ブログ
2025年2月11日
トランプ関税が炸裂、日経平均は週間で続落、4万円の壁はやはり厚いのか

鈴木一之です。DeepSeek(ディープシーク)ショックも冷めやらぬうちに、また新たな壁が株式市場の前に立ちはだかりました。トランプ大統領による関税の引き上げです。
東京株式市場は週明けから急落する展開となり、日経平均は38,000円台の前半まで押し戻されました。またもや4万円の壁にはね返された格好です。
@@@@@
トランプ関税については、すでに前週末の時点でマーケットは概要を把握していました。カナダとメキシコに対して2月4日(火)から25%の関税を発動する大統領令に署名したことで、週明けにはその悪影響が出ることはある程度は予想されていました。
市場参加者の大多数は、トランプ政権の関税引き上げは他の国と交渉する際のカードの1枚に過ぎず、本当に発動するとは思っていなかったというのが偽らざる本心です。
トランプ政権発足からの2週間が穏当に過ぎたことで、マーケットはさらに楽観的な見方に傾いていたようにも感じます。それが本当に関税の発動に至ったことで、市場は完全に意表をつかれました。
@@@@@
実際に月曜日の取引が始まってみると、関税引き上げによる影響の大きい自動車、電機株を中心に主力銘柄が軒並み大きく下落しました。
トランプ政権は中国にも追加で10%の関税をかけると通告し、これに対して中国はWTOに提訴する構えを見せています。カナダとメキシコも米国に対して報復措置を講じると通告しており、関税引き上げの応酬→貿易戦争に発展、という2018年の連想がマーケットには広がりました。
2018年のように、先行きの見えない憂鬱な日々が繰り返されることが予想され、月曜日はかなり暗い雰囲気で取引を終えました。
@@@@@
その流れが一変したのが翌日の火曜日です。
トランプ大統領とカナダのトルドー首相が、関税の発動を1か月延期することで合意し、朝方から株価は急反発しました。
カナダが国境警備隊を1万人増強することで、不法移民と合成麻薬の流入を阻止する対策を講じたことが決め手となりました。
同じくメキシコも国境警備隊を1万人増やすことで合意し、関税の発動は1か月延期されました。やはりここでは関税が交渉の手段であり、トランプ政権にとって早くも狙い通りの成果が得られたことになります。
しかし中国は交渉に応じず、米国に対して石油製品への10~15%の報復関税を発動しました。そのニュースが火曜日の14時過ぎに流れると、株価はそれまでの上昇幅を打ち消すように軟調な値動きに変わりました。
その後も週を通じて日経平均は一進一退の展開を余儀なくされています。
@@@@@
関税は発動する側も、発動させる側にも経済面で悪影響をもたらします。2018年の場合、関税引き上げ合戦が講じてそのまま世界全体が景気後退に陥りました。この先にどのような展開が待っているのか予想がつきません。
勢いに乗るトランプ大統領は、週半ばのイスラエルのネタニヤフ首相との会談の後で、ガザ地区を米国が所有するという意向を明らかにしました。ガザをリビエラのようなリゾート地に変える計画ですが、これにはすかさず全世界から非難の声が上がっています。
まさにやりたい放題、これぞ「トランプ2.0」というところですが、民間企業からすれば米国政府にいくら対抗しても勝ち目はないので、経営者は次々と米国への投資を決めてゆきます。
米国にとって良いことは、米国以外の国にとって必ずしも良いこととはいえない場合もあり、株式市場は警戒心を高めています。リスク回避のムードが一段と広がり、円は対ドルで152円台前半の円高・ドル安となっています。
@@@@@
大きなニュースは日本からも発せられました。ホンダと日産自動車が経営統合の協議打ち切りを発表したのです。
このケースも水曜日に報道が先行し、正式には木曜日に日産自動車からホンダに対して経営統合への基本合意書の破棄が通告されました。統合比率で折り合いがつかなかったことが理由とされています。
実現すれば日本の産業史に残る歴史的な経営統合になったのは間違いないスキームです。しかしこの構想には最初から無理があったようにも思います。
カルロス・ゴーンショックが尾を引き、社運を賭けた電気自動車の普及も大波が衰えつつある現在、日産自動車の苦境は誰の目にも明らかです。
それでも数々の名車を生み出したあの日産自動車が、国内では一匹狼のホンダと手を組むことはやはりむずかしい事案のように感じられます。
持株会社ではなく、ホンダが日産を傘下に収める子会社化を打診したことが破談のきっかけとされていますが、統合計画を破談にするために双方あえてホンダの子会社化を提案したのではないかと思ってしまいます。
次の名前が挙がっている鴻海精密工業は、かつて日産で内田社長とトロイカ体制を組んでゴーン後の日産を任された関潤氏がEV部門を率いています。9000人の希望退職を募って、ここからの日産にはどのような未来が待っているのか、現時点では誰にもわかりません。しかしそれはホンダも同様です。
@@@@@
@@@@@
先週の東京株式市場は、TOPIXは3週ぶりに反落しました。下落率は▲1.84%で、前週の+1.37%をほぼ打ち消した形となっています。引き続き日経平均よりもTOPIXの値もちがよく、NT倍率は低い水準にとどまっています。
規模別では、大型株指数が▲2.03%と3指数の中では最も大きく下落しました。中型株指数は▲1.79%、小型株指数は▲0.41%と、すべてマイナスながらも大型株指数より小幅の下落にとどまりました。東証グロース株250指数は+3.30%と逆行高を示しました。
スタイル別の株価指数では、大型バリュー株▲1.99%、大型グロース株▲1.93%とともに下げ幅が目立っています。それに対して、小型バリュー株は▲0.22%、小型グロース株は▲0.61%にとどまりました。
騰落レシオは100%超を続けていましたが、先週は週末値で93.64%まで低下しました。日経平均のサイコロジカルラインは「7」~「8」を続けた後、週末は「7」にとどまっています。
@@@@@
TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが2業種にとどまり、反対に値下がりセクターは15業種まで拡大しました。
値上がりセクターの上位は「鉄鋼・非鉄」、「情報通信・サービス」、そしてマイナスですが「エネルギー資源」となりました。
値上がりトップの「鉄鋼・非鉄」は前の週のワーストからトップに急浮上しました。日本製鉄(5401)、神戸製鋼所(5406)、日本冶金工業(5480)、大和工業(5444)、淀川製鋼所(5451)などの鉄鋼株が総じて堅調な値動きだったことを反映しています。
「鉄鋼・非鉄」セクターはこれまで、人気の中心はフジクラ(5803)、古河電工(5801)などの電線株に絞られていました。それが「DeepSeek」ディープシーク・ショック以来、電線株が小動きとなっており、代わって重厚長大の鉄鋼株が浮上しています。典型的な「天底逆転」です。
非鉄でも日軽金HD(5703)、三菱マテリアル(5711)、古河機械金属(5715)が堅調です。
値上がり第2位のセクターは「情報通信・サービス」でした。NTTデータG(9613)、野村総合研究所(4307)、TIS(3626)、フィックスターズ(3687)、GMO(9449)などソフトウェアが総じて堅調です。
デジタルトランスフォーメーションの波に乗って、各社いずれも決算が良好な点がひとつ。そのほかにもトランプ関税を警戒して外需関連企業が手がけにくくなっており、その分だけ内需関連のソフトウェアに人気がシフトしています。
任天堂(7974)、コナミG(9766)、カプコン(858)、DeNA(2432)のゲーム関連株も同様に人気の中心に位置しています。
@@@@@
反対に値下がりセクターの上位は「医薬品」、「自動車・輸送機」、「機械」でした。
「医薬品」は決算発表を受けてアステラス製薬(4503)、小野薬品工業(4528)が下落し、ほかにも第一三共(4568)、ロート製薬(4527)、参天製薬(4536)が幅広く下落しました。
「自動車・輸送機」は高安まちまちですが、トヨタ自動車(7203)、デンソー(6902)、三菱自動車(7211)、いすゞ自動車(7202)、ホンダ(7267)が軟調です。
反対に話題の日産自(7201)をはじめ、
(後略)
