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2024年6月18日

中央銀行ウィークが経過、日経平均は2週続けて下落

鈴木一之

鈴木一之です。6月も月半ばを迎えました。関東地方も梅雨入りが近づいていますが、気温は早くも30度を超える地域が増えています。

株式市場のボリュームが細っています。株価も徐々に上値の重さが意識されるようになってきました。

今年は世界中で選挙がたくさん実施される「選挙イヤー」とされています。最近の事例では南アフリカで絶対の与党が敗北し、インドではモディ首相率いる与党勝利ですが野党との差は大きく縮まりました。

先週は欧州議会選挙が実施され、ヨーロッパの多くの国で極右政党が躍進しました。その結果を受けてフランスではマクロン大統領が突如として下院に当たる国民議会の解散を表明しました。

初回投票は6月30日で、決選投票は7月7日です。パリ五輪の直前という祝賀ムードの慌ただしい時期ですが、そんなことはお構いなしに重要な下院選挙を断行するところに、フランス国民の生活を左右する政治は国家イベントよりも優先される、という考えに驚かされます。日本だったらオリンピックが優先されるでしょう。

この決定を受けて、フランスの株式市場は1週間で▲6.2%も下落しました。週間の下げ率としては2022年3月以来のことです。

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マーケットは「中央銀行ウィーク」と呼ばれた先週、米国とインドを除いて主要国の株式市場は軒並み軟調な展開となりました。日本もそうですが、米国のインフレと金融政策の行方に気を取られている隙に、世界中で景気の鈍化懸念が忍び寄っています。

まず米国。週の半ばにFOMCが開催されました。政策金利は予想通り7会合連続で据え置かれ、市場の関心は四半期ごとに公表される経済見通しに集中しました。

ドットチャートで示されるFOMCメンバーの年内の金利見通しは、予想の中央値が3か月前の「年3回」から「年1回」に引き下げられました。事前の予想は「年2回」の引き下げでしたので、FOMCメンバーは予想以上に物価上昇と金融政策の先行きをシビアに見ていることになります。

PCE(個人消費支出)物価指数の見通しも、2024年は2.4%から2.6%、2025年は2.2%から2.3%に引き上げられました。2%の物価目標からさらに遠ざかることになります。

FOMCの内容は市場予想以上にタカ派的なものでしたが、それでも結果が判明した6月12日の米国市場では、NYダウ工業は下落したものの、NASDAQとS&P500は大きく上昇して史上最高値を更新しました。

これはFOMCの結果というよりも、その日の朝に発表された米5月CPI(消費者物価指数)が前月比で2年ぶりに横ばいと、落ち着きを示したことが主因と見られます。足元の物価水準がどうであれ、いずれFRBは金融緩和に転じるとのシナリオは崩れておりません。それによってテクノロジーを中心に成長株に資金が向かいやすい流れが続いています。

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そのテクノロジー株を象徴したのがアップルです。史上最高値を更新し、時価総額はエヌビディアとマイクロソフトを抜いて再び世界最大となりました。

アップルは6月10日に恒例の年次開発者会議を開催し、そこで「アップル・インテリジェンス」を発表しました。「iPhone」などの主要なアップル製品に生成AIを搭載し、オープンAIの「ChatGPT」とも連携します。

今年の夏から米国を皮切りに「iPhone15Pro」や「Mac」で生成AIを使えるようにします。日本語への対応は2025年になるようです。スマホ市場で世界のトップシェアを持つ「iPhone」が生成AIを搭載すれば、消費者とAIがより身近になると期待されます。

アップルは生成AIという新たな潮流に乗り遅れたと見られていました。今回は満を持してその技術を全面的に取り入れる方針転換を打ち出しましたが、しかし実態はオープンAIの「ChatGPT」を丸飲みすることとなったわけです。

発表直後のアップルの株価は下落しましたが、それでも生成AIの分野に打って出たという事実は揺らぎません。週後半にかけて株価は盛り返し、大きく上昇して史上初めて200ドルの大台を突破しました。

NASDAQ、S&P500が高値を更新する一方で、キャタピラー、ナイキや金融、エネルギー株が含まれるNYダウ工業はもたついています。好調に見える米国市場ですが、一握りのテクノロジー株に勢いが集中しており、同時に景気後退懸念が台頭するという不安定な状況に直面しているようにも見えます。

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続いて週後半は日銀です。6月13-14日に金融政策決定会合が開催され、国債買い入れの減額が決定されました。

市場の一部で予想されていた「政策金利の引き上げ」は見送られましたが、それでも「国債買い入れの減額」という方針が決定しただけで週末の日本株は上昇し、為替市場では円安が進みました。

国債の買い入れをどの程度まで減額するのか、具体的な内容は7月30-31日に行われる次回の決定会合で発表されます。それまでに債券市場関係者と意見調整を重ねて、市場に影響を与えないように配慮することとされています。

それまでは従来通り、月間で6兆円規模の国債買い入れは続けられます。したがって7月会合のあとは日銀が保有する国債の残高は減少していくことになり、3月会合でのマイナス金利の解除に続いて、量的緩和の「量」の面においても金融の正常化に向けてさらに踏み出したことになります。

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昨年末の時点で、日銀が保有する国債残高は581兆円に達しています。これは10年前、異次元緩和が開始される前の6倍の規模です。国債の発行残高に占める割合は54%に達し、半分以上は日銀が保有していることになります。

日銀が国債の買い入れ額を減らす方針を示したことによって、長期金利には上昇圧力が強まることが予想されます。そうなれば日米金利差が縮小し、為替市場では円安圧力が低下することになります。週末の為替市場では円安が進行したのはこのような背景に基づいています。

日本も今回の決定によって、事実上の「量的引き締め」の局面に入るわけですが、植田総裁が記者会見で述べたように、国債保有額を理想とする水準に近づけるにはかなり長い時間を要すると見られます。その間に金融情勢がどのように変化するのか、予想するのはきわめて困難です。誰にもわかりません。

そのためにも「中長期的な時間軸でみて、市場での金利形成の自由度を高めていく」(植田総裁)ことが必要になります。7月の金融政策会合の内容を今から「予告」するという、今回のような異例の決定を含めて、植田体制の手腕が本格的に問われるところに差しかかっているようです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。下落率は▲0.31%にとどまり、前の週の▲0.63%とともに小さなものでした。FOMCと日銀会合という重要なスケジュールを控えて神経質な動きが見られました。

規模別では、大型株は▲0.58%と2週連続で下落しました。その一方で小型株は+1.56%と反発しています。金利水準を巡る議論に飽きてきたようで、少しずつですが個々の企業の物色や評価に視点が移りつつあります。

スタイル別では、それまで堅調だったバリュー株が続落し▲0.57%となりました。グロース株もマイナスですが▲0.02%の下げにとどまっています。

また小型株に関しては、バリュー株(+1.37%)、グロース株(+1.76%)ともに週間でプラスを維持しています。東証グロース250指数は+2.75%と3週連続で上昇しました。

騰落レシオは水曜日に102.97%まで上昇した後、週末は99.04%で引けました。上昇と下落の中間にいます。日経平均のサイコロジカルラインは「5」~「6」を繰り返し、週末は「6」の中立点で引けました。

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TOPIX-17業種のうち、値上がりセクターは8業種、値下がりセクターは9業種と分かれました。

値上がり上位のセクターは「エネルギー資源」、「機械」、「電機・精密」でした。

「エネルギー資源」ではENEOSホールディングス(5020)、出光興産(5019)、コスモエネルギーHD(5021)の石油元売りが総じて堅調です。高利回りのバリュー株に対する人気が再び高まりつつあるようです。

「機械」では、半導体関連のディスコ(6146)が史上最高値を更新して抜群の強さを示しました。マックス(6454)、島精機(6222)、ツガミ(6101)酉島製作所(6363)の堅調さも光ります。

「電機・精密」は、村田製作所(6981)、太陽誘電(6976)、TDK(6762)の電子部品株が引き続き底入れ感を強めています。アップルの「iPhone」が生成AIの搭載で話題を集めているように、スマホ関連の電子部品株が久しぶりに人気化しています。

機械セクターでは三菱重工業(7011)、電機セクターでは日立(6501)、NEC(6701)のような防衛関連株にも属する銘柄が軒並み高値を更新しています。経済安保、防衛軍事に関するニュースが連日大きく報じられていることが刺激材料となっています。

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反対に値下がりセクターの上位には「医薬品」、「運輸・物流」、「銀行」となりました。

「医薬品」はアステラス製薬(4503)、エーザイ(4523)、第一三共(4568)などの中心銘柄が軒並み軟化しました。第一三共は前週までの上昇の反動安、アステラス製薬とエーザイは軟調な地合いが継続と、それぞれ置かれている株価の位置が違いますが、それでも一様に下落しています。

値下がり第2位の「運輸・物流」では、電鉄株が下げ止まりません。JR3社をはじめ京浜急行(9006)、小田急(9007)、京王(9008)、名鉄(9048)がいずれも軟調です。

コロナが明けた経済活動の回復過程で急反発した電鉄株ですが、経済が正常化した後の成長戦略が描き切れないところが最大のネックとなっています。

昨年の日本の合計特殊出生率が1.20と、過去最低を更新したことも株価下落の遠い原因となっているように感じられます。食品株や小売・流通株のように、日本国内が厳しいのなら海外市場に活路を見い出すということも、電鉄株にはむずかしいようです。

値下がり第3位は「銀行」でした。6月に入って銀行株は総じて軟調です。金利上昇が好材料とされてきた分だけ、金利低下局面では売り先行となりやすい状況です。株価上昇が続いただけに、もうしばらくは下値模索が続きそうな雲行きです。

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株式市場は調整色を強めていますが、一方で実業界では動きがますます活発です。キリン(2503)がファンケルを買収し完全子会社とした上で、健康食品ビジネスを強化します。

ソニーグループ(6758)は

(後略)

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鈴木一之