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2023年8月28日

ジャクソンホール会合を通過、日経平均は週末に荒れ模様

鈴木一之

鈴木一之です。お盆休みが過ぎ、甲子園での高校野球も終わって、あちこちから秋の気配が感じられるようになりました。

暑さは十分に残っていますが、セミの声もどこかしら弱くなってきて、そうして8月も最終週を迎えます。

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先週の株式市場は夏枯れ。例年と同じようにボリュームが減少しています。それでも株価はしっかりした足取りとなりました。日経平均は月曜日から木曜日まで4連騰を記録して、週末の金曜日だけ大きく下落するという流れです。

乱高下はしているのは、それはあくまでも「電機・精密」の中の半導体関連株だけであって、それを除くと幅広いセクターで堅調な値動きが見られました。年初来高値を更新する銘柄が相次いでおり、中には上場来高値を突き進む銘柄も見い出すことができます。

商いは低調ですが、株式市場はずいぶんと堅調な地合いに変化しつつあります。そこには好調な企業業績が背景にあると見られます。

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先週のマーケットの焦点は、何と言ってもジャクソンホールでのシンポジウムです。週末に開催されました。パウエル議長は今年はどのような講演を行うのか、この一点に市場の関心が集中していました。

今回の会議のテーマは「世界経済の構造変化」というものです。それだけに事前の予想では、「中立金利」(景気を熱しも冷やしもしない金利水準)に関する議論が交わされるのではないかと市場は警戒していました。

中立金利の水準が上昇しているとなると、金融政策は簡単には緩和の方向に向かわないという警戒心が漂っていたようです。結果としてパウエル議長は講演で「中立金利を特定することはできない」と述べたに過ぎず、この問題にはほとんど言及しませんでした。

代わってパウエル議長が強調したことは、インフレに関して「依然として高すぎる」、「さらなる利上げの用意がある」という点です。インフレの抑制には「まだ長い道のりがある」との持論をあらためて強調しました。これらの発言は、最近のFOMC会合後の記者会見で述べる内容とほとんど同じです。

昨年はインフレの抑制に対して「やり遂げるまでやり続ける」と強い決意を強調して、その後の世界的な株価急落を招いたという経緯があります。今回もそれと同じようなインパクトを市場は警戒していましたが、それが今回は完全に肩透かしに終わったようです。

「Fedウォッチツール」で見られるような、市場の年内の利上げ見通しは講演後も大きく変わりませんでした。そこからもサプライズが何もなかったことがうかがえ、逆にそれを好感してNYダウ工業株は+247ドルの上昇で反応しました。

週初に10年国債金利が4.3%を超えて、2007年以来の高水準に達していたことを考えるとマーケットは一安心といったところです。

こうなるとマーケットは再び9月のFOMCに向けて、今後も経済統計データをにらみながら一喜一憂する展開が続きそうです。物価上昇というものは「+10%を3%まで抑え込むのはたやすいが、+3%を2%にするのはより一層むずかしい」とされています。むしろここからの道のりが長いようにも思えてなりません。

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マーケットのもうひとつの関心が、エヌビディアの決算発表です。

画像処理半導体のエヌビディアがどのような決算を発表するのか、3か月前に同じエヌビディアの決算発表から始まった「生成AIフィーバー」が再現されるのか、その点に市場の関心が集中しました。

今回もエヌビディアの業績はきわめて好調です。8月23日に発表された5-7月期の決算では、売上高が135億ドルで前年比2倍、純利益も61億ドルで9倍と、そろって史上最高を更新しました。画像処理半導体の需要が急拡大しており、業績の拡大を牽引しています。

続く8-10月期の見通しも売上高が160億ドルまで拡大すると見ており、市場の予想を大きく上回りました。これを受けてエヌビディアの株価はアフターマーケットで一時は+10%も大きく上昇しました。

生成AIのブームによって、画像処理半導体の需要は今後も拡大すると見られます。スタティスタ(調査会社)は2021年から2028年にかけて市場規模は1278億ドルと12倍に拡大すると予想します。生成AIの関連市場は2027年に、全世界で1210億ドルになるとのことです(ボストン・コンサルティング)。

それだけに競争は激烈なものとなりますが、エヌビディアは今回も十分に期待に応える決算を成し遂げた点で十分に立派と言えるでしょう。

ただし今回、エヌビディア以外の銘柄にはなかなか波及効果が見られません。米国の半導体関連株は早々に息切れしています。日本でも木曜日にアドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)、ディスコ(6146)、イビデン(4062)などが大きく上昇したものの、翌金曜日には早くもアドバンテストで▲10%近く下落するなど売り物に押されています。

4-6月期の決算内容で確認されたように、日本でも半導体および電子部品市場はかなり強い在庫調整の圧力にさらされています。全産業を通じて4-6月期の決算内容は、総じて良好な企業が多かったのですが、エレクロニクス業界は厳しい数字が目立ちました。

株式市場は将来への期待や予想を評価するものですが、より肝心なのは未来よりも現実の姿です。直近の苦境がしばらくは続くと見られると、将来の期待もしぼみがちとなります。エヌビディアの業績発表を越えたあとの半導体市場は、もう少し精査する時間が必要になるそうな雲行きです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反発しました。週末に半導体関連株を中心に大幅な下落に見舞われましたが、週前半の4日続伸による貯金がモノを言いました。週間の上昇率は+1.30%で、前週の▲2.87%の下落をかなり取り戻しています。

規模別指数では、大型株(+1.06%)、中型株(+1.61%)、小型株(+2.03%)と、いずれのクラスも上昇していますが、中でも小型株の上昇が目立っています。

スタイル別でも前の週とは反対に、バリュー株からグロース株まで幅広く上昇しました。中でも小型グロース株が+2.07%、小型バリュー株が+2.00%と、ここでも小型株の上昇が目立っています。大型バリュー株も+1.71%とまずまず健闘しています。東証マザーズ指数も+4.29%と大きく反発しました。

騰落レシオは8月23日(水)に112.23%まで上昇した後、週末は109.08%にわずかに低下しました。100%超えは維持しています。日経平均のサイコロジカルラインは「6」から「7」に復調し、週末は「6」で終わりました。東証REIT指数は2週ぶりに反発しました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、全17業種すべてが上昇しました。全業種が値下がりした前の週とちょうど反対の状況が見られました。

値上がりセクターの上位は「電力・ガス」、「銀行」「エネルギー資源」でした。値上がりの小さかった業種は「商社・卸売」、「素材・化学」、「電機・精密」となりました。

値上がりトップの「電力・ガス」は、関西電力(9503)、中部電力(9502)が年初来高値を更新し、それ以外の電力株も総じてしっかりした展開です。電力料金の値上げが浸透し、業績が安定していることが評価されています。

東京電力HD(9501)も週を通じて堅調でした。福島第一原発事故に伴う放射能処理水の海洋放出が10年越しでいよいよ始まりました。廃炉に向けての第一歩がようやくスタートしたところです。日本の原発政策、ひいてはエネルギー政策全体がここから動き出すものと見られます。

中国は日本の海産物の全面禁輸に踏み切っています。この措置が解除される日がいつになるのか、現時点ではまったくわかりません。応急策として漁業を中心に関係する方面への保護が求めらるとともに、「福島県産の海産物を食べよう」という動きがSNSを中心に広がりを見せています。

値上がりセクターの第2位は「銀行」でした。直接的には米国の金利上昇が銀行株を押し上げていると見られます。それとともに国内では、製造拠点が徐々に海外から日本国内に回帰しており、それが地方経済での貸出増加につながると見られます。

地銀の中では、千葉銀行(8331)、

(後略)

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鈴木一之