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2024年12月31日
受渡ベースで1月相場入り、日経平均は終値で4万円の大台乗せ
鈴木一之です。先週は筆者体調不良で更新できずたいへん失礼いたしました。年末年始の心華やぐ時期、皆さまもご健康にはくれぐれもご注意ください。
寝込んでいる間にマーケットは大きく動きました。受渡ベースで1月相場入りとなった12月27日(金)に日経平均は大幅に続伸。4万円の大台をあっさりと更新しました。
注目すべきは物色の内容です。トヨタ自動車(7203)の+6%近い値上がりをはじめ、IHI(7013)、川重(7012)、ソニーグループ(6758)、日立(6501)、フジクラ(5803)、日本郵船(9101)、サンリオ(8136)など、2024年の株式市場を彩る主力銘柄が軒並み上昇に寄与するという堂々たる値動きでした。
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この時期は欧米の投資家はすでにクリスマス休暇で年内の運用は終了しているとされます。売買代金は目に見えて細っており、世間的には年末年始の9連休を控えて「もう年内はお休み」という閑散モードに入っているタイミングでもありました。
同時に日本の個人投資家も年間のキャピタルゲイン課税の関係から、損益通算のための売りが中心で大きな動きが出にくいと見られていました。
それが一気に日経平均で4万円乗せです。NISA資金が早くも動き出しているとも見られますが、それにしても意外性の強い2024年相場は最後の最後まで意外感に包まれた展開となりました。
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物色のきっかけは様々ですが、直接の要因としてはやはりトヨタ自動車(7203)の「ROE革命宣言」があるように思います。
12月26日付の日本経済新聞1面に報じられた記事では、トヨタ自動車は現在11%のROE(自己資本利益率)を将来的に20%台に引き上げる計画です。
達成時期は会社側は明らかにしていませんが、2030年ごろを視野に入れています。
トヨタと言えばすぐに「カンパン方式」、「ジャスト・イン・タイム」という言葉が思い出されるように、原価低減のために在庫を徹底して管理する経営スタンスが有名です。
しかしコロナ過で世界中の物流網が混乱した時に、お家芸の在庫管理の手法はほとんど機能しませんでした。トヨタに限らず世界中のあらゆるメーカーが、生産も在庫管理も思うにまかせず、それまでの鉄壁の生産管理システムが宙に浮いたまま、手をこまねいたまま傍観しているだけという状況に陥ったのです。
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トヨタの「カンバン方式」と並んで有名なのが、全社挙げての「QC活動」です。
QC活動とは、職場単位でチームを組んで、職場の身の回りの問題点ひとつひとつに対して自主的に改善を徹底してゆく運動です。下から上まで徹底してQC活動に取り組む原価低減策は1960年代から始められ、「カンパン方式」と並んでトヨタの現場の強さとされています。
「乾いたぞうきんをさらに絞る」と表現されるほどの徹底したコスト削減によって生産システムを常時見直し、そこに新車開発能力が加わってトヨタは世界トップの自動車メーカーにのぼりつめました。経営効率はすでに限界線に近いところまで高められています。
そのトヨタが将来にわたって、今よりも+10ポイント以上もROEを高めるという目標を掲げたのです。利益率の改善は口で言うほど簡単なことではなく、その意味するところはビジネスモデルの大幅な転換を示しています。
ROEが20%に乗せた5年後のトヨタは、現在とはまったく違う姿になっていることでしょう。その評価がトヨタ株を連日のように大きく突き上げています。
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トヨタの今回の大変革宣言を引っ張りだしたのは、トヨタの力だけではないように思います。トランプ政権の誕生、EVの失速、中国勢の台頭、VWの苦境、自動車業界を取り巻く様々な要因が動き始めています。
思うに、ソニーグループ(6758)の株価が25年ぶりに史上最高値を更新したこともきっかけのひとつになっているように思えてきます。
ソニーグループの最高値更新も、任天堂(7974)の高値更新によって導かれたところがあります。さらにその任天堂の高値更新も、サンリオ(8136)の2度の上方修正と株価高騰が引っ張り出しているはずです。
ホンダ(7267)と日産自動車(7201)、三菱自動車(7211)の経営統合もあります。日本の産業史に間違いなく記録される今回の再編劇に際して、トヨタなりのひとつの回答がROE20%宣言なのではないでしょうか。
EV普及によって「自動車のコモディティ化」が目前に迫っています。自動運転はハードルが高すぎますが、日本経済の屋台骨を支える自動車業界は自らの変革の手を緩めるわけにはいきません。
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他業界を見回しても、フジクラ(5803)の刮目すべき株価および収益の変貌をはじめ、三菱重工(7011)の株価が1年間で3倍近くになるような防衛関連株の勢い、セブン&アイHD(3382)に対する海外企業からの買収提案、ビットコインの10万ドル乗せなど、2024年は社会のあらゆる方面で大きな変化が見られました。
年の瀬には1年の最後になって、ニデック(6594)が牧野フライス製作所(6135)に対して同意なきTOBを実施することも明らかになりました。
現存する日本企業の中でも最高峰の買収巧者とされるニデックが、それほどまで急いで傘下に収めようとする牧野フライス製作所という企業は、企業独自がもつ特別な資質なのか、あるいは日本経済を取り巻く経営環境そのものが変化しているのか。おそらくその両方の要因があると考えられます。
もたもたしていると有望な企業はことごとく外資系企業の手に落ちてしまう、という危機感すら感じさせるような事例です。来たる2025年はこれまで見たこともないほどまでに、企業の資本政策が問われる年になるような予感があります。
日本の事業会社にもいよいよ大きな変革の波が及んできたと見るべきでしょう。変化を怠ることはもはや許されません。そのポテンシャルが日経平均を4万円乗せに突き動かしたと見ることは早計でしょうか。
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先週の株式市場。TOPIXは2週ぶりに上昇しました。上昇率は+3.69%にも達し、前週の▲1.62%から大幅に改善しました。11月第1週の+3.70%以来の上昇率です。
物色の中心は大型株です。大型株指数は+4.19%に達し、中型株の+2.73%、小型株の+2.50%を大きく上回りました。
スタイル別の株価指数でも、大型バリュー株が+4.13%の上昇と大きく値上がりしました。小型グロース株は+1.89%の上昇にとどまりましたが、それでもまずまずの上昇です。東証グロース市場250指数は+3.19%の上昇と健闘が目立ちました。
騰落レシオは週末にかけて上昇し108.56で引けました。日経平均は4万円の大台に乗せましたが、日経平均のサイコロジカルラインは「5」の低水準にとどまっています。
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TOPIX-17業種の騰落では、すべてのセクターが上昇しました。
その中で上昇率のトップは「自動車・輸送機」でした。4週連続して値上がりトップ5にランクインしています。
日産自とホンダの経営統合が正式に発表され、特に日産自の株価が急騰しています。さらにホンダも1兆円を越える自社株買いを発表したことが好感されました。
マツダ(7261)、スバル(7270)、日野自(7205)が連日のように上昇しており、トヨタ自動車も株価が急騰しています。東海理化(6995)、アイシン(7259)、豊田通商(8015)、豊田自動織機(6201)などのトヨタグループ各社も軒並み高となりました。
値上がり第2位のセクターは「電力・ガス」でした。今年前半に大きく買われた電力株はその後半年間をかけて下落基調にありましたが、中部電力(9502)、関西電力(9503)、四国電力(9507)、北海道電力(9509)など、軟調だった銘柄が一斉に反発しています。年末要因も大きいように見られます。
値上がり第3位は「商社、卸売」でした。これも三井物産(8031)、伊藤忠(8001)、丸紅(8002)などの総合商社のように、年後半はさえない動きに終始した銘柄が年末に一斉に上昇しています。半導体商社、化学商社、機械商社などの専門商社の上昇も目立っています。
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反対に値上がりセクターの中でも上昇の鈍かった業種は、「食品」、「運輸・物流」、「医薬品」でした。
ディフェンシブ性の強い食品、医薬品は、全面的に反転する局面ではどうしても動きが鈍くなります。JT(2914)、山崎製パン(2212)のように12月決算の権利落ちの影響もあったように見られます。
武田薬品工業(4502)、
(後略)