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2021年12月7日
オミクロン・ショックにパウエル議長のタカ派豹変が加わり大幅安
◎日経平均(3日大引):28,029.57(+276.20、+1.00%)
◎NYダウ(3日終値):34,580.08(▲59.71、▲0.17%)
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鈴木一之です。米国では感謝祭が過ぎて、本来であればクリスマスシーズン一色といったところですが、世界は再びコロナウイルスへの警戒心が高まっています。
オミクロンと名付けられた新しい変異種への対応策で右往左往している状況です。株式市場と債券市場は週を通じて激震に見舞われました。急落に見舞われた1週間の動きを日ごとに記してみます。前後関係は多少ずれているかもしれませんがその際はお許しください。
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【11月26日(金)】
日経平均:28,751(▲748)
NYダウ:34.899(▲905)
南アフリカでコロナウイルスの変異型が見つかる。スパイクたんぱく質に30か所の変異があり、感染力が強いとされる。WHO(世界保健機関)は「オミクロン」と名付け、最も警戒レベルが高い「懸念される変異型(VOC)」に分類。
それと合わせて、ゴールドマン・サックスが来年の米国の利上げ開始の時期を早め、年間で3度になりそうだとの見通しを発表。NYダウ工業株は今年最大の下げ幅を記録した。
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【11月29日(月)】
日経平均:28,283(▲468)
NYダウ:25,135(+236)
オミクロンショックから日本の週明けも大きく下落して始まる。スウェーデンやスペインでも感染者が確認され、欧州を中心に世界中があわてて行動規制を強化する中で、日本政府はオミクロンへの水際対策を強化し、11月30日午前0時から全世界からの新規入国を原則停止すると発表。11月8日に緩和したばかりの方針を転換した。
米国時間になると、バイデン大統領は「現時点でロックダウンは考えていない」と方針を表明。「懸念する理由はあるが、パニックになる理由ではない」とも述べ、ひとまず米国株式市場は反発した。
ただし「遅かれ早かれ米国で見つかるだろう」とも付け加えた。ファイザーとビオンテックは、2週間以内にデータを取得でき、ワクチンの調整が必要であれば100日以内に出荷できるとの見解を発表。これによって「2週間」と「100日}という心理的な目安がひとまず確立された。
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【11月30日(火)】
日経平均:27,821(▲462)
NYダウ:34,483(▲652)
モデルナのCEOが現在のワクチンではオミクロンに対する効果は弱い、新たなワクチンの製造には数か月を要すると述べ、東京市場は大きく続落。28000円割れ。
オミクロン騒動とは別の、もうひとつのリスクも判明。FRBのパウエル議長が上院の議会証言に臨みタカ派的な見解を表明した。
パウエル議長は個人の見解として「資産購入を数か月早く終了することを検討するのが適切だ」と表明。テーパリングを加速させることを12月半ばの次回FOMCで議論するとの見解を示した。
オミクロン変異種の出現によって、経済活動が下振れするリスクはあるものの、人々の就労意欲が減退して労働市場の改善が遅れること、およびサプライチェーンの乱れが増幅されることをその根拠とした。
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【12月1日(水)】
日経平均:27,935(+114)
NYダウ:34,022(▲461)
東京市場は前日までの3日間で▲1678円も下落したことからいったんは自律的に反発。しかし米国はまだ不安定な状況が続く。
米国市場は一時+500ドルの上昇場面もあったが、米国内でもオミクロンへの感染が確認されると下落に転じた。1日の上下幅は1000ドルにも達した。
パウエル議長はこれまでインフレについて「transitory(一時的)」という表現を使って説明したきたが、今後は「この言葉を使わないようにする良い機会だ」という。はっきりとパウエル議長がタカ派に転じたとマーケットでは認識。
さっそく金融市場は反応しており米国の短期債、2年国債利回りは0.5%台後半に上昇、長期の10年国債利回りは1.4%台に低下するフラット化が進んだ。インフレ抑制による景気の悪化を織り込む展開になりつつある。
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【12月2日(木)】
日経平均:27,753(▲182)
NYダウ:34,639(+617)
日本政府は11月29日(月)に出した海外からの入国停止要請を3日間で方針転換。ただし1日あたりの入国者数の上限3500人の制限は維持すると発表した。
日本国内でもオミクロンの感染者が2名判明したが、このあたりからオミクロンは感染力は強いものの重症化率、致死率は高くないという見方が伝わるようになり、徐々に落ち着きも見られるようになった。上海、香港、韓国、台湾などアジア株は堅調。
米国ではオミクロンの感染者が相次いで確認される。12月1日はカリフォルニア州で最初の感染者が確認されたのに続いて、2日にミネソタ州、コロラド州でそれぞれ1人、ニューヨーク州で5人の感染が明らかになった。
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【12月3日(金)】
日経平均:28,029(+276)
NYダウ:34,580(▲59)
米国の製薬大手・メルクがコロナウイルスの経口治療薬を厚生労働省に申請。年内にも承認されるよう急ぐ構えで、オミクロンに対しても有効である可能性が高いとされ、これが東京市場の株価反発につながった。今回のオミクロン騒動で再び急落していた航空会社、旅行会社、鉄道各社の株価が急反発した。
米国では11月の雇用統計が発表された。失業率は4.2%(前月は4.6%)と大きく低下したが、非農業雇用者増は前月比+21万人(予想57万人)には届かなかった。オミクロンに対する警戒、早期のテーパリング、インフレ懸念、景気後退で米国の債券市場はイールドカーブのフラット化がさらに進んだ。
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上記の内容の繰り返しになりますが、マーケットの不確実性としては、(1)オミクロン変異種による経済界への下押し圧力、(2)サプライチェーン問題の解消は長期化するとの懸念、それに加えて(3)パウエル議長のタカ派姿勢が重なってきました。それぞれが独立したものではなく、いずれも密接に関連しあっています。
1週間前の時点では、(1)実際にオミクロンで感染者は拡大するのか、(2)ワクチンは効くのか、(3)各国のロックダウンは広がるか、(4)物流は再び寸断され人流は滞り工場も閉鎖されるのか、という点が懸念されていました。
いずれもまだ確証は得られておりませんが、影響は想定されたほどにはひどいものにはなっておりません。目下のところの市場の(世界の)関心事は、オミクロン変異種の感染力と症状の重さ、それに現行のワクチンの効力に集約されています。
十分に警戒すべきですが、これまでのところは感染力は強いものの、重症化リスクは比較的小さいというものです。専門家に十分なデータがそろうまであと1週間は必要とされていますが、各国は連携して素早く水際対策や行動規制を取っており、マーケットは徐々に落ち着きを取り戻してゆく可能性もあると見られます。
既存のワクチンの効力に関しては、製薬会社によれば有効かどうかの調査結果も数週間以内に結果が得られるそうです。仮に効果がないとされても、ファイザーによれば100日以内に新たなワクチンを出荷することは可能のようです。
製薬メーカーや医療機関にとっての100日と、マーケットにとっての100日は感覚が異なるものの、それでも過去の事例からすれば革命的な速さであることは間違いありません。せっかくのクリスマスシーズンが台無しとなりかないものの、各国とも連携して行動規制を強化して対処しています。12月相場のスタートでのオミクロンショックは大きかったものの、市場の値動きも徐々に冷静さを取り戻すものと予想されます。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。下落率は前の週の▲2.91%に続いて、先週も▲1.37%と比較的大きなものになっています。
大型株から小型株まで一斉に下落していますが、大型株の軟調さに対して小型株の下げは比較的小さなものにとどまっています。ただしマザーズ市場にはリスク回避の売りが集中している模様です。東証マザーズ指数は▲7.08%もの大幅な下げとなりました。REIT指数も反落しています。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターは「機械」と「建設・資材」の2業種のみにとどまりました。反対に15業種が値下がりしています。
値上がりトップとなった機械セクターは、景気動向を判断するうえではきわめて重要です。今回のオミクロンショックが始まる2か月前から、機械セクターだけは交易条件の悪化(円安、資材高)を背景に軟化し始めていました。
オミクロンが恐れられていたほどに重症化リスクはなく、ワクチンも少し時間を要すればなんとかなりそうだということが判明しつつあって、先に売られていたところから買い戻しが強くなっているようにも見えます。
主力のダイキン工業(6367)、荏原(6361)、クボタ(6326)がしっかりし始めており、遅れてツガミ(6101)、
(後略)