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2021年10月4日

岸田文雄氏が自民党の新総裁に選出、しかし日経平均は5日続落

鈴木一之

◎日経平均 (1日大引):28,771.07(▲681.59、▲2.31%)
◎NYダウ(1日終値):34,326.46(+482.54、+1.42%)

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鈴木一之です。10月に入ったものの真夏のような暑さが残っています。しばらくは天気予報から目が離せません。

先週の東京株式市場は、月曜日から金曜日までずっと株価は下げ続けました。週間の下落率は▲5%に達し、今年最大の下げを記録しています。

9月半ばから先週末まで、経済環境や外部の政治状況を含めて、いったいどれくらいの変化が襲ってきたことでしょう。次から次へと新しい状況の変化がやってきて目が回るほどです。

それらのうちでどれが、どれくらい株式市場に悪影響を及ぼしているのか、明確に指摘することがむずかしくなっています。この1週間ちょっとの間に起こった変化を好材料、悪材料あわせて思いつくままに挙げてみます。

(1)中国、恒大グループのデフォルト懸念
(2)米国、長期金利が急上昇、半月で1.30%から1.54%へ
(3)米国、連邦政府の債務上限問題、米国政府のデフォルトリスク

(4)欧州、物価上昇が鮮明、ガソリン・燃料不足が深刻でLNG価格が急騰
(5)中国、9月製造業PMIが1年7か月ぶりに分岐点の「50」割れ
(6)日本、8月鉱工業生産が2か月連続で低下、半導体不足が経済全体に影響

(7)日本、自民党総裁選、岸田文雄氏が新総裁に選出、岸田派は主要ポストゼロ
(8)日本、10月1日より緊急事態宣言を解除、経済再開に期待
(9)日本。10月日銀短観、5四半期連続で改善、ただし先行きは慎重

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小さな変化を加えればもっと挙げることができそうですが、主だったものはこれくらいです。上記のそれぞれの項目にさらに派生するニュースが山ほどついてきます。

(8)で取り上げたように、日本は7月から続いていた緊急事態宣言を解除しました。コロナウイルスの感染者が急速に減少しています。

専門家の間でもなぜ今、感染者数が減少しているのかよくわからないそうです。ワクチン接種率の上昇か、外出自粛の恩恵か、日本だけでなく世界中が一斉に新規の感染者数が減っています。

日本でもさっそく経済再開が図られました。皮肉なことに、菅首相が退陣を余儀なくされたのは、コロナ対策がめぼしい効果をあげられなかったためでした。それが総裁任期が切れる直前になって感染者の数が減り始め、退任する菅首相が緊急事態の解除を宣言することになりました。

いずれにしてもこれで10月1日より、晴れて旅行や外出、イベント、休業要請などコロナ自粛に関わる規制の大半が緩和されます。この週末は各地の繁華街が大勢の人出で久しぶりににぎわいを取り戻しています。

経済再開はもちろん願ってもないことですが、しかしそれと同時に、経済の活性化が産業界の供給制約に拍車をかけていることも事実です。

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半導体不足はますます長期化する見通しとなり、自動車メーカーの生産ダウンが続いています。ドライバー不足でトラック輸送が滞り、イギリスではガソリンスタンドでガソリンが枯渇して長蛇の列が出き、軍隊が出動して物流の目詰まりを解こうとしています。欧州では冬場を前にしてエネルギー価格の高騰が深刻さを増しています。

前週の米FOMCにおいて、パウエル議長は「インフレは一時的」との従来の見方を若干修正せざるを得ませんでした。物価上昇の長期化を半ば認めるようなスタンスに転じ、それが金利上昇のひとつの原因となったようです。

市場の関心は中国の恒大グループのデフォルト問題に集中していたため、9月のFOMCは意外にもノーマークに近い状態でした。しかし9月23日を境にそれまで無風だった米国の長期金利は上昇に火がつきました。

米10年国債金利は9月22日の終値、1.30%からあっという間に1.54%まで上昇しました。「FOMCショック」で世界中のマーケットが急落した6月半ば以来、3か月ぶりの高い水準です。今回はここに米国政府の債務上限問題が重なっています。

イエレン財務長官は9月30日、議会が政府の債務上限規制を引き上げるか、あるいはいったん凍結しなければ、10月18日以降は政府の資金繰りが行き詰まると発言して、米国債のデフォルトリスクが浮き彫りにされました。

米国の株式市場も軟調な展開を続けています。9月は下落しやすい独特の季節性を米国市場は備えています。今年はそこに金利上昇と政府債務リスクが重なっているため、NYダウ工業株は1週間のうちに▲500ドル以上の下落を2度も繰り返しました。

金曜日(10月1日)はISM製造業・景況感指数が予想を上回る好調(61.1、前月比+1.2、予想は59.5)を示したため、+482ドルと大きく反発しましたが、まだ不安は残っています。10月半ばからは主要企業の決算発表が始まります。引き続き米国市場は、月間ベースでは不安定な時期にあるため警戒は怠れません。

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海外市場の動向も気になりますが、それ以上に不安感を誘っているのが国内の動きです。日本もマクロ経済は弱い状態で、8月の鉱工業生産は2か月連続で低下しました(前月比▲3.2%、自動車、電機機器、建設機械などが弱い)。

半導体不足の影響が自動車メーカーだけでなく、それに関連する産業界のあらゆる分野に及び始めているようです。

そしてさらに陰鬱なムードを醸し出しているのが政治の状況です。自民党総裁選がようやく終了しました。8月22日の横浜市長選の投開票からこちら、1か月以上にわたって日本のメディア報道を独占してきた自民党総裁選は、岸田文雄氏が新総裁に選出されて決着が着きました。

菅首相では衆院選は戦えない、とメディアを通じて露骨な「菅おろし」を経た上で実施された総裁選は、岸田氏が逆転勝利を収めたものの、ふたを開けてみれば、実体は安倍政権がそのまま続いているような状態です。

岸田総裁を後押しした岸田派は党4役にひとりも入れず、側近を副幹事長に据えるのがやっとの状態です。財務・外務・防衛など重要閣僚はことごとく他派閥に割り振られました。閣僚人事そのものも決定が大きく遅れています。

これでは菅政権とまったく同じで、「安倍晋三氏だけがいない安倍政権」そのままです。それが判明し始めた金曜日の株式市場は、日経平均が▲681円も大きく値下がりして、29,000円の大台をあっさりと割り込みました。何の抵抗もなく、菅首相が総裁選への不出馬を伝えた9月3日以前の水準に戻ってしまいました。

野党ならずとも「変わると言って何も変わらない自民党、そして日本」と受け取られても仕方ありません。岸田新総裁の唱える「新自由主義からの転換」が果たしてどこまで実現できるのか、そもそも分配を重視するという基本姿勢は正しいのか、どこまで市場で評価されるのか、いずれにしても週明けからの評価がひとまず重要です。ここからすべてが始まります。

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全体の動きに戻って、先週までに明らかとなった数少ない好材料では、10月1日より緊急事態宣言が全国的に解除されて、人の流れが戻ってきたことがあります。そして10月の日銀短観において、大企業・製造業の業況判断が5四半期続けて改善したことです。

短観で見られたように、企業サイドは先行きに対して慎重姿勢を崩していません。それでも経済再開の動きがここから徐々に広がってゆくのであれば、少しずつ前向きの動きも広がってくることでしょう。それほどまでに日本経済の現状は、庶民感情としては落ちるところまで落ち込んで、閉塞感の強い日常を余儀なくされています。

おそらくここにも平均的な階層の日本人と、高所得層の日本人との間で開きがあることでしょう。トップレベルをさらに上げるとともに、平均あるいはそれ以下の水準を引き上げることが求められることになると思えてなりません。

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先週の東京株式市場は、TOPIXは2週続けて下落しました。下落率が▲5%を超えて週間ベースでは今年最大の下げとなっています。

規模別では大型株も小型株も下げましたが、小型株の下げがより大きかった週となりました。東証マザーズ市場は3週連続の下げで、下げ幅は徐々に縮まっています。東証REIT指数は5週連続の値下がりで大幅安となりました。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは「エネルギー資源」の1業種のみ、それ以外の16業種がすべて値下がりしました。

値上がりの目立った「エネルギー資源」ですが、INPEX(1605)、石油資源開発(1662)をはじめ「鉱業」は、上昇というよりも高値保ち合いの週でした。

値下がりしましたが、下げの小さかったセクターは「小売」と「食品」が堅調でした。緊急事態宣言の解除によって恩恵を受ける外食、アパレル、百貨店を中心に小売セクターは株価が急騰する銘柄も見られました。

反対にヒマラヤ(7514)、スギHD(7649)、

(後略)

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鈴木一之