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2025年3月11日
日経平均は週末値で37,000円割れ、トランプ関税が世界を揺さぶる

鈴木一之です。3月に入り株式市場は軟調な動きを強めています。「トランプ関税」に世界中が振り回されています。
目が回るほどの激しい変化です。昨日決まったことが今日は覆され、安心して株価の行方を追いかけることが難しくなっています。リスク資産を売る動きが当の米国にまで広がり始めました。
先週の日経平均の動きは以下の通りです。
・3月3日(月):37,785円(+630円)
・3月4日(火):37,331円(▲454円)
・3月5日(水):37,418円(+87円)
・3月6日(木):37,704円(+286円)
・3月7日(金):36,887円(▲817円)
1週間で上昇した日が3日あって、下落した日が2日にとどまっています。安定と言えば安定しており「相場が荒れている」とは言えない状況かもしれません。
しかし下げる時の値幅が大きく、上昇は小さなものにとどまって、結果的に日経平均は週末の終値で36,000円台に突入しました。年明け以降の安値を更新しています。
軟調な地合いを導いているのはトランプ大統領の過激な言動です。関税は世界の景気悪化につながりかねない悪手の経済政策に決まっており、市場はことのほか敏感に反応します。
しかしそればかりではありません。先週のエヌビディアの決算発表以降、半導体関連株やデータセンター関連株が厳しい値下がりを続けています。原油価格の低下も続いており、WTI先物で66ドル台まで下落しました。
金利上昇よりも金利低下が警戒され、米国の長短金利差は再び逆イールドに陥りました。その状況下でも日銀の政策金利引き上げの観測は揺らいでおらず、ドル円相場は147円台まで円高・ドル安が進みました。株式市場が軟調な地合いに陥るのも無理はありません。
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円高、関税、世界景気の鈍化、企業収益の伸び悩み、加えて日米安保体制への不満を口にするトランプ大統領からの防衛費増強ムード。「トランプ2.0」の世界は日本にとって厳しくなる一方のように感じられます。
それでもマーケットの隅々には相場反転の糸口も見え隠れしています。ハイテク比率の高い日経平均は年初来の安値を切り下げているものの、よりカバー範囲の広いTOPIXベースでは違う景色も見えてきます。
TOPIXは週間で3週ぶりに上昇しました。日経平均は週間では3週連続の下落です。ほかにも先週のマーケットで見られた変化の兆しをいくつか挙げてみます。
・TOPIXは年初来安値を下回っていない。(日経平均よりも高い位置をキープ)
・プライム市場の値上がり銘柄数が次第に増加。(3月7日(金)は日経平均が▲817円下落しても値上がり銘柄数は459銘柄。2月20日(木)▲486円の時の249銘柄よりも数の上でははるかに上回る。)
・3月7日(金)の週は業種別騰落率でTOPIX-17業種のうち15業種が値上がり。(下落したのは2業種にとどまる。)
・小型株の上昇が顕著。(大型株指数が週間で+0.79%の反発にどどまるが、小型株指数は+2.10%。バリュー株、低PBR、高利回り銘柄の上昇が目立つ。)
・景気敏感株が幅広く上昇する。(機械、鉄鋼、化学、非鉄、商社、ガラス、金属製品の景気動向に敏感な銘柄がそろって続伸。)
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トランプ大統領の言動にすべてが吸い寄せられてしまいますが、上記のような変化が先週のマーケットでは見られました。これらの動きは無視できません。
ひょっとしたら次の展開が静かに始まっているのかもしれませんが、あるいは単なる買い戻しだけで本質的な変化ではないのかもしれません。転換期の判断はむずかしいものですが、今は何もかもが不確定でさらに混沌としています。
バフェット氏は静かに現金を積み上げていましたが、その現金を株式に再び組み替える時も同じように静かに行うはずです。すでに動きは始まっているのかもしれません。
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先週の東京株式市場は、TOPIXは3週ぶりに反発しました。上昇率は+0.99%で前の週の下落率と比べると(▲1.99%)小さな動きにとどまっています。
規模別では、大型株指数が+0.79%に対して、中型株指数は+1.18%、すでに触れましたが小型株指数は+2.10%と堅調でした。ただし東証グロース株250指数は続落しています。
スタイル別の株価指数では、小型バリュー株が+2.87%と最も大きく上昇しました。これに対して小型グロース株は+1.30%の上昇にとどまっています。大型グロース株は+0.54%でさらに上げ幅が小さくなります。
騰落レシオは下げ渋り、週末は96.76%で引けました。日経平均のサイコロジカルラインは1月26日以来の「5」に低下しています。
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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが15業種、値下がりセクターは2業種にとどまりました。日経平均が軟調に推移するのに対しては値上がりセクターが優勢です。
値上がり業種のトップは「機械」です。トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領のトップ会談が決裂し、欧州全体に防衛意識を高める動きが急速に広がったことが防衛関連株を押し上げました。
三菱重工(7011)、IHI(7013)、日本製鋼所(5631)を筆頭に、DMG森精機(6141)、マックス(6454)、ダイキン工業(6367)、日立建機(6305)、井関農機(6310)などが広範囲に買われました。
その一方でディスコ(6146)、SMC(6273)、野村マイクロ・サイエンス(6254)、ローツェ(6323)など半導体関連のグロース株が総じて軟調でした。
値上がり第2位のセクターは「自動車・輸送機」です。トランプ関税の影響をまともに受ける業種として前週まで厳しい状況が続いていましたが、それが早くも反転に向かいつつあります。
トヨタ自動車(7203)、ホンダ(7267)の完成車メーカーはまだ本調子ではありませんが、それに代わって豊田自動織機(6201)、アイシン(7259)、愛三工業(7283)、フタバ産業(7241)など自動車部品メーカーが市場をリードしました。
関税引き上げへの対処として、米国への工場移転が早くも視野に入っているかのような展開です。自動車部品メーカーの多くはPBRが低く、配当利回りも高い銘柄が集まっています。この部分の変動が相場全体の色合いを決定づけています。
値上がりセクター第3位が「商社・卸売」です。ただし前の週の「バフェットの手紙」で動意づいた総合商社はいずれも小さな動きでした。
それらに代わってアルコニックス(3036、松田産業(7456)、ユアサ商事(8074)、ヤマエグループ(7130)、内田洋行(8057)などの専門商社が動意づいています。
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反対に値下がりセクターのトップが「情報通信・サービス」でした。
半導体関連株の下落に連動してソフトバンクグループ(9984)が軟調だったこと、任天堂(7974)の週末の急落に連動してコナミグループ(9766)、
(後略)
