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2024年4月9日
新年度第1週は週を通じて軟調、グロース250指数は年初来安値を更新
関東地方より西の地域では桜の花が咲き誇っています。2024年度の相場がスタートしました。春の訪れとともに株価一段高への期待も膨らみます。
期待満載ですが、一方的な楽観も許されません。4月第1週の株式市場は軟調な展開となりました。日経平均は大きく下落し、週足では2週連続の陰線を記録しました。
日経平均の週間下落幅は▲1377円に達し、値下がり幅としては2022年6月第3週の▲1861円以来の大きさです。その時の日経平均の水準は25,000円台なので、パーセンテージで示される下落割合としては今回の下げはまだ軽微なものと言えます。
TOPIXは年明け後の相場では初めて2週連続で下落しました。東証グロース250指数(旧・東証マザーズ指数)は年初来安値を更新しています。
新しい年度が始まってすぐという時期は、機関投資家が売りから入ると言われています。今回の下げもいつものシーズナルな需給関係で説明できる範囲なのか、それとは別に短期的なテクニカル調整の局面を迎えているのか。
あるいはもっと別の理由で、新たな下げ局面に入ったことを示しているのか。むずかしいのですがその区別が問われるところです。
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新年度入りらしく、わずか1週間のうちにきわめて多くの材料が各方面から噴出し実に内容の濃い1週間でした。
国際政治上ではイスラエルがシリアのイラン大使館を空爆するという緊迫度の高いニュースから始まりました。イスラエルとパレスチナとの地域紛争が中東全域に拡大する恐れが出ており、中東情勢は新しい局面を迎えています。
イスラエル政府は公式にはこの報道を否定していますが、イランが報復措置に出ることは必至と見られています。イスラエルは報復を恐れて世界各地のイスラエル大使館を一時閉鎖したと伝えられました。
これに伴って原油価格が急騰しています。ニューヨークのWTI先物はすかさず85ドル台まで上昇しました。欧州の北海ブレント原油も週半ばに90ドル台に乗せています。どちらも年明けからの最高値を取っており、昨年10月以来の高水準です。
昨年10月といえば、世界中が最もインフレの高進を警戒した時期です。米国の10年国債金利はその時、4.98%まで上昇していました。現在は4.35%の水準にありますが、長期金利は一段と上昇し始めています。世界は再びインフレリスクを強く意識せざるを得ない状況にあります。
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金価格は引き続き上昇し、今週も史上最高値を更新しました。ロンドンでは1トロイオンス2300ドルを超え、国内でも金の地金が最高値となっています。
新興国の中央銀行による現物買い需要が強いところへ、インフレヘッジの買いが加わり、そこに改めて「有事の金買い」の材料が加わりました。金はあらゆる思惑を秘めながら静かに上昇を続けています。本来はドル高、金利上昇の局面では金は買われにくいものですが、そのような常識的な判断を飛び越えてしまうほど、インフレや世界の有事に対する警戒感が感じられます。
国際商品市況の中では最も値動きが鈍いと見られているパーム油までが上昇しています。パーム油は揚げ油や洗剤の原料に使われます。そのパーム油が4月は前月比+4.0%となり、上昇幅としては2022年5月以来、2年ぶりの大きさとなりました。3か月連続での上昇です。
パーム油はバイオディーゼル燃料の原料にも使われており、原油上昇の代替需要としての影響も大きいと見られます。原油上昇の波及効果は今後、社会のあらゆる部分で広がってゆくことになりそうです。
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インフレ再燃の恐れが株式市場にも影響しています。NY市場では前週まで史上最高値を更新していたNYダウ工業株が軟調です。今週は月曜日から木曜日まで4日続落となりました。長期金利の上昇を嫌気しています。
週末は反発しましたが、週間トータルでNYダウは▲903ドルの下落となり、これは2023年3月第2週の▲1481ドル以来の下落幅です。
ISM製造業景況感指数に続いて、非製造業も景気の堅調さを示す内容です。週末の雇用統計では非農業部門の雇用者数の増加は+30.3万人にのぼり、市場予想の+20万人を大きく上回りました。米国経済は再び強さを取り戻しています。
「経済にとって良いニュースは市場にとって悪いニュース」の典型的な動きです。マーケットでは、FRBによる年内の利下げ回数の見通しが3回以下に減少することを懸念する悲観的な見方と、個人消費と企業収益が良好という部分を評価する楽観的な見方が拮抗しています。
しかしインフレが現状のままで推移すると年内の利下げ無し、あるいは追加利上げの可能性が浮上し、そうなると意味合いはがらりと変わります。4月3日にパウエル議長はスタンフォード大学でのイベントで講演し、「利下げを急ぐ必要はない」と述べました。
クリーブランド連銀のメスター総裁、FRBのウォラー理事も「利下げが早すぎるリスクの方が大きい」、「利下げを急ぐべきではない」と繰り返し述べています。市場はここにきて楽観論が急速に減り、反対にタカ派的な意見に耳を傾けるようになっています。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。前週の▲1.59%に続いて、先週も▲2.38%と大きめの下げとなっています。TOPIXが2週続けて下げたのは今年初めてです。
規模別では、大型株が▲2.56%の続落となり下げを牽引しました。同時に小型株も▲2.88%と大型株以上に下げています。中型株は▲1.78%の下げで、下げは比較的軽微にとどまりましたがやはり軟調です。
スタイル別では、バリュー株(▲1.84%)、グロース株(▲2.96%)で、グロース株の下げがかなり大きくなっています。グロース株がここまでの下げを記録したのは昨年9月第3週以来のことです。
中でも小型グロース株は▲3.26%と大きく下落しました。前期末から広がっている金利上昇の影響が継続していると見られます。東証グロース250指数は▲7.42%と大幅続落となりました。
値上がり銘柄と値下がり銘柄の割合を示す「騰落レシオ」は、週末値で103.90%となりました。軟調な地合いが続いたために、先週末の120.68%から急速に低下しています。
日経平均のサイコロジカルラインは「7」の状態を4日間続けたあと、週末は「6」に低下しています。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、3業種が値上がりし、14業種が値下がりしました。引き続きマイナス業種が優勢の状況です。前週(プラス4業種/マイナス13業種)に続いて軟調な展開です。
その中で値上がり業種のトップ3は、「エネルギー資源」、「電力・ガス」、「商社・卸売」でした。
「エネルギー資源」は中東戦争が勃発する可能性を警戒して、原油価格が急上昇している影響が反映されています。セクターとしては10週連続で上昇しました。INPEX(1605)を筆頭に、コスモエネルギーHD(5021)、ENEOS(5020)が堅調でした。
値上がり第2位の「電力・ガス」も8週連続で上昇しました。前週に続いて東京電力HD(9501)が柏崎刈羽原発の再稼働に向けて、着々と準備が進められていることが評価されています。
北海道電力(9509)がいち早く上昇基調を強めています。最先端半導体のラピダスに経済産業省が追加支援を決めたことから、電力需要の高まりを背景に急騰しました。北海道ガス(9534)まで物色が広がっています。
また北陸新幹線の延伸から北陸電力(9505)も買われ、すでに原発再稼働に踏み切っている関西電力(9503)、九州電力(9508)も堅調です。今やエネルギーセクターは続々と新しい話題が出てきます。
値上がり第3位は「商社・卸売」ですが、伊藤忠(8001)が中期経営計画を発表して大きく上昇したことを除けば、動きは限定的でした。その中で燃料商社の岩谷産業(8088)、再エネ・省エネに強いユアサ商事(8074)が堅調です。
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反対に値下がりセクターの上位は、「自動車・輸送機」、「電機・精密」、「情報通信・サービス」でした。時価総額の大きな業種に軟調な動きが見られました。
「自動車・輸送機」は豊田自動織機(6201)が週初に軟化しました。デンソー(6902)が豊田自動織機の発行株数の9%に当たる政策保有株を売却すると発表し、豊田自動織機ばかりでなく、トヨタ自動車(7203)、アイシン(7259)、愛三工業(7283)、豊田合成(7282)のトヨタグループ各社が一斉に下落しています。
テスラのEV販売台数が苦戦しており、ハイブリッド車に強いトヨタ自動車、およびそのグループ各社には大きな恩恵が出ているはずですが、それに関してはここまでの株価上昇でかなりの部分が織り込まれているように見られます。
次の焦点は、ここまでの円安を受けての今期の決算内容、各社の利益水準の見通しになりそうです。
値下がりセクターの第2位は「電機・精密」でした。半導体セクターではソシオネクスト(6526)やアルバック(6728)は堅調さを維持していますが、主力の東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、スクリーンHD(7735)は週末に安値引けとなっています。
半導体以上に気がかりなのは、キーエンス(6861)、オムロン(6645)、安川電機(6506)、新電元(6844)、サンケン電気(6707)の設備投資関連株の軟調さです。
4月5日(金)の引け後に安川電機が2024年2月期の決算を発表し、前期は売上高が5756億円(+3.5%)、営業利益が662億円(▲3.0%)にとどまりました。
今期の見通しも売上高で5800億円(+0.8%)、営業利益で700億円(+5.7%)と慎重な見通しにとどまっています。設備投資の回復を見込み、為替前提は1ドル=145円、1ユーロ=155円としていますが、週明けのマーケットでどのように評価されるかが注目されます。
値下がり第3位の「情報通信・サービス」では、ソフトバンクG(9984)、NTT(9432)、NTTデータグループ(9613)をはじめ、ユーザーローカル(3984)、さくらインターネット(3778)、ブレインパッド(3655)など、生成AI関連株を含めて主力銘柄がいずれも大きく下落しました。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れは、現在の活発な設備投資の中心テーマとされていますが、その関連企業の中から徐々に刃こぼれする動きが目立つようになってきました。設備投資のハード面、ソフト面ともに弱い株価の動きが目立ちます。この点は注意しておきたいところです。
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株式市場に影響を与えるのはマクロ経済データや金融当局の動きばかりとは限りません。社会全般の動静がすべて反映されるのがマーケットの恐ろしいところです。先週は国内外で実に様々な変化がありました。
台湾では震度6強の大きな地震が発生しました。まだ事態の全貌が明らかになっておらずその行方が心配されます。
元日に発生した能登半島の大地震から3か月経ったばかりですが、台湾では過去25年間で最も大きな地震とあって、とりわけTSMCを中心とした半導体のサプライチェーンが不安視されました。
TSMCは世界最大のファウンドリーで、エヌビディアの先端半導体を製造していることでも知られます。そのTSMCは地震発生の翌日に「地震発生から10時間以内に工場の70%以上が復旧した」ことを明らかにしました。これによっていったん警戒したマーケットには安堵の買い物が広がるようになりました。
半導体業界に関しては、経済産業省はラピダスに5900億円の追加支援を決定しました。半導体の後工程を強化して、2020年代後半には回線幅2ナノメートルの次世代半導体の量産に邁進しています。
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静岡県の川勝平太知事が自身の不適切発言により辞任することを表明しました。これによって中断していたリニア中央新幹線の行方がまたもや混沌としてきました。
推進反対の川勝知事の辞任により新幹線工事が前進することも考えられますが、事態はまだ流動的です。JR東海(9022)の株価は方向性がまだ見えないようで、週を通じて上下小さな値動きにとどまりました。
米国ではテスラの1-3月期の世界販売台数が▲9%の減少と発表されました。マイナスに転じるのはコロナ禍初期以来、15四半期ぶりのことです。
価格競争による中国での販売台数の苦戦、ドイツ工場の火災が影響したと説明されますが、先日のアップル、三菱自のEV撤退に見られるように世界中の自動車メーカーの戦略見直しにもつながりかねない事態となりつつあります。
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同じく米国からで、ディズニーは株主総会を無事に乗り切りました。アクティビティストとの委任状争奪戦に勝利をおさめ、取締役選任を含めて会社側の提案を可決することに成功しました。
今回の委任状争奪戦は、世界最大のエンターテインメント企業を巡る「(米国)史上最大」の争いと言われます。ボブ・アイガーCEO対トライアン・パートナーズを率いるネルソン・ペルツ氏の戦い。アクティビティストとの攻防戦はここまで巨大化しています。
米国企業と比べると時価総額でははるかに見劣りする日本企業は、いつ、誰が、どのようなアクティビティストとの争いに巻き込まれても不思議ではありません。それを避けるには上場企業は企業価値を高めて、自ら防波堤を築き上げなくてはなりません。株価の低迷は寸時も許されない時代を迎えたのです。
株価と業績の低迷が続いていたコニカミノルタ(4902)は
(後略)