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2024年12月3日
トランプ関税に翻弄される、東京市場は3週連続で下落
鈴木一之です。12月になりました。時の経過がひときわ早く感じられます。今年最後の月も波乱含みとなりそうです。
トランプ次期大統領の言動に世界は早くも振り回されています。先週はメキシコ、中国、カナダに対する関税引き上げが大きくクローズアップされました。世界中の株式市場が神経質になっています。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが小幅ですが3週連続で下落しました。下落率は▲0.59%となり、前の週の▲0.56%とほぼ同じ程度の下げ幅となっています。
先々週の下げの中心は大型株でしたが、先週は大型株から小型株まで一様に下げています。大型株指数は▲0.69%、それに対して中型株指数は▲0.31%、小型株指数は▲0.61%でした。
一方で小型グロース株には上昇力が継続しており、東証グロース市場250指数は+1.44%と続伸しました。IPO直後の銘柄が人気を維持しています。
バリュー株/グロース株でも下げが広がっていますが、相対的にグロース株の方が堅調さが見られます。大型バリュー株は▲0.96%、大型グロース株は▲0.22%と両者の差が広がりました。
騰落レシオの反発は続いており、週末には105.30%まで上昇しました。10月21日以来の高水準です。日経平均のサイコロジカルラインは週末は「5」にとどましました。
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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが7業種、値下がりセクターは10業種となりました。
値上がりトップのセクターは「医薬品」です。それに続いて「情報通信・サービス」、「小売」となりました。景気動向に影響されにくい内需系のディフェンシブ的なセクターに資金が流れています。
反対に値下がりセクターの上位は「自動車・輸送機」、「商社・卸売」、「鉄鋼・非鉄」となりました。トランプ関税の影響をまともに受ける自動車セクターを中心に、景気動向に敏感なセクターが幅広く下落しています。
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値上がりトップの「医薬品」では、第一三共(4568)、中外製薬(4519)、参天製薬(4536)、富士製薬(4554)が上昇しました。これまで軟調だった銘柄がそろって反発しています。
値上がり第2位の「情報通信・サービス」では大手通信キャリアが総じて堅調です。大塚商会(4768)、SCSK(9719)、アドソル日進(3837)のソフトウエア開発や、東宝(9602)、東映(9605)、コーエーテクモ(3635)のコンテンツホルダーが堅調でした。これらはいずれもディフェンシブ銘柄と位置付けられ、安全資産への資金シフトが見られます。
第3位の「小売」でも良品計画(7453)、しまむら(8227)、青山商事(8219)、モノタロウ(3064)などの決算好調な銘柄があらためて買われました。ここでも内需的な銘柄に資金が戻っている様子がうかがえます。
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反対に値下がりセクター首位の「自動車・輸送機」では、日産自(7201)、三菱自動車(7211)、マツダ(7261)、ホンダ(7267)など完成車メーカーが一斉に売られました。トランプ次期大統領が打ち出した関税引き上げの影響が影響していると見られます。
関税引き上げによって世界経済が停滞し、貿易量が減少するとの恐れからか、総合商社や産業の基礎素材も軟調です。値下がりセクターの第2位は「商社・卸売」、第3位は「鉄鋼・非鉄」でした。
前週まで堅調だった古河電工(5801)、フジクラ(5803)、住友電気工業(5802)の電線株も売り急ぎの動きが見られます。
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世界中がトランプ次期大統領の動静に神経をとがらせています。
日本時間の11月26日(火)の朝、突然トランプ氏がSNSを通じて中国、メキシコ、カナダに新たな関税をかけると表明しました。
合成麻薬「フェンタニル」の米国への流入に対抗するためとしており、これらの薬物の流入が止まるまで中国から米国に入ってくるすべての製品に対して、現在の関税に追加して10%の関税を課すと宣言しています。
カナダやメキシコに関しては新たに25%の関税をかけるとしており、いずれも来年1月20日の就任初日に大統領令に署名すると宣言しました。
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米国の輸入額はここで問題とされるメキシコ、中国、カナダが上位3か国を占めます。その規模は3か国合計で米国の全輸入額の4割にのぼるとされています。米国にも影響が及ぶのは必至の状況です。
またメキシコとカナダは米国とは貿易協定を結んでおり、お互いに関税を撤廃しています。そこに25%の関税をかけると事実上の協定破棄となるため、動揺はさらに広がっています。
メキシコのエブラルド経済相は、今回のメキシコへの関税によって「米ビッグ3の利益に対する税金を2倍にするのに等しく、米国は40万人の雇用を失うことになるだろう」と独自の試算を明らかにしました。
特に影響の大きな自動車セクターは、ガソリン車、電気自動車を問わず影響が出ると見られています。追加関税の表明直後から米国でもGM、フォードの株価が急落しました。
GMやフォードはメキシコで生産した自動車を北米で販売しています。今年1-7月のメキシコから北米への輸出比率はGMが7割、フォードが9割に達しています。
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関税は大統領選の期間中から大きな話題となりましたが、それが早くもクローズアップされています。トランプ政権で重要な役割を果たすと見られるイーロン・マスク氏のテスラも、発表直後は▲4%の値下がりとなりました。
関税とは別に、バイデン政権が導入したEV購入に対する7500ドルの税額控除が廃止される方向にあるとされ、政策の方向がまったく見えない状況です。
トヨタは次世代EVの生産開始時期の見直しを検討しています。これまでは2026年末から愛知県・田原工場で生産を開始する予定でしたが、これを2027年半ばまで遅らせます。
フォルクスワーゲンはドイツの3か所の工場を閉鎖するとしており、ステランティスも最大2万5000人の人員削減を検討しています。暗雲が立ち込める自動車業界全体にブレーキが強く踏み込まれている状況です。
株式市場は不透明な状況を嫌います。明確な方向性が定まるまでは
(後略)