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2025年1月14日
年明けから波乱の地合い、日経平均は週間では▲704円の下落でスタート
鈴木一之です。大発会の最初の1週間で、株式市場は今年の明るい部分と暗い部分をほとんどすべて出してしまったような展開となりました。
明暗の「明」の部分は半導体、人工知能、核融合、宇宙開発という未来の夢の部分です。反対に「暗」は部分物価の上昇、金利上昇、異常気象というリアルな現実社会です。
とりわけ金利上昇を巡って株式市場は早くも波乱の様相を帯びています。今年も大きな変動を覚悟しなくてはならない状況のようです。
1月6日(月)の大発会、日経平均は▲587円スタートとなりました。これで3年連続の大発会マイナスです。日経平均の年間の上値と下値はそれぞれ20%くらい動きそうだとの見方が現実味を帯びています。
大発会は下落しましたが、それでも少しは余裕をもって見ていられたのは昨年の経験があるからです。
昨年も大発会は▲176円の下落で始まりました。しかし翌日から6日連続で上昇して、日経平均は33,000円台から36,000円台まで一気に駆け上がりました。箱根駅伝で言えば第5区、苦しい箱根の山登りを一気に駆け上がって先頭に躍り出たような快進撃です。
実際に昨年は1月初旬の快走がその後の年前半の上昇につながりました。日経平均は幻とまで言われたバブル期の史上最高値を更新したものです。
今年も同じような展開を待ち望んでいるのですが、柳の下に2匹目のどじょうはいません。今年は火曜日以降はずるずると軟調な展開を余儀なくされました。
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最初に明暗の「暗」の部分から見てゆくと、米国で長期金利が大幅に上昇を続けています。米10年国債金利は先週末に4.7%台に乗せました。年をまたいで丸1か月にわたって上昇を続けています。
週末に12月・米雇用統計が発表され、失業率は4.1%に低下。非農業雇用者数の増加も予想を大幅に上回る+25.6万人に達しました。これが金利上昇の直接のきっかけです。
1月7日に発表された11月の雇用動態調査(JOLTS)でも809万件と判明し、予想の770万件を大きく超えています。
警戒心の根底には「トランプ2.0」でのインフレ高進があります。
米国経済は依然として強く、FRBの金融政策の前提となる経済見通しは早くも狂い始めてきました。そこにトランプ政権での数々の経済政策(関税、減税、移民規制)が重なります。金利上昇に弱いテクノロジー株は、未来への期待と現実の金利上昇との間隙で上下に揺さぶられています。
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そこに米西部・ロサンゼルスで発生した大規模な山火事も重なります。
ロサンゼルスを中心に5つの山火事が同時に発生しており、現在も燃え広がっていません。3.5万エーカー(140平方キロメートル)が焼失し、鎮火率ゼロの地域もいまだに多く18万人に避難命令が出されています。
バイデン大統領は「ロサンゼルスでの過去最悪の山火事」だとして大規模災害の宣言を出しました。ハリウッドも火災の被害が相次いでおり、映画の撮影の中止、イベントの延期が相次いでいます。
富裕層が多く住む世界有数の高級住宅街だけに、火災保険の請求が大きくなると予想されています。JPモルガンは今回の火災による保険金請求額が100億ドル(1兆5800億円)規模に膨らむとのレポートを出しました。日本では東京海上HD(8766)、MS&AD(8725)の損保株が年明けから大きく下落しています。
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山火事は夏の異常高温によって発生することが多く、冬にこれほど大規模な山火事が発生することはあまり聞き及びません。北半球ではそれだけ雨が降らず空気が乾燥していることになります。
日本でも年末年始に東北・日本海沿岸の地域で記録的な大雪に見舞われました。これも海水の温度が例年に比べて高いため、夏に記録的な大雨をもたらす線状降水帯と同じような「線状降雪帯」が発生したことが原因とされています。
その分、関東地方は雨が降らず空気が乾燥して好天が続いています。12月の降水量は記録的なレベルまで減少し、千葉県では12月の降水量が平年の3%しか降りませんでした。そのために野菜の生育に影響が出ており、東京ではキャベツが1玉1000円(!)まで高騰しています。
異常気象は生鮮食品の価格に確実に響きます。生鮮食品の価格がここまで値上がりすると、家計は防衛意識が広がります。いくら賃上げしても物価上昇に追いつきません。
年明けの日本では2月決算企業の決算発表が本格化しています。天候に左右されやすい小売企業が中心なだけに、売上げの伸びに対してコスト上昇で利益が伸び悩むケースが相次いでいます。
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「明」の部分では半導体株が今年も年明けから急伸しました。昨年のヒーローではる半導体株が年明け第1週も活躍しました。
ナスダックではTSMC、日本ではアドバンテスト(6857)が史上最高値を更新しました。大発会にストップ高まで買われた銘柄は年間を通して注目されますが、今年は超純水製造の野村マイクロ・サイエンス(6254)がストップ高となりました。
ほかにもレーザーテック(6920)、スクリーンHD(7735)、マルマエ(6264)など、昨年後半に厳しい展開を余儀なくされた半導体セクターに底入れ機運が高まっています。
半導体セクター人気のきっかけは鴻海精密工業の好決算、それに世界最大の家電見本市・CESにおけるジェンセン・フアンCEOの基調講演が刺激材料となっています。
世界中で半導体セクターが急伸した理由のひとつが、台湾の鴻海精密工業の好決算です。1月5日に発表された鴻海精密工業の昨年10-12月期の決算(速報値)は、売上高が過去最高の2.1兆台湾ドル(10兆円)でした。前年比+15%の伸びで、AI向けサーバーの生産が牽引役となっています。
株式市場ではこれまで、TSMCの決算が半導体セクターの行方を左右することはあっても、鴻海精密工業の決算動向が影響することが少なかったように思います。スマホ組立の鴻海はむしろアップル関連株と見られています。
それが急に鴻海の動向を気にするようになったのは、鴻海の好決算がAI向けサーバーの伸びでもたらされているためです。鴻海はこの領域で世界4割のシェアを持っています。
同様に韓国・サムスン電子の好決算から日本ではキオクシアHD(285A)が最高値を更新しました。NYダウ採用となったエヌビディア、ナスダックのスーパー・マイクロ・コンピューターと同様に、欧州のASML、アジアのTSMC、サムスン、鴻海の動向が一段と重要になっており1日24時間、チェックするものが多くなり、眠れない時間帯がますます増えそうな情勢です。
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新年第1週の東京株式市場は、TOPIXは2週連続で下落しました(大納会の1日だけの週足値動きを反映しています)。下落率も▲2.54%に達し、それなりの大きさとなりました昨年10月第4週の▲2.63%以来の下げです。
機関投資家は4月の新年度入りと同様、年初は売りから入ると見られており、そこに米国の金利上昇が広範囲な下げが重なっています。
規模別では大型株指数が▲2.45%の下落に対して、小型株指数も▲2.86%まで下げ広範囲な売りとなりました。どちらかといえば小型株に下げが目立ちます。スタンダード市場も軟調な値動きに変わり、むしろグロース市場が堅調でした。
スタイル別の株価指数では、大型グロース株が▲2.75%に対して、大型バリュー株が▲3.07%と、わずかながらバリュー株に下げが先行しています。
小型グロース株は▲2.27%、小型バリュー株も▲2.65%と同じように下落しました。
騰落レシオは91.81%まで低下しています。昨年11月第3週以来の低い水準です。日経平均のサイコロジカルラインは「5」を4日間続けています。
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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターは1業種にとどまりました。値下がりセクターは16業種に広がっており、昨年暮れからの軟調な地合いが継続しています。
値上がり上位のセクターは「銀行」です。唯一の値上がり業種で、昨年暮れに続いて2週連続で値上がり率のトップとなりました。
米国の金利上昇が顕著です。それとともに日本でも長期金利が大幅に上昇しています。貸出需要の増えているメガバンクを中心に高値更新銘柄が相次ぎました。一方で地銀株には下落する銘柄も目立ちました。
物価上昇は他国の話ではなく日本でも着実に浸透しています。今年は日銀の金融政策が昨年以上に問われることとなりそうです。
それに続くセクターは「電機・精密」と「機械」です。いずれも半導体関連株がしっかり上昇しました。
エレクトロニクスではアドバンテスト、キオクシアHDが上場来高値をさっそく更新し、ソシオネクスト(6526)、KOKUSAI(6525)も久しぶりに上昇率の上位銘柄に登場しました。
反対に日立(6501)、オムロン(6645)、セイコーエプソン(6724)、TDK(6762)など景気動向の上でカギとなる銘柄がいずれも軟化し、市場の警戒心の高まりもうかがえます。
同様に「機械」セクターでも、ディスコ(6146)、野村マイクロ(6254)、マルマエ(6264)が買われる一方で、SMC(6273)、コマツ(6301)、クボタ(6326)、IHI(7013)が軟調な動きに終始しました。
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値下がり上位のセクターは「金融(除く銀行)」、「商社・卸売」、「自動車・輸送機」でした。
「金融(除く銀行)」は損害保険の下げが主因です。それに加えてオリックス(8591)、東京センチュリー(8439)、JPX(8697)などそれ以外の金融セクターも、景気動向に敏感な分だけ同じように下げています。
景気敏感では同様に「商社・卸売」の中では伊藤忠(8001)、
(後略)