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2024年4月1日
日経平均は週足で2週ぶりに下落、高値圏で堅調を維持して年度末を通過
鈴木一之です。サクラが咲きました。春爛漫です。
先週の東京株式市場は、3月期末の最終週ということもあって、軟調な動きに終始しました。前の週に「中央銀行ウィーク」を終え、すべてを消化しきれないうちに新たに様々な出来事が発生しています。機関投資家を中心に動きがほとんどとれなかった影響も出ています。
日経平均は日足の高安では「●●〇●〇」となり、週間で2勝3敗の値動きでした。週足でも小幅一服となりました。それでも前の週に+2181円も上昇した直後ですから、週間で▲519円の下落にとどまったことはまずまずでしょう。
特に木曜日は3月期末の配当落ちがあり、日経平均ベースで▲264円の配当金が6月の株主総会を経て株主に支払われることになります。
企業業績は好調で、企業サイドからの株主還元への意欲も強く、自社株買いと合わせて25兆円が株主に分配されます。2年連続で過去最高を更新し、賃金引上げと合わせて個人消費に恩恵をもたらすことが期待されます。
とりあえずは3月末の年度納めの時期を通過しました。動きのとれない3月期末をどうにかやり過して、桜の開花と同じように新年度からの株価の活発な動きを待ち望んでいるところです。
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先週はロシアのモスクワ郊外で、コンサート会場がイスラム系武装集団によって銃撃されるというショッキングなニュースから始まりました。
プーチン大統領が大統領選挙で圧勝し、さらなる長期政権を盤石にした直後に起きた事件だっただけに、世界はますます混迷化する出来事として警戒されました。
それとはまったく別の出来事ですが、アメリカ東部のメリーランド州でボルティモア大橋にシンガポール戦績の貨物船が衝突して橋が崩落するという事故が発生しました。
これも世界に大きなショックを与える出来事でした。何がショックかと言えば、貨物船が動力を喪失して運航不能の状態で橋脚に衝突したこと、その船には積み荷のコンテナがこぼれ落ちんばかりに満載されていたこと、巨大な橋が一瞬にして崩落したこと、その様子が映像で世界中に瞬時に流れたこと、などです。
同時に、このような突発的なニュースを聞いて「世界経済はどうなる、相場はどうなる」とすぐに考えてしまうことも、自分としてはショックでした。24時間、気の休まる時がないという今の相場環境を象徴しているような出来事です。
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株価上は動きの小さな週となりましたが、世の中はこの先の大きな変化を予想させる展開に満ちていたように思います。先週明らかになったふたつのニュースが気になります。どちらも「1990年(1991年)以来」という形容詞がつきます。
ひとつは為替市場での円安です。1ドル=151円97銭まで円が下落し、1990年以来の円安となりました。
日銀はマイナス金利の解除を決定しましたが、それと同時に、当面はこれ以上の利上げに踏み込む意向もないことも明らかになりました。金融緩和の状態が当分は続くと予想されます。
米国でも利下げの時期を巡る動きは続いていますが、インフレ基調は根強く、ドル高・円安の方向に徐々に傾いています。
先週は日銀の田村直樹審議委員の講演も注目を集めました。タカ派として知られる田村委員が講演で、「ゆっくりと着実に金融政策の正常化を進める」と述べました。従来のタカ派的なスタンスに変化が見られると市場は受け止めたようで、これも円売りスタンスを強める結果となっています。
ドル円相場はすでに2022年暮れの円買い介入のレベルを越えています。それでも現在のところ、介入への市場の警戒感はかなり乏しいように見られます。円安による輸入インフレを警戒していないはずはありませんが、それ以上に現在のマーケットは企業業績に与える円安のメリットを望んでいるようです。円安は望ましいことであり、介入をそれほど恐れていないのもなんとなく合点がいきます。
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もうひとつは地価の上昇です。先週は国土交通省より今年の公示地価が発表され、全国平均の全用途は前年比+2.3%の上昇となりました。伸び率はバブル期以来のことです。
全用途の上昇は3年連続で、伸び率が2%を超えるのは1991年の+11.3%以来のことです。これがもうひとつの「1990年(1991年)以来」です。
地価の上昇を先導しているのは引き続き大都市です。東京23区の商業地は平均で+7.0%上昇しました。大型のオフィスビルが続々と開業し、いずれもテナントの誘致が好調に推移しています。東京23区の新築マンションは平均で2023年に1億1483万円となり、初めて1億円の大台を突破しています。
それに加えて現在は、地方でも地価の上昇が顕著となっています。商業地の上昇率で全国トップは熊本の大津町で、TSMCの工場に近くの商業地は+33.2%も値上がりしました。
半導体工場に関連する投資額は2029年までに9兆円に達する見通しで、それが住宅地や商業地の価格を大きく引き上げています。
株価や賃金に続いて土地にも、上昇の波が広がっています。これを反対側から見れば、地価が上昇しているうちは株価の上昇も続きます。
地価が下落すると株価の上昇は止まります。90年代初頭の日本では「地価の上昇を止めろ」という大合唱が国中で沸き上がり、その声に押されて日銀は政策金利を大幅に引き上げて、地価は下落に転じました。
ここに明治以来の土地神話は崩れ、土地担保融資に根差した日本のビジネス慣行は根本から破綻して、銀行経営は行き詰まりました。同時に株価も崩落してゆきました。
バブル崩壊後に日本の地価は長らく下落を続けました。地価と株価の連動性を抜きにして経済を語ることはできない構図となっています。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。前の週に+5.33%も大きく上昇した反動もあったように思います。下落率は▲1.59%にとどまり、比較的小さな下げでした。
規模別では、大型株が▲1.77%の反落、中型株(▲1.38%)、小型株(▲0.75%)の下げと比較すると、大型株が主導する反落となりました。
スタイル別では、バリュー株(▲1.62%)、グロース株(▲1.55%)ともに同程度の下げとなりました。全体に調整一服という状況ですが、ここでも小型グロース株は▲0.36%の小さな下落にとどまっています。
騰落レシオは週末値で120.68%となりました。引き続き過熱圏とされる120%を超えていますが、上昇/下落の銘柄数の割合は拮抗しています。日経平均のサイコロジカルラインは「6」の中立状態を4日間続けたあと、週末は「7」に上昇しています。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、4業種が値上がりし、13業種が値下がりしました。マイナス業種が優勢となりましたが、前の週に17業種すべてが値上がりした反動が出ています。
値上がり業種のトップ3は、「不動産」、「機械」、「エネルギー資源」です。
「不動産」はこれで6週連続で値上がりしました。前の週もセクター別騰落率の値上がり第2位に入っています。三井不動産(8801)、三菱地所(8802)、住友不動産(8830)の大手3社を軸に、東京建物(8804)、平和不動産(8803)、トーセイ(8923)、霞が関キャピタル(3498)など中・小型の不動産株まで、広範囲に続伸しました。
今年の公示地価が発表され、全国・全用途平均が3年連続で上昇し、バブル期以来の高い伸びを記録しました。日銀もマイナス金利を解除しましたが、引き続き金融緩和の状態は維持される見通しで、不動産市況は高止まりすることが予想されます。
値上がりセクターの第2位は「機械」でした。先週の東京市場をリードした中核は不動産セクターと、この機械セクターです。
三菱重工(7011)が3月期末の権利落ちで株式を10分割し、手掛けやすくなったことから大商いのうちに続伸しました。
東京電力(9501)の柏崎刈羽原発は、再稼働に向けた検査のために燃料棒を注入するところまでこぎつけました。原発再稼働に向けた期待から電力セクターが総じてしっかりしており、原発関連の中核である三菱重工も一貫して上値を追っています。
IHI(7013)も堅調です。日本経済新聞は決算観測記事を掲載し、航空機向けエンジンのリコール問題で今期は大きな特損を計上しますがあくまで一過性であり、2025年3月期には最高益更新に向かうとの好材料が株価上昇を刺激しています。
半導体関連の中核であるディスコ(6146)は新たに日経平均構成の225銘柄に採用され、これも週末にかけて大幅高となりました。野村マイクロ・サイエンス(6254)、TOWA(6315)などの小型の機械株もそろって堅調です。
荏原(6361)、酉島製作所(6363)、イワキポンプ(6237)というポンプ関連株も引き続き人気を集めており、機械セクターはどのサブセクターを切り取っても堅調な銘柄が目立ちました。
値上がりセクターの第3位は「エネルギー資源」です。これで9週間連続での上昇です。原油価格が82ドル台で今年の最高値近辺に張りついています。鋼材市況や石油化学製品、農作物など国際商品市況が世界中で再び上昇しており、それがエネルギー株の上昇につながっています。
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反対に値下がりセクターの上位は「運輸・物流」、「医薬品」、「銀行」となりました。
値下がりトップの「運輸・物流」ではニュースが豊富です。
JR東海(9022)は東京ー名古屋間でのリニア新幹線の2027年開業を断念すると発表し、株価が大きく下落しました。つれてJR東日本(9020)、JR西日本(9021)も一緒になって値下がりしています。
東急電鉄(9005)は4月から始まる新年度に向けて3か年の中期経営計画を発表しましたが、3年後の利益計画が現在地からほとんど伸びていないことが嫌気されて株価が急落しました。
利益目標が3年後も伸びないのは確かに問題ですが、東急に限らず、大半の企業が同じような悩みを抱えている可能性があります。
インバウンド消費は3年後も今と同様に伸びている当てはなく、コロナ後は少子化・高齢化が急速にピッチを速めており、電鉄会社が明確に利益を伸ばせる計画は描けません。
そこを工夫して成長の源泉を見つけ出すのが経営の力なのですが、現時点における東急にはその力や工夫がなかったということになります。あるいは東急は正直に経営陣の本音を明かしてしまったというところでしょうか。
他の企業はどのように出てくるのでしょうか。ここからの動きが重要です。
値下がり第2位の「医薬品」は、武田薬品(4502)、アステラス製薬(4503)、科研製薬(4521)など、配当金の手厚い企業が3月期末の権利落ちで、大きく配当落ちした影響が出ています。
小林製薬(4967)の「紅こうじサプリ」からプベルル酸が検出され5人の死亡事例が発生している一連の問題で、株価は週初にストップ安まで急落しその後も軟調に推移しています。ただし小林製薬は「化学」セクターに属しており、「医薬品」には含まれません。
値下がりセクターの第3位は「銀行」でした。前の週に日銀のマイナス金利解除を受けて株価が広範囲に上昇しており、その反動で上昇一服となりました。
それでもりそなホールディングス(8308)
(後略)