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2021年2月24日
まるで高揚感のないまま、日経平均は3万円の大台乗せ
◎日経平均(19日大引):30,017.92(▲218.17、▲0.72%)
◎NYダウ(19日終値):31,494.32(+0.98、+0.00%)
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鈴木一之です。先週は週初にいきなり株式市場が大きく上昇し、日経平均はなんと3万円の大台を30年ぶりに突破しました。その大台を週を通じて一度も割り込むことなくキープしています。
気がついたら大台に乗せていました。まるで高揚感がありません。こんな状況はバブルとはとても言えません。
それでも株価は堅調と言えば堅調です。3月決算企業の第3四半期決算発表は終わり、企業収益はコロナ危機を克服して安定感を増しています。上場企業の3割は業績見通しを上方修正しました。
本来はもっとマーケットを安心して見ていられるはずなのに、しかし実際はそうでもありません。逆に先週はかなりむずかしい相場状況だったようにも感じます。
週初の日経平均の3万円乗せは相場の主役とか柱になる銘柄が見当たらず、それだけにあまりに現実味がありません。どことなくガラス越しにマーケットを見ている感じがしています。こんな状況、バブルとはほど遠いですね。
マーケットを取り巻く外部環境が徐々に神経質さを増しているためでしょうか。現在の政治、経済状況から株式市場を展墓する上で気になる点を列挙してみます。
(1)コロナウイルスの感染拡大を食い止める緊急事態宣言は、政府はいまだ解除には二の足を踏んでいます。
厳しいロックダウンを実施している海外主要国では一部で緩和の動きも見られるようで、日本でも熊本県、岡山県など独自で実施しているところには一部で解除する方向にあります。
愛知県や大阪府でも国に対して解除を要請する方針です。しかし東京都の小池都知事は病床使用率のひっ迫度からいまだ慎重な構えです。
(2)日本でも先週からワクチン接種がようやく始まりました。欧米から2か月遅れてのスタートです。当面は医療従事者2万人に対して接種されます。
ところがここにきて、当初370万人と算定していた医療従事者の人数が470万人に+100万人も増えることが判明しました。これが事実ならば、本来は4月からスタートするはずの65歳以上の高齢者3600万人への接種が5月以降にずれ込むことになりそうです。
厚生労働省は免許制の医療従事者の数を把握していないのでしょうか。いったい何をやっているのでしょう。ほとほとあきれてしまいます。
1回目の接種済み、2回目の接種の管理など実務業務は、富士通やNECではなくスタートアップ企業に任せることになりました。マイナンバーカードやデジタル管理は、どうやら大企業ではむずかしいようです。
(3)米国のテキサス州が異常な寒波に見舞われました。気温が▲18度まで低下して大雪に大都市の機能がマヒしています。
テキサス州がエネルギーコスト削減のために推進していた風力発電設備が凍結し、大規模な停電が発生しています。暖が取れず40人以上が死亡する事態にまで陥っています。サムスン電子やトヨタ自動車の工場も生産ラインが止まりました。
この事態からは、再生可能エネルギーに対して過度に依存することのリスクと、ヒーティングオイルなど一次産品価格の上昇というもうひとつのリスクが頭をよぎります。
(4)米国で長期金利が上昇しています。10年物国債金利で1.3%まで達しており、金利との兼ね合いから株式市場に近々、大きな下落局面が訪れるとの見方が増えつつあります。
ここまでの株価の上昇ピッチが速かったために、どこかで調整が入っておかしくない状況ですが、FRBをはじめとする各国中央銀行の大規模な金融緩和と、巨額の財政支出が重なって長期金利が徐々に警戒領域にまで達しつつあります。
世界中のどの国を見回しても、経済の落ち込みはサービス、航空会社、小売・外食などごく一部の産業に激烈に発生しており、他の大部分の産業はコロナ以前の水準に近づくほどかなり急速に持ち直しています。悪いところと良いところが極端に分かれている点こそが今回のコロナ危機の最大の特徴です。
どちらの部分に目を凝らしてみるかによってまったく状況が異なります。金利の上げ下げひとつをとっても非常にむずかしい状況に差しかかっています。
(5)「首相の長男」問題で新たな展開が見られました。
総務省の幹部を接待していた問題で「週刊文春」が音声テープを公開したことから、渦中の秋本局長は前言を正反対の方向に変えて、衛星放送に絡む話題が出たと認めました。
武田総務大臣は湯本審議官と秋本局長の2人をさっさと更迭しましたが、罪状が確定する前のあまりにすばやい更迭に、野党でなくても「トカゲのしっぽ切り」という印象が強まっています。
菅首相の東北新社の長男問題は、週明けからの衆院予算委員会で集中審議される予定です。ワクチン接種のスケジュールが予定より遅れることに加えて、予算委員会での審議でも不手際が目立つようだと、菅政権の目玉政策である環境対策やデジタル庁、オンライン診療の実現も遅れが出かねません。
バイデン大統領も息子のハンター氏が中国政府との取引問題で捜査対象とされています。日米ともにトップの身内の不始末に終われる事態が、政治の空転につながらないか心配になってきます。
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株式市場の動きでは、2月第3週の株式市場はTOPIXが反落しました。下落幅は▲0.25%にとどまり、非常に小さな値動きです。
その前の週が2週にわたり大きな上昇を遂げたために、一服感が強くなりました。週初に日経平均が30年ぶりの3万円に到達したことと考え合わせると、少し軟調な動きが目立った週末でした。
物色の方向性は、引き続き大型株が中心です。小型株およびマザーズ市場は軟調な動きが目立ちました。バリュー株とグロース株では総じて軟調ですが、中でも小型グロース株が大きく値下がりしました。
高まりつつあった騰落レシオは急速に低下しました。REITはそれでも堅調な値動きを保っています。
TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりしたセクターが6業種にとどまり、値下がりセクターが11業種に広がりました。
値上がりの目立ったセクターは「銀行」、「エネルギー資源」、「商社・卸売」の3業種です。前の週に続いて堅調な動きを維持しています。
「銀行」は米国の金利上昇を評価した動きです。最も出遅れているセクターとして、金利の上昇で利ザヤが改善するとの期待が広がっていると見られます。
原油価格に代表される一次産品市況の幅広い上昇が「エネルギー資源」の株価を押し上げました。「商社、卸売」も総合商社を中心に株価が堅調です。
金利上昇と相まってインフレ機運が高まっています。不景気なのにインフレ、このあたりもマーケットのむずかしさ、複雑さにつながっています。
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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)
「銀行」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=285&mode=D
「エネルギー資源」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=272&mode=D
「商社・卸売」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=283&mode=D
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反対に、値上がりトップは「自動車・輸送機」でした。
前の週にトヨタ自動車(7203)、およびトヨタグループ各社が決算発表をきっかけに株価が大きく上昇しました。その反動が下落となって出ています。
加えてテキサス州での大規模な寒波、停電によってトヨタ工場が停止せざるを得ない状況からいったん売り物先行となりました。ホンダ(7267)、スバル(7270)など米国販売のウェートの高い企業も下落が目立っています。
値下がりセクターにはその他に「不動産」、「電力ガス」、「金融」などの非製造業が目立ちました。先週でひとまず出そろった決算内容を見ても、業績の回復基調は製造業に偏っており、非製造業は厳しい経営環境が続きます。
ワクチン接種が始まったことで、これまで売られていた電鉄会社や航空会社の株価が週初から急速に買い戻されました。しかしそれも週末には多少息切れが目立ってきました。
本当に日本でのワクチン接種がスケジュールどおりに進められるのか、ワクチンそのものの調達が順調に運ぶのか、株価の動きを見ていると多少の警戒感が感じられます。いったん利益確定の動きが広がっている模様です。
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値下がり業種のチャート(日足、直近3か月)
「自動車・輸送機」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=276&mode=D
「不動産」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=287&mode=D
「電力・ガス」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=281&mode=D
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先週発表されたマクロ経済統計では、10-12月の機械受注が+16.8%も増えたことはサプライズでした。2005年以降では最大の伸び率となっています。金利が上昇していることもうなづけます。景気は部分的にはかなりよくなっています。
しかしあくまでそれは部分的なものであって、全体としてはかなり厳しい状況のままです。株式市場はその部分的によくなっているところを評価して、日経平均で3万円の大台を突破しました。
現在の株価はバブルか、バブルでないか、という議論が
(後略)