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2024年8月27日
日経平均の反発一服、セブン&アイへの買収提案でマーケットは大いに揺れる
鈴木一之です。夏休みも終わりが近づいて宿題に追われる時期がやってきました。自由研究を目的に、それために出かける子供たちや家族も最近は多いとか。
パリ五輪に続いて夏の甲子園も終わりました。季節は休むことなく、どんどん秋に向かっています。
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国際経済の世界で注目されたのは、ジャクソンホール会合です。避暑地のジャクソンホールがクローズアップされる時期が来ると、今年の夏も終盤だなといつの間にか感じるほどになりました。年中行事のひとつとなっています。
今年は例年以上にジャクソンホールでの討議が注目されました。パウエル議長がどのような講演を行うのか、週末にかけて世界が固唾を飲んで見守っていました。
会議に臨んだパウエル議長は、米国の政策金利に関して「時が来た(time has come)」と短く述べました。米国は9月のFOMCにおいて4年半ぶりの利下げにいよいよ踏み切ります。
政策金利の引き下げは事前に予想されたことです。直接的には住宅ローン金利の低下を通じて個人消費を刺激し、企業金融においても貸出金利の引き下げによって企業活動が活発化します。
米国経済はこれまで市場に活性化することが期待され、週末のNY株式市場ではダウ工業株30種が+463ドルの大幅高となりました。最高値更新も迫っています。
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ほんの3週間前、「雇用統計ショック」によって米国経済が大幅な落ち込みに向かう、いわゆるハードランディング・シナリオが現実のものとなり、株価が急落したばかりです。それが早くも最高値更新が視野に入るまでに回復しました。
7月の失業率は4.3%まで上昇し「サーム・ルール」に抵触すると警戒されましたが、その後の経済統計ではそこまでの落ち込みを示すものはほとんど見られません。
FRBは金融政策のみで、40年ぶりの高いインフレ率(ピークは7.1%)を抑え込み、しかも雇用を維持しながら経済を成長させるという難題に挑んで、それが見事に結実しつつあります。
しかし問題はここからです。9月の利下げはすでに市場では十分すぎるほど織り込まれており、次なる焦点は年内の利下げ回数と利下げの幅、スピードに移ります。
2000年以降に3回行われた金利引き下げ局面は、いずれもその直後に経済の急激な落ち込みと株価の急落に見舞われました。ひとたび利下げを行えば、ゼロ金利に到達するまで徹底的に金利を下げ続けなくてはなりませんでした。
今回はどうでしょうか。軟着陸は可能なのか、今後も市場内での議論は錯綜することでしょう。すべては次の雇用統計、CPIなど経済データが判断の決め手となるはずです。
9月FOMCではボードメンバーによる今後の経済見通し、および金利水準の見通しが明らかになります。それがすべて今後の金融政策の占う決め手となってきます。マーケットの議論はまだまだ続きそうです。
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8月23日(金)はジャクソンホールのほかにも重要なイベントが目白押しとなりました。そのひとつが衆議院の閉会中審査です。日銀の植田総裁が出席し、物価見通しに関して所見を述べました。
8月初旬におきた世界的な株式市場の動揺は、米国経済の急激な落ち込みだけでなく、日銀の利上げも一因とされています。渦中にある日銀の金融政策スタンスに関して、植田総裁は国会において、条件がそろえば今後も利上げを行う方針を改めて述べました。
現在の日本の金利水準は「実質金利はマイナスの状態であり、緩和的な環境が続いている」と植田総裁は述べました。
7月末に政策金利を引き上げた際の記者会見と同じように、ここでも中立金利の考えを持ち出して、「金融政策は景気を過熱も冷やしもしない、中立的な水準になる」と述べました。今後も利上げが必要というスタンスです。
今回のような株式市場の動揺を受けて、政策金利の引き上げはすんなりと進むのでしょうか。一段とむずかしさを増していると考えられます。
肝心の物価動向は上昇基調が続いており、円キャリートレードのポジション、為替の動向、米国の金融政策、なによりも日銀による市場とのコミュニケーションの巧拙など、考慮すべき要素が一段と増えています。
今後どこまで踏み込んだ金融政策の運営が可能なのか、日銀および植田総裁の手腕が試される、まさに正念場を迎えています。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが続伸しました。その前の週にようやく5週ぶりの反発に転じたところからマーケットには落ち着きが戻っています。週間の上昇幅はわずか+0.23%にすぎませんが、急激な下落の後だけに値戻しが続いています。
規模別指数では、大型株の戻りは鈍く▲0.13%の下落を続けています。それに対して中型株は+1.06%、小型株は+0.56%と小幅ながら続伸しました。
スタイル別では、バリュー株は大型株から小型株までマイナスを余儀なくされています。一方でグロース株は、小型グロース株が+1.22%と戻りが顕著です。大型グロース株も+0.83%の小幅な上昇となりました。
騰落レシオは全面高と全面安に近い状態を続けていますが、それでも101.84%という落ち着いた水準を維持しています。サイコロジカルラインは週末にかけて7月8日以来の「9」の状態を2日間続けています。
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TOPIX-17業種のうち、値上がりセクターが10業種、値下がりセクターが7業種となりました。全面安と全面高が続いたのちに、ようやく騰落セクターの色分けが見られるようになりつつあります。
値上がりセクターの上位は「小売」、「運輸・物流」、「医薬品」です。
「小売」は何といっても、セブン&アイHD(3382)に対してカナダのアリマンタシォン・クシュタールが買収提案を行ったとのニュースから、週初にセブン&アイの株価がストップ高まで買われた影響が出ています。
セブン&アイに対する買収提案の行方はまだわかりませんが、株価は週末にかけて高止まりしています。
この一件がきっかけとなったのでしょうか。イオン(8267)、ファーストリテイリング(9983)、ニトリホールディングス(9843)、エービーシー・マート(2670)、エディオン(2730)、ゼンショーHD(7550)など、流通ネットワークを築き上げている小売セクターの株価がいずれも大きく上昇しました。
値上がりセクターの第2位は「運輸・物流」です。海運株は市況高止まりを背景に引き続き堅調です。陸運でも不動産ビジネスの回復を手掛かりとした西武HD(9024)を筆頭に、阪急阪神(9042)、JR九州(9142)がしっかりした値動きでした。
値上がりセクターの第3位は「医薬品」です。グロース市場ではバイオベンチャー株への人気が続いており、その余波もあって住友ファーマ(4506)、アステラス製薬(4503)、中外製薬(4519)、大塚ホールディングス(4578)が次々に高値更新に進みました。
マーケット全体が戻り歩調に入っているとはいえ、いまだディフェンシブ銘柄的な薬品セクターへの資金流入は続いていると見られます。
反対に値下がりセクターのトップは「銀行」です。米国では長期金利の低下傾向が著しく、日本でも簡単に金利上昇が進むとは断言できなくなってきました。メガバンクから地銀株に至るまで銀行セクターが広範囲に軟化しました。
値下がり第2位は「エネルギー資源」、第3位は「機械」でした。いずれも景気敏感株の色彩が強いセクターです。原油市況が大きく軟化しており、半導体関連のディスコ(6146)、
(後略)