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2020年11月23日

NYダウ工業株が最高値を更新、ワクチン相場の持続力が問われる

鈴木一之

◎日経平均(20日大引):25,527.37(▲106.97、▲0.42%)
◎NYダウ(20日終値):29,263.48(▲219.75、▲0.74%)

「NYダウ工業株が最高値を更新、ワクチン相場の持続力が問われる」

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鈴木一之です。先週に続いて記録ラッシュの1週間となりました。

NYダウ工業株は週初に史上最高値を更新。それを受けて日経平均も26,000円の大台を終値で突破しました。1991年5月以来のことです。

モデルナが開発中のコロナウィルスのワクチンが95%近い効果を示したことが好感されています。1週間前のファイザー、ビオンテックのワクチンに続いて、人類はまたひとつコロナ危機への解決策に近づいたことになります。

ただ、新記録の更新はマーケット内ばかりではありません。世界中でコロナウィルスの感染拡大がこれも記録的な勢いで進んでいます。

米国では1日の新規の感染者数が18万人を超え、過去最多を記録しています。累計で1100万人を突破しており、亡くなった人の数も25万人を超えています。たいへんな数字です。「ワクチン相場」と浮かれている場合ではなくなっています。

全米では8万人を超える患者がコロナ感染で入院しており、患者数も過去最多を更新中です。病院のベッドが空いてもすぐに埋まる状態が続いており、医療崩壊を避けるためにカリフォルニア州では州全体に夜間の外出禁止令を出しました。

米国は今週末に感謝祭の祝日を迎えます。例年であれば感謝祭明けの金曜日に「ブラックフライデー」が待っていて、ここからクリスマス商戦が本格化するのですが、今年は小売店サイドも規模の縮小は避けられない見通しです。

タイミングの悪いことに、FRBは中小企業向けに行っている緊急の資金供給策を今年末で打ち切る方針を明らかにしました。財政政策の出動に資金を回すために財務相が要請したとのことですが、この措置がどこまで米国経済とマーケットに影響を及ぼすのか、週明けの値動きを確かめる必要がありそうです。

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コロナウィルスに関しては、日本も他人事ではありません。晩秋の行楽シーズンでもあり人の移動が活発になっています。3連休初日の11月21日(土)は、東京都で500人を超える感染者が出ており、再び過去最多を記録しました。

21日には東京のほかにも大阪府で初めて400人を超え(415人)、埼玉、千葉、兵庫、茨城県などがこれまでで最も多い感染者数を記録しました。日本全体では初めて1日の感染者数が2500人を突破しています。

菅政権はこれまで経済の活性化と感染症対策の両立を目指してきましたが、事態がこれほどまでに切迫する状況となっています。二階幹事長の肝いりで始まった「GoToトラベル」、「GoToイート」のキャンペーンの一部見直し、停止を検討せざるを得ない状況となっています。

コロナ対策では世界の優等生とされていた韓国でも、1日の新規の感染者数が連日のように300人を上回っています。香港も同様で、北半球は明らかに感染第3波に直面しています。

感染症対策を強化すると、経済には痛手ですがコロナウイルスの拡散防止にはてきめんに効果があります。先行してロックダウンを実施した欧州では、フランスの感染者数が目に見えて減少しています。

ただし1日5万人のそれまでの増加ペースが、1日3万人に減速したというレベルであって、絶対数としてはフランスも危険な状況から抜け出したわけではありません。クリスマス商戦への影響は避けられないのか、ギリギリの攻防が続いています。

そうかと思えば、先週はインドの株価指数である「ムンバイSENSEX30」が史上最高値を更新しました。感染拡大の面では米国に次いで世界のワースト2とされるインドが株価の上で一歩抜け出してくるとなると、コロナ危機と経済(株価)はまた別もの、という見方も強まります。

ドイツ、韓国、ブラジル、そして中国でも株式市場は堅調さを取り戻しつつあります。金融・財政政策とマーケット、そしてコロナ危機との綱引きがもうしばらく続くことになりそうです。

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マザーズ市場は調整ムードが続いています。それでもオークファン(3674)、JMDC(4483)、ミンカブ(4436)、ケアネット(2150)あたりには先高観を残す展開となりました。

東証では再生可能エネルギー関連株の物色が一段と勢いを増しています。エフオン(9514)、イーレックス(9517)など直接的に目に見えるプレーヤーは限られているのですが、素材メーカーや自動車関連を含めると投資対象は一気に広がります。

武蔵精密(7220)、小糸製作所(7276)、古河電池(6937)、日本製鋼所(5631)あたりから始まって、山陽特殊製鋼(5481)、大同特殊鋼(5471)、JUKI(6440)、竹内製作所(6432)、さらに工作機械各社にまで、対象を広げて考えるべきところにきているように思います。

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先週の東京市場は、TOPIXが3週連続で上昇しました。日経平均は29年ぶりに26,000円の大台に乗せています。

引き続き物色の中心は大型株ですが、それとともに中型株指数の上昇も目立っています。日経平均に対してわずかに出遅れていた日経500種平均も騰勢を取り戻しつつあります。

逆に小型株の上昇はまだ鈍いものにとどまっており、東証マザーズ指数は3週ぶりに反落しました。グロース株には勢いは戻っておらず、引き続きバリュー株優位の展開となっています。

セクター別の騰落では、TOPIX-17業種のうち、15業種が上昇し2業種が下落しました。

値上がり率のトップは「不動産」です。出遅れ株を物色する動きが継続しています。

REIT指数は反落しましたが、REITオフィス指数だけはプラスを維持しています。リモートワークの進展があったとしてもオフィスビルの市況は底堅く推移するとの見方が強まっており、不動産セクターはしっかりした動きを取り戻しました。

同様に値上がり第2位は「運輸・物流」です。年末商戦を前にしてSGホールディングス(9143)やヤマトHD(9064)の宅配便各社に再び動きが強まっています。それとともに電鉄株にも徐々に買い物が広がるようになってきました。

先行したのは小田急(9007)、京王電鉄(9008)という都心部を走る鉄道会社ですが、それに続いて京成電鉄(9009)、京浜急行(9006)、南海電鉄(9044)にも動きが出ています。投資家はコロナウイルスの影響は思っているほど大きくはないと考え始めている可能性もあります。

このほかの値上がりセクターで目に付くのは「銀行」です。週の前半は米国での金利上昇を背景にメガバンクがしっかりしていました。

また週の後半は地銀株が出直ってきました。日銀は地銀再編を促すために、経費削減や経営統合の決定など、定められた要件を満たした地銀に対して、日銀当座預金に0.1%の上乗せ金利を支払う新制度を導入します。

日銀はこれまで物価の安定や景気への配慮で金融政策を担ってきましたが、今回の精度はそれとはまったく異なります。地銀の安定を通じて金融システムを安定させるという意図が感じられます。

折しも今週は11月27日に、地銀の合併を独禁法の適用除外とする特例法が施行されることになっています。ゼロ金利で身動きのとれなかった地銀の再編に弾みがつく可能性が開けており、それを様々な形でサポートする制度も動き始めます。金融セクターの動きは目が離せなくなってきました。

その一方で、値下がりしたセクターには「小売」と「「医薬品」が入りました。どちらも前の週に続いて上昇の鈍かった業種となります。

特に小売セクターに関しては、コロナウイルスの感染拡大が心配されている部分が大きいと見られます。先に決算発表を終えており、業績のよかった銘柄は先に買われていて出番が回ってこなかったという要素も強いように見られます。鳥貴族(3193)、くら寿司(2695)などが軟調な動きとなりました。

それでも西松屋チェーン(7545)やイオン(8267)、3月決算のマツモトキヨシ(3088)などが

(後略)

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鈴木一之