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2024年9月3日

エヌビディア好決算でもテック株は動かず、日経平均は緩やかに上昇継続

鈴木一之

鈴木一之です。9月が始まりました。セミの声は聞こえなくなり、草むらでは虫の音がだんだん大きくなっています。

NYダウ工業株は先週末に史上最高値を更新しました。ジャクソンホールでのパウエル議長の講演から1週間、米国の金融環境は次第に安定感を増しています。

日本もそれを追いかけられればよいのですが、政治・経済・金融・外交・防衛、彼我の格差は大きく、簡単なことではありません。日経平均の戻り歩調はゆっくりとしたものにとどまっていますが、それでも先週末は8月の急落後の戻り高値を更新しています。

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8月相場では日経平均の月間の値幅が上下7,189円に達し、過去最大となりました。史上最大の下げ幅と、史上最大の上げ幅が起こったのですから、それも当然かもしれません。変動の激しい展開でした。

それは米国も同様です。NY株式市場ではダウ工業株の値幅が2,859ドルに達し、2022年10月以来の大きさとなりました。

日本では「日銀ショック」、米国では「雇用統計ショック」と称されるものが月初に集中したことが影響しています。それらをこなしてなんとか月末を迎えた、というところです。

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波乱の8月最終週にふさわしく、先週はなにかと話題の多かった1週間でした。

台 風10号の猛威と新幹線の計画停電に振り回された1週間でしたが、そのほかにも自民党総裁選、カマラ・ハリス大統領候補の初のインタビュー、セブン&アイ HD買収に関する観測、トヨタ=BMWの燃料電池車での提携、パリ・パラリンピックの開幕、毎日のように世の中を突き動かす話題が続出しました。

その中でも最も大きかったものが、やはりエヌビディアの決算です。

8月28日(水)、生成AIブームの中心に君臨するエヌビディアが、5-7月期の決算を発表しました。期待ばかりが先行して今回はかなり危うい、とも事前の予想では見られていましたがふたを開けてみれば、やはり期待にたがわぬ立派な決算内容でした。

エヌビディアの5-7月期の売上高は300億ドル(前年比2.2倍)、純利益は165億ドル(2.7倍)で、どちらも市場の事前予想を上回りました。

合わせて会社側が発表した8-10月期の売上高の見通しも、中心値で325億ドルとこれも市場の予想(317億ドル)を上回りましたが、それでも株価はアフターマーケットで▲6.9%下落しています。

開発の遅れが心配された次世代半導体「ブラックウェル」は出荷の遅れ説は否定され、8-10月期のサンプル出荷に続いて、11月からの期に本格的な出荷が始まる計画です。

考え得る限り最高の決算内容だったにもかかわらず、株価は下落しました。株式市場におけるエヌビディアの評価は、以前ほどの輝きは失われているというのが率直な印象です。

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他の半導体も推して知るべきで、米国および東京市場でも半導体を含めてテクノロジー株に対する見方は低下しています。それがNASDAQの上値の重さにつながっています。

F T紙はジェンスン・ファンCEOの「私たちはできることをするだけ」というコメントを紹介しました。これはオリンピック競泳・平泳ぎでアテネ、北京と2大 会連続2冠、という快挙を成し遂げた北島康介氏の「泳ぐのはぼくだ!」というコメントを想起させます。うるさいのは外野であって、中身のあるのは自分自身 だとわかっています。

おりしも大統領選挙の真っ最中です。中国に対する米国政府の半導体規制の行方はわかりません。それでもエヌビディア は決算発表に合わせて、2-7月に自社株買いと配当で154億ドルにのぼる株主還元を実施したこと、および追加で500億ドルの自社株買いを発表しまし た。文字通りに「できること」を着実にこなしています。

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エヌビディアとともに注目されたのが、バークシャー・ハザウェイです。

ウォーレン・バフェット氏の率いる投資会社として知られるバークシャーの時価総額が1兆ドルの大台を突破しました。アップルやエヌビディアなどのテクノロジー株以外での1兆ドル乗せは初めてです。

バークシャー・ハザウェイは投資会社です。現在のような誰も経験したことのない投資環境、先読みのきわめてむずかしい世界経済とマーケット環境が続く状況下で、一貫して時価総額を拡大させているのは驚異的です。

バークシャーは最近では、大のお気に入りだったアップルの保有比率を大幅に下げ、現金比率を増やして化粧品チェーンなどを購入しています。

米国や欧州の大企業の経営者は、先行きの景気動向や経営環境に対して楽観的であるとの統計結果も聞かれます。

S&P500のうち、今4-6月期の決算で「景気後退」に言及したのは28社にとどまりました。これは過去5年の平均値の83社を大きく下回っています。最悪だったのは2022年4-6月期の234社でした。

バークシャーの最高値更新、初の1兆ドル乗せ、経済の先行きへの企業経営者の自信、それらが総合的に集まってきて、NASDAQの伸び悩みとNYダウ工業株の最高値更新につながっているようです。

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日本では経済統計の発表が注目されました。鉱工業生産が発表され、7月は生産が+2.8%と2か月ぶりにプラスに浮上しています。生産予測指数は8月も+2.2%の上昇を見込んでいます。

経済産業省は、景気の基調判断を「一進一退ながら弱含み」から「一進一退」へと引き上げました。上方修正は2023年3月以来のことです。

8月の月例経済報告でも、政府は景気判断を「一部に足踏みが残るものの緩やかに回復している」へと上方修正しました。

8月は自動車業界の認証不正による生産停止、物価上昇による生活防衛意識の高まり、猛暑による外出抑制、それらが合わさっての消費減退などが懸念されていました。

しかし結果として8月は個人消費が予想以上に堅調でした。それらが背景となって基調判断の1年3か月ぶりの引き上げにつながっています。

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景気が好調であることはよいことですが、朗報ばかりを連れてくるわけではありません。あいからわず日本の財政は膨張を続けています。

8月は年度を通じて予算編成のスタートの時期でもあります。来年度予算の概算要求が総額で117兆円を超えることが報じられました。過去最大を毎年のように更新しており、4年連続で110兆円を上回ります。

日本も政策金利の引き上げが今後の課題となってきます。8月は日銀の金融政策が二転三転したために株価が大きく揺さぶられましたが、金利がここから上昇することは既定路線です。

国 債費は元利合計で+7.0%の28.9兆円と見積もられます。このうち利払い費だけで10.9兆円に達し+12.8%も増加します。このままではいずれ マーケットからの警告として、長期金利の暴走が始まることも起こりえます。利払い費がどこまで増えるのか、シビアにチェックしてゆかなければなりません。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週連続で上昇しました。7月上旬以来のことで、引き続きマーケットは落ち着きを取り戻しています。週間の上昇幅は+1.04%でした。

規模別指数では、大型株が+1.05%と3週ぶりに反発しました。中型株は+0.91%、小型株は+1.36%といずれも3週連続で上昇しています。

スタイル別では、バリュー株とグロース株の上昇はほぼイーブンです。大型グロース株は+0.98%、小型グロース株が+1.52%、大型バリュー株が+1.04%、小型バリュー株が+1.21%となり、わずかに小型株が優位の展開です。

騰落レシオは127.22%まで上昇しました。過熱圏とされる120%を超えています(7月17日以来)。日経平均のサイコロジカルラインは「9」から「8」に低下しました。

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TOPIX-17業種の動向では、値上がりが15業種、値下がりが2業種でした。

値上がりセクターの上位は「商社」、「不動産」、「鉄鋼・非鉄」です。戻り歩調を強めた直近の3週間で動きの少なかったセクターに上昇がみられました。

「商社」では、配当利回りの高い伊藤忠(8001)、三井物産(8031)、豊田通商(8015)をはじめ、高島(8007)、アルフレッサHD(2784)、東邦HD(8129)などの上昇が目立ちました。

「不動産」は、大手の三井不動産(8801)、三菱地所(8802)を中心にレオパレス21(8848)、オープンハウスG(3288)が上昇しています。金利上昇懸念を消化しつつある模様です。

「鉄鋼・非鉄」でも日本製鉄(5401)、合同製鉄(5410)、東京鉄鋼(5445)という、このところ動きの目立たなかった銘柄に買いが広がっています。

反対に値下がりセクターの上位は「銀行」、「食品」、「素材・化学」となりました。いずれのセクターも値下がりというよりは、上昇が鈍かったという程度にとどまっています。

むしろ食品株ではキリンHD(2503)、

(後略)

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鈴木一之