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2023年11月27日

感謝祭ウィーク、日経平均は年初来の高値を一時更

鈴木一之

鈴木一之です。あちらこちらからクリスマスソングが聞こえてくる季節となりました。今週末には早や12月です。

年末の風景はどこかしら気ぜわしいものですが、いくつになっても心が踊ります。書店には手帳やカレンダー売り場がスペースを広げ、それを眺めるのも楽しいものです。

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先週は週明け早々の月曜日に日経平均が年初来高値を更新しました。週明けの寄り付き直後から株価が大きく上昇し、そのまま高値更新となりました。今年の流行語でもある「33年ぶり」の高値を再び取っています。

ただしそれはザラ場中だけに終わり、大引けでは軟化しました。「高値を更新」と堂々と宣言できるものではありません。TOPIXはそれほどまでの高みには達していません。

週明けの日経平均がした直後、急速に伸び悩んだ理由のひとつとして為替市場での円高への進行があります。

11月21日(火)に外国為替市場では、円が対ドルで急伸して1ドル=147円15銭まで入りました。10月3日以来の円高ドル安の水準です。

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10月3日と言えば、9月中旬の米FOMCの直後、来年の政策金利の水準を引き上げたすぐあとです。米国の長期金利が5%に向かって急伸する過程で、世界中でリスク資産から資金が引き上げられつつあったころの水準です。

今のところ、米国と日本の金融政策を巡る新しい話題や材料が出ているわけではありません。むしろ何も目新しい材料はなく、それでも円高方向に反転しています。それがかえって不気味と言えるようで、不安定なままの株価上昇、下落となりました。

思うに、これまで「米国の金利上昇、日本の金利据え置き」の大前提で積み上げてきたポジションが行き着くところまで到達して、感謝祭やクリスマスを控えてそれらが徐々に解消される方向に向かっていると想像されます。

今回の円安過程では、いつ来るかと身構えていた日本の政府・通貨当局による為替介入はないまま、1ドル=150円を越える円安・ドル高が反転に向かう可能性が高くなっています。今はまだ見えていない材料やアクションがこの先に出てくる可能性もあります。

年末モードですべてがいったん手仕舞い、相場の方向反転に向かっているように見られます。そういう思惑だけで動きやすくなっているのが現在のマーケットの特徴と言えそうです。

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米国では例年、感謝祭明けの「ブラックフライデー」が注目されます。クリスマス商戦のスタートと目され、小売店各社が軒並み黒字を計上することから「ブラック」と形容されています。

日本でも言葉だけは広がりつつあり、大手コンビニでは「ブラックフライデー」の「フライ」の部分を強調して、鳥のから揚げ販促キャンペーンを展開しています。

インフレの影響により、さすがの米国の個人消費も今年は苦戦すると見られているようですが、株価の好調さも加わってどこまで伸びるかが注目されています。

しかしそれを除くと、先週は大きな手がかり材料の乏しい週でした。それだけに市場の関心は、エヌビディアの決算に集中していたところがあります。

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11月21日(火)に発表されたエヌビディアの8-10月期の決算は、売上高が前年比3倍の181億ドル、純利益は14倍の92億ドルとなりました。どちらも史上最高を大幅に更新しており、事前の市場予想(売上高で160億ドル強)も大きく上回っています。

続く11-1月期の会社側見通しも、売上高で200億ドルを超えるとしています。生成AI関連株の中核で、世界中が注目する企業だけのことはあります。強烈な事前の予想をさらに上回る驚くべき高成長ですが、しかしこの決算を発表した直後のエヌビディアの株価はアフターマーケットで▲2%も下落しました。短縮取引もありますが、その後もさえない展開です。

2023年を象徴するトップ企業であるエヌビディアの驚くべき好決算は、目下のところは新たな株価の上昇にはつながっていないようです。そのような現状を踏まえた上で、今後の生成AIブームの行方、日米の企業業績、テクノロジー企業の先行き、相場の方向性を見定めてゆくことになります。

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生成AIに関して先週はもうひとつ、大きなニュースがありました。

ブームの震源地であるオープンAI社の経営を巡って、CEOのサム・アルトマン氏が取締役会の意向で電撃的に解任された一件です。これもマーケットを驚かせました。

それから1週間のうちにどれほどの変化が起きたでしょうか。アルトマン氏は出資元であるマイクロソフトに入社することになり、さらに元のオープンAIのCEOに返り咲くことで決着したようです。

報道ベースでしか把握できませんが、アルトマン氏の解任によってオープンAIのほとんどの技術者が退社する意向を示し、組織が内部崩壊する危機に追い込まれた模様です。

今回の件であらためて、世界中でブームを引き起こしているテクノロジーの最先端と言えども(だからこそ)競争は激烈であること、組織の運営にとって取締役会の力は絶大であること、その絶大であるはずの取締役会でさえ、組織の運営では優秀な人材確保を最優先しなければならないこと、などがあらためて浮かび上がりました。

今回の件ではサム・アルトマン氏の個人的な力量が、世界に対して明確に示されたことが強く印象に残りました。デジタル全盛の時代でも(だからこそ)個人の人間的な能力や魅力が問われることになります。

好決算にもかかわらずエヌビディアの株価が今ひとつである理由が、オープンAIの出来事とどこかでつながっているのか、今後の展開において探してゆきたいものです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが4週ぶりに反落しました。反落といっても週間の下落率は▲0.005%と非常に小さなマイナスにとどまっています。前週に+4.73%も大幅に上昇している反動がわずかに見られます。

規模別では、大型株指数のみ下落しており(▲0.23%)、中型株、小型株は上昇しています。業種を飛び越えて好業績銘柄を幅広く物色する動きが続いています。

スタイル別には、引き続きグロース株は上昇し、バリュー株が一服しました。ここでも大型バリュー株だけが値下がりしており、小型バリュー株、小型グロース株はプラスを維持しています。

騰落レシオは11月21日に112.52%まで上昇した後、週末には109.97%で引けました。4日連続で100%を上回っています。日経平均のサイコロジカルラインは週末は「7」の中立的な位置で終わりました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は、11業種が値上がりし、6業種が値下がりしました。

値上がり上位のセクターは「金融(銀行除く)」、「医薬品」、「情報通信・サービス」となりました。

「金融」では東京海上HD(8766)が大規模な自社株買いを発表し、週初に株価が急騰した影響が見られます。他の損保株やノンバンクも堅調でした。バリュー株が総じて下落した2週間前の下げ分をほぼ取り戻しています。

「医薬品」では中外製薬(4519)、小野薬品工業(4528)、大塚HD(4578)の好業績銘柄の上昇が目立ちました。

同じく「情報通信・サービス」でもブレインバッド(3655)、ラクス(3923)、フューチャー(4722)などの小型のシステム会社が堅調です。いずれも好決算を発表したところから株価が大きく水準訂正を続けています。

反対に値下がりセクターの上位には「自動車・輸送機」、「商社・卸売」、「電力・ガス」が登場しました。

自動車各社は週初の円高への反転を機に、トヨタ自動車(7203)、スバル(7270)を中心として自動車株が軟調でした。ただし週末にかけてそれらの銘柄は、週初の下げ分をほとんど取り戻しています。

「商社・卸売」でも総合商社大手の下げが目立つ程度で、マクニカ(3132)、東京エレクトロンデバイス(2760)、丸文(7537)などの半導体商社は、引き続き高値更新まで買い進まれる銘柄が見られました。景気敏感株の一角はいずれも堅調に推移しています。

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今年はクリスマスラリーに期待できるのでしょうか。カギを握るのは日米企業の決算内容です。それに関しては日米ともに良好です。

3月決算企業の中間決算の発表から2週間が経過し、内容の集計がほぼ固まりました。東証プライム市場に上場する3月決算企業の多くが増益、ないしは最高益を更新しています。

日本経済新聞のまとめでは、2023年4-9月期は日経平均・36業種のうちの20業種で「増益、または黒字転換」が達成されたようです。

内訳は。製造業が+12%増益、非製造業が+8%増益です。製造業は自動車、機械、非製造業では電鉄、ホテル、空運が牽引しています。いずれもコロナ禍でダメージの大きかった産業で、それらが急速に利益回復に向かっています。

加えて円安メリットも大きく、インバウンド需要の回復も大きな恩恵をもたらしています。反対に電気機器は▲14%の減益、化学も▲28%減益とさえない結果となりました。

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米国では主要500社の7-9月期の企業の9割強が決算発表を終え、

(後略)

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鈴木一之