ブログ
2025年2月18日
反発はしたものの。。関税発動、米1月CPIでトランプ2.0の波紋が続く

鈴木一之です。どれほど多くのニュースが飛びかったことでしょう。
毎日のように世界を揺るがす重大ニュースが噴出しました。「トランプ2.0」が本格的に始動したことによって、政治と経済の土台が揺さぶられています。
DeepSeek(ディープシーク)ショックも日米首脳会談も、はるか昔の出来事のように思い出されます。このような状況が日常になったことに慣れるしかありません。
その中で日経平均は、週前半に3日上昇して週末の1日下げる堅調な値動きでした。新興市場を中心に小型株の復調が目立っています。
@@@@@
週明けの月曜日はまだ安定した状況でした。前週末に開催された日米首脳会談において、トランプ大統領との初の会談を成功させた石破首相は、日本経済新聞のインタビューに答えて、日本製鉄によるUSスチールの買収は「買収ではなく投資である」と繰り返しました。
首脳会談の前に日本製鉄の首脳と面会して、こうした内容を擦り合わせていたことも明らかにしました。日本製鉄の橋本CEOが近く米国を訪問してトランプ大統領と会うことになります。
波乱はその直後に始まりました。米国はすべての国・地域に対して、米国が輸入する鉄鋼とアルミ製品に対して25%の関税を課すことを明らかにしました。
トランプ大統領が2月10日(月)に、すべての鉄鋼・アルミニウム製品の輸入に対して25%の関税を適用する大統領令に署名しました。3月12日午前0時1分から全面的に適用されます。
さらにトランプ大統領は、自動車・半導体・医薬品に対して追加の関税を検討することも明らかにしました。具体的な品目や日程が明らかにされたのは初めてのことです。対象国には当然、日本も含まれ、ここからマーケットの雰囲気が大きく変わりました。
@@@@@
関税は世界経済を下押しするリスクがあります。前回「トランプ1.0」の時も2018年3月に鉄鋼とアルミ製品に対して関税を発動しました。この時は米国の鉄鋼製品の輸入が24%減少して、米国で流通価格は+2.4%押し上げられました。
今回も関税分が米国での販売価格に転嫁されればインフレが再燃する恐れがあります。2月11日(火)にFRBのパウエル議長は議会で証言し、「利下げを急ぐ理由は見当たらない」と述べました。インフレは鈍化しつつありますが「依然としてやや高止まりしている」との見方に立っています。
マーケットは元々、今年は2回利下げが実施されると読んでいましたが、この証言によって少なくとも3月会合での利下げはなくなったとの見方が強くなっています。
@@@@@
2月12日(水)には1月のCPIが総合指数で前年比+3.0%と発表され、事前の市場予想を上回る結果となったことからドル円相場は154円台後半までドルが下落しました。2円以上のドル高・円安となっています。
先物市場の動きから見た「フェドウオッチツール」では、次回の利下げはそれまでの「6月」から、CPI発表後は「9月」と「10月」が拮抗するようになっています。それどころか年内は利下げはない、との見方も徐々に強まっています。
@@@@@
さらにトランプ大統領は2月12日(水)にウクライナ侵略に関して、ロシアのプーチン大統領と電話で協議したことを明らかにしました。ウクライナとの戦争を直ちに終結させるための交渉が始まります。
トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領とも協議した模様ですが、ロシアとの停戦交渉は米ロ間だけで行われるようです。現時点ではそこにはウクライナは加わっておりません。
停戦の条件としての国境線の確定は、ロシアの要望が全面的に採用されることになります。これはウクライナ側は決して受け入れられないものです。停戦交渉の第一歩が始まったばかりですが決着はまるで見えない状況です。
@@@@@
日本ではホンダと日産自動車との経営統合が正式に破談となりました。両社が取締役会を開き正式に決議した結果です。三菱自動車も提携協議を打ち切りました。
対等の形での持株会社を設立する構想、一方が他方の子会社となる統合形式、様々な憶測が飛び交いましたが、世界第3位の自動車メーカーが誕生する構想はこれで立ち消えとなりました。今後、日産は独力で経営改革を進めなくてはなりません。
先週、日産自が発表した第3四半期の決算では、2025年3月期の通期見通しとして最終赤字が▲800億円になる模様です。1000億円の構造改革費用を計上することが主な要因ですが、果たしてこれで済むのでしょうか。
現在のところでは、2024年11月に生産能力を2割(100万台)縮小させ、9000人の人員削減を予定しています。向こう2年間で固定費を年3000億円以上、変動費を1000億円減らす計画ですが、今の不振は売れ筋のクルマを生み出せないところから始まっています。
来期以降も追加のリストラ費用を計上する恐れが残っています。日産自にとって時間との闘いが始まりました。
@@@@@
@@@@@
先週の東京株式市場は、TOPIXは反発しました。ただし上昇率は+0.80%にとどまり、前週の▲1.84%の下落を挽回するには至りませんでした。日経平均は軟調でNT倍率は低い水準にとどまっています。
規模別では、大型株指数が+0.82%、中型株指数が+0.77%、小型株指数が+0.76%と、バランスよくすべての指数が反発しました。東証グロース株250指数は+0.73%の上昇で4週連続のプラスを維持しています。
スタイル別の株価指数では、大型バリュー株が+0.94%に対して大型グロース株は+0.67%となり、バリュー株がやや優勢でした。小型グロース株は+0.56%の反発にとどまっています。
騰落レシオは3日続けて100%超を維持しています。日経平均のサイコロジカルラインは「9」まで上昇しました。昨年12月13日以来のことです。
@@@@@
TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが12業種に広がり、反対に値下がりセクターは5業種にとどまりました。
値上がりセクターの上位は「資源エネルギー」、「電機・精密」、「銀行」です。マイナスセクターの上位は「商社・卸売」、「医薬品」、「食品」でした。
値上がりトップの「資源エネルギー」は、決算発表を好感してINPEX(1605)、ENEOSホールディングス(5020))が堅調でした。
「電機・精密」には物色が広がっています。
人気の中心である半導体セクターの動きは鈍いものの、日立(6501)が史上最高値を更新したのに続いて、決算好調をきっかけにソニーグループ(6758)、パナソニックHD(6752)、シャープ(6753)など、往年のエレクロニクスの中心的な銘柄がそろい踏みで大きく上昇しました。
同じく京セラ(6971)、太陽誘電(6976)、村田製作所(6981)、アンリツ(6754)、ホシデン(6804)、ニチコン(6996)の電子部品、計測器メーカーが軒並み高となって株価指数を押し上げています。
エレクロニクス株がここまで全般的に幅広く物色されることは本当に久しぶりのことです。PC、スマホの在庫調整が一巡しつつある感触が今回の決算発表でもあちこちから伝わってきます。
値上がり第3位の「銀行」もメガバンク3行を中心に、しずおかFG(5831)、楽天銀行(5838)、あいちFG(7389)、山形銀行(8344)、岩手銀行(8343)、百五銀行(8368)が幅広く物色されています。
@@@@@
反対に値下がりセクターのトップとなった「商社・卸売」では、伊藤忠(8001)、三井物産(8031)の総合商社、長瀬産業(8012)、稲畑産業(8098)の専門商社が軟調でした。トランプ関税の影響を見極めたいという世界経済全体の動きが反映されているように見えます。
値下がり第2位の「医薬品」、第3位の「食品」は決算発表で下落する銘柄が目立ちました。薬品では大塚ホールディングス(4578)、第一三共(4568)、ロート製薬(4527)が軟調です。
「食品」でも日清食品ホールディングス(2897)、
(後略)
