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2022年12月13日
今年最後のFOMCを控えて強弱感が交錯、株価は週間では上昇
鈴木一之です。急に寒くなってまいりました。あと3週間で今年も幕を閉じます。年末が近づいている実感が募ります。
先週の株式市場もこう着感の強い展開となりました。日本以上に米国市場が神経質な動きを繰り返しています。
話題の中心は引き続き、FRBの金融政策です。いよいよ今年最後のFOMCが開催されます。振り返るまでもなく、2022年の金融市場は米国の金融政策の話題に終始していたように思います。
そのFOMCを巡って、10月末からここまではいわゆる「ハト派」的な、金融引き締めの手を緩めるムードに市場は包まれていました。11月30日に行われたパウエル議長の講演がそれを助長していました。
議長の講演内容には取り立てて目新しい内容はなかったとされていますが、それでもマーケットはかなり強引にハト派的な内容をつかみ取ろうと努力していたようなところがあります。
そのハト派的なニュアンスが否定されたのが、先週末に発表された11月の雇用統計、そしてISM・非製造業景況感指数での予想を上回る経済の好調な内容です。
11月の雇用統計では非農業雇用者数の伸びが26.3万人となり、事前予想の20万人を上回りました。それに続くISM・非製造業景況感指数も「56.5」と発表され、市場予想の53.7を上回る結果となりました。
月初のふたつの経済指標が立て続けに経済の強さを示す内容だったことで、金融市場に漂っていたハト派的なムードは急速に後退することとなりました。2023年も引き締め気味の金融政策は続き、簡単には緩和方向には向かわない、という見方が特に株式市場で強まりました。
これによってグロース株の代表であるテクノロジー株が軟化し、半導体のSOX指数やNASDAQ総合指数も軟調な動きに終始しました。
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しかしそれ以上にマーケットで強く意識されたのが、原油市況の動向です。WTI先物は1週間以上にわたって下落を続け、週末には1バレル=71.59ドルまで値下がりしました。今年の最安値を更新しています。
米国の長期金利も低下し、米10年国債金利は現地水曜日に3.42%まで下がりました。これによって為替市場ではドルの下落傾向が強まり、週初には1ドル=134円14銭までドル安・円高が進行しています。
これまでは「経済にとって悪いニュースは、マーケットにとって良いニュース」という理屈で動いてきました。強すぎる経済が金融政策の引き締めで抑制され、景気が悪化することでインフレは抑制され金利は低下するので株価は上昇する、という論理です。それが先週の雇用統計の前までの金融市場のコンセンサスとなっていました。
それが先週になって突如として変化しました。11月の雇用統計とISM・非製造業景況感指数で強めの経済データが示されたことで、「経済にとって悪いニュースは、マーケットにもストレートに悪いニュース」へと市場心理はがらりと変わったようです。同じ材料を良い方向で受け止めるか、悪い方向で受け止めるか、風向きの変化というしかありません。
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先週は米国の金融機関トップの発言が相次いでメディアを賑わせました。代表格はJPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモン氏です。
現地12月6日のCNBCのインタビューで「インフレが消費者の蓄えを食いつぶす。経済は失速し、コロナ対策の200兆円は来年中には底を突く」と米国経済に対してあらためて強い警鐘を鳴らしました。
ダイモンCEOは今年6月も「暴風雨がすぐそこまで来ている」とコメントを発して、市場の先行きに強い警戒感を示していました。半年が過ぎて年末にも同じようなコメントが発せられています。
ウォール街のもうひとりの重鎮、ゴールドマン・サックスCEOのデービッド・ソロモン氏も「これから波乱がやってくる」と先週のテレビインタビューで述べています。来年の見通しが語られるのは年末の風物詩です。果たして来年はそこまで厳しい景気後退の年となるのでしょうか。
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市場の見方は警戒的な方向に傾いていますが、そうならない可能性もあります。今年6月にダイモンCEOが「暴風雨がやってくる」という発言もあって、機関投資家はファンドのキャッシュ比率を歴史的な水準まで大幅に高めています。
株式などのリスクの大きな資産はすでに保有比率が減らされて、経済状況がここから厳しい局面になっても、少なくともファンドからの換金売りは限定されることになります。警鐘はそのためのものです。
相場見通しに長けた重要人物から、警戒的な発言が繰り返されることによって市場のガス抜きが図られており、マーケットは相当な下値不安までを織り込んでいる可能性があります。
実社会ではメタやアマゾン・ドットコム、ツイッターなど、大手IT企業の間で人員削減が相次いで発表されています。それでも米国の人手不足はなかなか解消しません。全米の失業率は3.7%と歴史的な低水準で貼りついたままの状態です。レイオフされた従業員もすぐに次の仕事を見つけることができます。
重ねて企業サイドでは、猛烈に勢いでデジタル投資が行われています。ダイモン氏のJPモルガン・チェースは人員の増強はさすがに控えていますが、デジタル領域の設備投資は空前の2兆円規模で継続的に実施されています。年度はじめに打ち出した年間の設備投資計画は少しも変わっておりません。
米国の景気は弱い部分と強い部分が入り組んでいます。メディアの伝える「景気の弱い部分」は、それまでの強すぎた部分が正常なレベルに修正されていることが多いように感じられます。
来年のマーケットはどこまで揺さぶられるのか。さまざまな見方が交錯しているせいか、上下の振幅が大きくなっています。それは事前のガス抜きがうまく機能している証拠でもあります。
ここまで警戒感が強いと上値も限定されてしまいますが、ガス抜きが進んでいるとしたら下値も意外と限定されているように思います。ファンドマネージャーにとって、この局面でのリスクはむしろアップサイドの変化です。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが反発しました。上昇率は+0.39%と非常に小さなものにとどまっています。前の週の下落率が▲3.17%とかなり大きくなったため、いったん下げ止まったという感触です。TOPIXが2000ポイントの大台に定着するための準備期間と考えることもできます。
プライム市場では大型株から小型株まで幅広く反発しましたが、目立っているのは大型株の切り返しです。それまで好調に値を戻していた新興市場では、東証マザーズ市場が2週続けて下落しました。
バリュー株とグロース株の対比では、バリュー株がしっかりしました。米国の長期金利は低下傾向にありますが、市場内ではハト派的な論調が減少したことから先週はバリュー株がグロース株以上に選好される傾向が見られました。
テクニカル面では、騰落レシオが11月末に120%の過熱ラインを5日間上回ったあと、先週末は100%の大台を一時下回りました。週末の値は104.40%です。日経平均のサイコロジカルラインはニュートラルの「6」から「5」に低下しています。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが14業種まで増加し、値下がりセクターは3業種にとどまりました。前の週の全業種が値下がりするという状況から一転して幅広いセクターが上昇しました。
値上がり上位のセクターは「鉄鋼・非鉄」、「商社・卸売」の景気敏感株と、「小売」セクターです。
中でも鉄鋼株と非鉄金属は週を通じて堅調な値動きとなりました。株式市場では来年に向けて景気の激しい後退局面が訪れると警戒されていますが、その真っただ中で景気動向に最も敏感なセクターが上昇力を強めています。これがマーケットの皮肉な側面です。
中国では厳しいゼロコロナ政策が市民の抗議運動によって、部分的ですが緩和される方向に向かっています。世界経済にとって中国経済がここで大きく減速するのは、考え得る限り最悪のシナリオです。
厳しい統制下の習近平体制ががらりと方針を変えると見る向きは少ないものの、異例の抗議活動に見られるように、あまりに厳しい強権発動は得策とはならないようです。中国経済がこれ以上落ち込まないのであれば、各国でEV生産が活発化している現状で、鋼材需要が盛り返してくることが十分に予想されます。
同時にトヨタ自動車を中心に、コロナで遅れた分を取り返す「挽回生産」も本格化していることが伝わってきます。それによって鋼材と非鉄金属の需要は高まれば、景気の後退もそれほどではないと確信することができるようになります。
「小売」セミナーの動きも今後の相場展開を考える上で重要です。先週は小売セクターの中でも様々なジャンルの銘柄が広範囲に物色されました。
リユース関連ではトレジャーファクトリー(3093)を筆頭にハードオフコーポ(2674)、ゲオHD(2681)、円高メリットのニトリHD(9843)、ABCマート(2670)、急に寒くなってきたので冬物衣料のファーストリテイリング(9983)、しまむら(8227)、良品計画(7453)が堅調です。
そして何よりも中国関連株、インバウンド関連株です。ビックカメラ(3048)、マツキヨココカラ(3088)、
(後略)