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2025年2月25日
トランプ関税とウクライナ和平で世界は揺れる、NY市場は波乱の週末

鈴木一之です。膠着感の強い展開が続いています。年明け以降の日経平均は金曜日の終値がずっと39,000円をはさんで一進一退を繰り返しています。
膠着状態に陥るのも無理はありません。トランプ政権の打ち出す政策に世界が翻弄されています。
今週は米国株式市場でS&P500が史上最高値を更新するという、めざましい展開があったばかりですが、その米国市場も週末には株価が急落して波乱の様相を見せ始めました。
大統領就任から最初の1か月間が経過したばかりですが、あやうい「米国第一」主義が果たしてどこまで続くのか、世界は息をひそめて見守っています。
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米国は株価が上昇しているからまだ良しとして、問題は日本です。米国株の上昇の熱気が東京マーケットに伝播することが薄れてきました。(米国市場が下落するとすぐに反応します。)
トランプ関税の影響がさまざまな研究機関が分析し、影響が大きいとみるところ、影響は大きくないと見るところ、各社各様の見解が出始めています。関税の影響が最も大きいと見られる自動車セクターはやはり軟調で、トヨタ自動車(7203)をはじめ買い方心理は見送りを決め込んでいる様子です。
輸出関連株が手がけづらいなら、株式市場の習性として自然と内需セクターに向かうものですが、これまでのようにコンテンツ銘柄だけが急騰を演じるのも限界があります。
日本は日本で、日銀が政策金利を引き上げる方向に再び傾いており、長期金利が上昇。株価の頭を押さえています。内需セクターの中核でもある不動産セクターが軟調です。
消費関連の小売セクターも、食料品の価格がびっくりするほどの値上がりを続けているため、スーパーや外食産業を中心に元気が出ません。株価が堅調なのは金利上昇に強い銀行セクターですが、メガバンクの上値も重くなってきたようです。
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今週もニュースの紙面はにぎやかでした。S&P500は1か月ぶりに最高値を更新しましたが、週末に1月期の決算発表を行ったウォルマートは決算後に株価が▲6.5%も急落しました。
米国の主だった機関投資家はテック株の組み入れ比率を落としており、その分を関税の影響の少ない米国の内需株に振り向けています。それだけにウォルマートの決算がここから影響しなければよいと願うばかりです。
週半ばにトランプ大統領は、4月に公表する計画の自動車への関税を「25%程度」と記者団に語りました。週末には今度はアルミへの追加関税が、半導体製造装置や航空機の部品が含まれることも判明しました。この分は3月12日から適用されます。
ウクライナ情勢に関しては、週初にルビオ国務長官とラブロフ外相が電話協議を行い、早ければ今月末にも米ロ首脳会談が実施されることになりそうです。
ウクライナと米国との間では、鉱物資源の権益が取引材料として持ち上がっています。選択肢のないゼレンスキー大統領は受入れざるをえない様子ですが、これにはウクライナ国民の91%が「反対」に回っています。またロシアが再び侵略した際には、ウクライナは自動的にNATOに加盟が認められる案も浮上しているようです。
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日本の10-12月期の実質GDPが速報値で前期比+0.7%、年率換算+2.8%となりました。事前の予想は年率+1.0%でした。輸入の減少分が大きく反映しており、個人消費や設備投資はさえない結果となりました。
1月の日本の消費者物価指数は総合指数で前年比+3.2%でした。3か月連続の上昇です。総合には反映されませんが、とにかく生鮮食品の値上がりが驚くほどです。生鮮食品は+21.9%の上昇でした。
日銀は政策金利の引き上げを急ぐ構えです。国債流通利回りは上昇を続けており、10年国債金利は1.4%を超え2009年11月以来の水準に上昇しました。銀行間での預金獲得競争も激しくなっており、SBI新生銀行は60歳以上の預金客の普通預金金利を、通常の2倍となる年0.4%に引き上げます。
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ベインキャピタルは富士ソフトへのTOBから降りると発表しました。KKRとのTOB合戦は半年で終幕を迎え、これをきっかけに他のソフトウェア会社にも物色が広がるようになっています。
日産自動車の経営に鴻海精密工業が乗り出す構えですが、今度はそこにテスラの名前もちらつき始めました。あくまで報道ベースで当事者は何も表明していませんが、この問題に関しては最終決着までまだ相当かかりそうです。
アップルは「iPhone SE」の後継機種として「iPhone 16e」を発表しました。パネルは4.7インチから現行の「16」同じ6.1インチになり、ホームボタンも廃止されています。価格も9万9800円からとかなり高く「SE」ではなくなってしまいます。ファンの間では不満も大きいようですが、電子部品株にあ底入れ反転の兆しも見えてきました。
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先週の東京株式市場は、TOPIXは反落しました。下落率は▲0.82%にとどまり、前の週の+0.80%の上昇をほぼ打ち消しました。
規模別では、大型株指数が▲1.02%、小型株指数が▲2.22%とどちらも目立って下落しています。中型株指数のみ+0.13%とプラスを維持しました。
東証グロース株250指数は堅調で、+0.47%と5週連続で上昇しています。
スタイル別の株価指数では、大型バリュー株が▲0.64%、大型グロース株は▲1.02%となり、グロース株がどちらかと言えば軟調でした。小型バリュー株は▲0.54%、小型グロース株は▲0.89%と、ここでもグロース株の下落が勝っています。
騰落レシオは週半ばに117.99%まで上昇した後、週末は110.06%に低下しました。2月第2週以降は一貫して100%超を維持しています。日経平均のサイコロジカルラインは今年初めての「9」から「8」に低下しています。
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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが5業種にとどまり、反対に値下がりセクターは12業種に広がりました。前の週とちょうど反対の動きです。
値上がりセクターの上位は「資源エネルギー」、「電力・ガス」、「銀行」でした。それに対してマイナスセクターの上位は「不動産」、「小売」、「商社・卸売」となりました。
値上がりトップの「資源エネルギー」は前週に続いて2週連続の上位登場です。
前週にENEOSホールディングス(5020)が決算発表を機にJX金属の株式公開のニュースで物色されましたが、今度は三菱商事との共同でSAF(再生航空燃料)の製造基地を和歌山県に建設するとの話題で株価が上昇しました。
それを除くと他の銘柄は動きの乏しい展開に終始しました。
値上がり第2位の「電力・ガス」も基本的には同じです。大阪ガス(9532)が大阪万博の開幕にあわせて夢洲で稼働させる「eメタン」の実証設備をメディアに公開したことが買い材料となりました。
ただしここでも動いている株価は大阪ガスだけで、それ以外の電力・ガス株は軟調な動きが目立ちました。
政府は2月18日(火)にエネルギー基本計画を閣議決定し、2040年度の電源構成として再生可能エネルギーで4~5割、原子力で2割、火力で3~4割としました。
中でも「eメタン」については、「2030年に技術を確立し、2040年代の大量生産を目指す」と盛り込んでいます。「eメタン」は燃焼時の温暖化ガスの排出が合成時の回収分と相殺されて実質の排出量はゼロとなり、これが大阪ガスの買い材料として注目されています。
値上がり第3位の「銀行」は、引き続き金利上昇からメガバンクが堅調な展開となりました。動きが遅れていた地銀株の一角にもしずおかFG(5831)、千葉銀行(8331)、群馬銀行(8334)に買いが広がっています。
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一方の値下がりセクターは「不動産」、「小売」、「商社・卸売」が入りました。
値下がりトップの「不動産」は金利上昇を嫌気する形で、三井不動産(8801)、三菱地所(8802)、住友不動産(8830)の大手から中小に至るまで総じて軟調でした。首都圏では1月のマンション販売が大幅に落ち込んでおり、価格が上昇し過ぎた反動として警戒されています。
値下がり第2位の「小売」はファーストリテイリング(9983)、エービーシー・マート(2670)、アダストリア(2685)、ニトリホールディングス(9843)など、主力銘柄がいずれも軟調でした。コロナ過で落ち込んだ反動の増加が一巡して、次なる戦略が各社ともに問われています。
値下がり第3位の「商社・卸売」でも、伊藤忠(8001)、
(後略)
