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2024年11月26日
NY市場は最高値を更新、東京は2週連続の下落
鈴木一之です。世界経済は依然としてまだ見ぬ「トランプ時代」を警戒して慎重な動きに終始しています。
どちらかと言えば暗い話題の多かった週でした。ビットコインが連日のように史上最高値を更新しています。10万ドルの大台に迫る9万7000ドルに到達しました。トランプ時代の象徴とも呼べる現象です。
明るい話題と言えば、メジャーリーグの大谷翔平選手が2年連続でMVPを獲得したことでしょうか。
史上初の「1シーズン50本塁打、50盗塁」の達成が評価されて、3回目の満票での選出となりました。指名打者での獲得も史上初です。
東日本大震災の起こった2011年、女子サッカーの「なでしこジャパン」が女子W杯で優勝しました。暗い時代にはアスリートの活躍や輝きに国民の期待が強く寄せられます。
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先週の東京株式市場はTOPIXが2週連続で下落しました。下落率は▲0.56%にとどまり、前週の▲1.11%からは下げ幅が縮小しています。日経平均の週間の下落幅も▲359円と小さなものでした。
下げが目立っているのは大型株です。規模別指数で大型株指数は▲1.01%となりました。それ以外の中型株指数(+0.22%)、小型株指数(+0.88%)、東証グロース市場250指数(+1.42%)はいずれも反発しています。
決算発表シーズンの最終盤を終えたばかりで、決算内容のよかった中小型株の株価修正がいまだ続いていることの現れとも見ることができます。
バリュー株/グロース株では、グロース株の軟調さが続いています。大型バリュー株は▲0.20%の小さな下落にとどまりましたが、大型グロース株は▲1.17%と下げが目立ちました。半導体セクターを中心にテクノロジー株の下落が続いています。
騰落レシオは急低下から反発し、週末値は94.22%まで切り返しました。ただしニュートラルの100%には届かない状態です。日経平均のサイコロジカルラインは週末は「5」に低下しています。
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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが6業種、値下がりセクターは11業種でした。
値上がりトップのセクターは「鉄鋼・非鉄」です。データセンター関連の電線株が軒並み上昇しました。値上がり第2位は「エネルギー資源」、第3位は「建設・資材」でした。
トップの「鉄鋼・非鉄」もそうですが、値上がり上位のセクターでも、株価の上昇がセクター内で値上がりと値下がりにはっきり分かれました。業績の良し悪しが株価の動きにそのまま反映しています。
電線株ではこれまではフジクラ(5803)が先導していました。それに牽引されて住友電気工業(5802)、古河電工(5801)、SWCC(5805)が軒並み高値を更新しています。データセンター向けの光ファイバー、光コネクタの需要が高まっています。
値上がり第3位の「建設・資材」でも、高砂熱学工業(1969)、朝日工業社(1975)、ダイダン(1980)の空調関連株の上昇が目立ちました。ここでもデータセンター向けの需要が強まっているようです。
大林組(1802)、長谷工(1808)、エクシオグループ(1951)、コムシスG(1721)も堅調です。
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一方の値下がりセクターは第1位が「医薬品」、それに続いて「電力・ガス」、「機械」となりました。
「医薬品」はトランプ政権の閣僚人事の影響が如実に表れています。厚生長官としてワクチン反対派のロバート・ケネディ・ジュニア氏が発表され、米国をはじめ世界中で大手薬品メーカーの株価が急落しました。
日本でも第一三共(4568)、アステラス製薬(4503)、武田薬品工業(4502)、中外製薬(4519)など薬品株が軒並み安となりました。
ロバート・ケネディ・ジュニア氏はワクチンだけでなく、人工添加物の多い加工食品や水道水へのフッ素添加物など、健康被害が指摘されるあらゆる物質の使用に反対しています。それだけに今後の影響は医薬品メーカーにとどまらず、広範囲に広がりかねないと懸念されているようです。
値下がり第2位の「電力・ガス」は、前週の関西電力(9503)の巨額公募増資の影響が尾を引いています。中部電力(9502)、九州電力(9508)、北海道電力(9509)などの地方電力株が大きく続落しました。
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生成AIの普及で将来に向けて電力需要が高まることは間違いありません。問題はそのための需要をまかなう設備投資の資金をどのように確保するかという点です。
横並び意識の強く残っている電力業界だけに、関西電力のほかにも公募増資を行う電力会社が出てくることを警戒しているように見えます。年末が近づいて今年の運用実績を精査する季節でもあり、手じまい売りが強まっている可能性もあります。
値下がり第3位は「機械」でした。これも銘柄によって値動きの良いもの悪いものが分かれます。年末接近による手じまい売りと見られるような下げが、とりわけ株価のパフォーマンスの悪かった銘柄に見られます。
堅調な銘柄は、三菱重工(7011)、日本製鋼所(5631)の防衛関連株、オイレス工業(6282)のような防災関連株、そしてTHK(6481)のように抜本的な資本テコ入れ策を発表した会社です。
先読みのむずかしい、軟調な地合いの続く中で逆行高を遂げる銘柄には、やはりそれなりのきちんとした理由が備わっています。今後もこの傾向はさらに強まってゆくと見られます。
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(雑感、概況)
先週は週明けから波乱含みの展開となりました。月曜日にG20サミット(20カ国・地域首脳会議)がブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれましたが、マーケットではほとんど話題にのぼりませんでした。
「トランプ政権が発足してみないと何も始まらない」という雰囲気が世界中を覆い尽くしています。昨年のG20首脳宣言では「保護主義を阻止する」と明記されていましたが、今年はそれも取り払われました。
G20首脳会議やAPEC首脳会議の機会を通じて、日中首脳会談や米中首脳会談が行われました。しかしここでも有効な方針を打ち出すことはできませんでした。バイデン政権は明らかにレームダック化しており、その影響力は急激に低下しています。
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そのバイデン大統領ですが、残された任期中の最後の機会をとらえて、ウクライナに対して射程距離が300kmの長距離ミサイル「ATACMS」の使用を容認しました。トランプ政権で停戦交渉が急がれることになるため、少しでも交渉条件をよくするため、というのがその理由です。
ウクライナは翌火曜日に、すぐさまロシア西部の軍用機地に向けて長距離ミサイルを発射しました。ウクライナがロシア領内に攻撃を加えたのは初めてのことです。ウクライナはイギリスが供与した長距離ミサイルもロシア国内に向けて発射しました。
ロシアは猛烈に反発し、対抗措置としてウクライナに向けて新型の中距離弾道ミサイルを発射したと発表しました。
合わせてロシアは「核ドクトリン」を変更し、今後は「核保有国による攻撃の支援参加は、ロシア侵略への共同攻撃とみなす」と位置づけを変えました。弾道ミサイルには核弾頭を搭載することも可能で、核兵器による反撃の可能性が示されたとして、世界は核戦争の危機に対してがぜん緊張しています。
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日本では11月28日に召集予定の臨時国会を前にして、政策面での動きが活発化しています。
自民、公明、国民民主の3党は、今年度の補正予算案を成立させるために「103万円の壁」の引き上げを受け入れることとなりました。
予算編成を最優先する石破首相は、事業規模が39兆円にのぼる総合経済対策を取りまとめました。補正予算案の一般会計からの支出は13.9兆円、特別会計と合わせた財政支出は21.9兆円、地方と民間からの資金をあわせた事業規模は39兆円にのぼります。
目玉政策は、住民税が非課税の世帯に対して1世帯3万円の支給、電気・ガス料金の負担軽減策の再開(1-3月)、半導体・AI分野への投資促進、が盛り込まれました。
バラまき型の政策が継続されることになりますが、これによってGDPは年率1.2%ほど押し上げられると見込まれています。
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企業ベースではエヌビディアの決算が注目されました。
11月20日に発表された8-10月期の決算は、売上高が350.8億ドル(+94%)、純利益は193.9億ドル(前年の2倍)となりました。売上げ、利益ともに市場予想を上回って過去最高を更新しています。
「ブラックウェル」の過熱問題や供給能力など、数々の難問を抱えながらも、それでもあいかわらず猛烈な業績を示しました。
しかしエヌビディアの株価はアフターマーケットで一時▲5%下落しました。市場予想を上回る決算を打ち出しても、さらにそれを上回る予想が一部では出回っていたため、その水準には届かなかったというのが下落の理由です。
こうなると予想とはいったい何のためにあるのか、ということになります。問題は事前の高い予想なのではなく、むしろエヌビディアの好業績に関してはマーケットでは誰も驚かなくなっていることにあります。エヌビディアに新たな驚きがあるとすれば、それは良い決算ではなく悪い決算の方が強くなっています。
トランプ政権では対中国規制が強まることは確実です。生成AI向け半導体の競争も一段と激しくなっており、高い利益予想を続けることに対するリスクも生じています(今に始まったことではありませんが)。
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決算面では、エヌビディアよりも市場の関心を集めたのがウォルマートです。8-10月期の決算は、売上高が1695億ドル(+5%)、純利益が45億ドル(10倍)に伸びました。
ウォルマートは集客を増やすために5-7月期に7000品目、8-10月期にも6000品目を値下げしてきました。それが収益を押し下げる結果となっていましたが、トランプ政権では関税が引き上げられることが確実と見られているため、そうなるとウォルマートは幅広い品目で値上げすると予告しています。
全米小売業協会では、関税引き上げの公約が実行された場合、売り場における販売価格は、玩具が+56%、家庭用雑貨が+31%、衣料品は+21%、価格が上昇すると試算しています。「米国第一」主義で保護される側の米国の産業界、および消費者もトランプ政権ではさまざまな変化が待ち受けていることになります。
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日本でも牛丼の「すき家」を展開するゼンショーHD(7550)が、牛丼や定食の値上げを発表して株価が急騰しました。値上げは7か月ぶり、値上げ幅は10円から60円です。「すき家」が1年間に2度、値上げするのは初めてのことだそうです。
インバウンド消費に沸く京都の足、京阪電鉄も来年秋に運賃に値上げします。改定率は全体で+10%を超えることになり、消費税引き上げを除けば運賃改定は30年ぶりのことです。
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企業からは様々な事業戦略が明らかになっています。ソニーG(6758)はKADOKAWA(9468)の買収に向けて協議に入りました。映画、アニメ、ゲーム、出版などのコンテンツを獲得し景気動向に左右されにくい収益を目指します。
小売業界ではセブン&アイHD(3382)
(後略)