィナンシャルグループ(500万株、100億円)、めぶきフィナンシャルグループ(2000万株、100億円)、千葉銀行(1200万株、100億円)、しずおかフィナンシャルグループ(800万株、100億円)、いよぎんホールディングス(700万株、70億円)、が自社株買いを発表しました。

金融以外の産業界からも、決算発表に間に合わせて様々な事業プランが明らかにされています。

トヨタ自動車(7203)はハイブリッド車に水素エンジンを搭載して、航続距を250kmまで伸ばすことに成功しました。純粋の燃料電池車(水素カー)ほど水素の純度が高くなくてもOK、という点がカギです。

コマツ(6301)は米国で蓄電池の生産能力を4倍に引き上げます。KDDI(9433)はauカブコム証券を売却し、auじぶん銀行を100%子会社にします。プリント配線基板のメイコー(6787)はベトナムの生産拠点への投資額を上乗せして、1100億円まで設備投資を引き上げます。

夏から秋、秋から冬、季節の変わり目は小さなところから始まります。同じように経済界、産業界でも、マクロ的な大きな動きよりも先に、ミクロベースの小さな変化から始まります。今の日本はそのような状況にあるのではないかとも見られます。

小さな変化は目にとまりにくいものです。最近の銀行セクターの変化は、大きな変化が始まるきっかけと位置づけられるのではないかと思えてなりません。

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先週の東京株式市場はTOPIXが3週ぶりに反落しました。下落率は▲1.11%で、前の週の+3.70%と比べて軟調な動きとなりました。

それでも前の週に堅調だった大型株の下げは小さく、大型株指数は▲0.70%の下落にとどまりました。中型株指数の下げが最も大きく▲2.28%に達しました。小型株指数は▲0.83%にとどまりました。

バリュー株とグロース株との対比では、グロース株が軟調でした。大型バリュー株は▲0.44%にとどまったものの、大型グロース株は▲1.87%の下げでした。

騰落レシオは急低下しており、週末値は85.26%となりました。水曜日には83.25%まで低下しています。日経平均のサイコロジカルラインは週末は「6」に低下しています。

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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが4業種にとどまり、値下がりセクターは13業種に広がりました。

値上がりトップのセクターは前週に続いて「銀行」です。次いで「小売」、「自動車・輸送機」となりました。

「銀行」は前述のようにメガバンクがそろって物色されました。三菱UFJフィナンシャルG(8306)、三井住友フィナンシャルG(8316)、みずほフィナンシャルG(8411)、りそなホールディングス(8308)の株価はいずれも大きく上昇しています。

値上がり第2位は「小売」ですが、これはセブン&アイ・ホールディングス(3382)の上昇の影響が大きかったようです。

セブン&アイは創業家によるMBOの意向が浮上しています。アリマンタシオン・クシュタールからの買収提案が新しい局面を迎えつつあります。

それ以外では良品計画(7453)、青山商事(8219)、ゼンショーHD(7550)の堅調さが目立ったくらいです。あとは総じて小さな動きにとどまりました。

値上がり第3位の「自動車・輸送機」も同様です。日産自動車(7201)が急上昇し、エクセディ(7278)、エフシーシー(7296)が買われたほかには、あとは明確な動きはありません。

経営不振の日産自動車に対して、アクティビティストのオアシス・マネジメントが株式を大量取得したと伝えられています。こちらも新しい展開が始まっています。

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一方の値下がりセクターの上位は「電力・ガス」、「化学・素材」、「不動産」でした。

電力セクターでは関西電力(9503)が公募増資で5000億円を調達する意向を示し株価が急落しています。自社株買いで株価が上昇する企業が相次いでいる状況にあって、まったく反対の公募増資の方針を打ち出したことが嫌気されています。

化学セクターは決算発表を受けて、資生堂(4911)、

(後略)

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鈴木一之