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2022年5月20日

決算発表が一巡、下落を続けた米国市場にもようやく底入れ感が漂う

鈴木一之

◎日経平均(13日大引):26,427.65(+678.93、+2.64%)
◎NYダウ(13日終値):32,196.66(+466.36、+1.46%)

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鈴木一之です。大型連休明けの最初の1週間が過ぎました。下げ続けた米国市場にはわずかながらも底入れの気配が感じられます。

ウクライナ情勢を中心として毎日のように重要なニュースが飛び交い、どれが株式市場に本当に影響を及ぼしているのか、実際のところわかりにくくなっています。引き続き相場の本筋は物価の上昇と米国の金融政策、上海ロックダウンの影響に絞られるでしょう。

日本のGW中に開催された米国のFOMCにおいて、6月からの量的引き締めの実施が決定されました。注目されたのは引き締めのペースの速さで、これに対して金融市場は警戒感をもっています。先週も米国の長期金利は3%の大台を超え、マーケットは神経質な動きとなりました。

先週の金曜日。米国の株式市場はNYダウ工業株が7日ぶりに反発しました。FOMCの直後からずっと下げ続け、週間では7週連続の下落となっています。7週連続の下げは2001年5~7月以来、実に21年ぶりのことです。

コロナ危機とウクライナ情勢がもたらしたインフレ加速、FRBによる金融の引き締め、それに中国発の景気後退懸念が重なり、テクノロジー株が軟調な動きとなっています。アップルの時価総額は円ベースで300兆円を割り込み、世界の時価総額トップの座をサウジアラビアのサウジアラムコに明け渡しました。

それでも先週末はわずか1日だけですが、NYダウ工業株およびNASDAQはいったん反発局面を迎えました。インフレのピークアウト感とともに、さすがにここまで下落すると短期の底入れ感が感じられつつあります。

この下落局面では象徴的な出来事がいくつも起こりました。ひとつはイーロン・マスク氏が5兆円を投じてツイッター株を大量に取得したことです。買収を前提としてツイッター株を購入しましたが、SECはその取得過程の調査に乗り出しました。大量保有報告の時期が遅れたことが問題となっています。

マスク氏はツイッター株の取得時期を巡って、すでに一部の投資家から集団訴訟を起こされています。マスク氏は先週末、ツイッター買収を一時保留する旨を公表しました。スパムをばらまく偽アカウントの問題を重視していると報じられています。

それとは別件で、マスク氏の動静と連動しやすいビットコインはここに来て下落基調を強めています。中国では将来のEVの供給過剰懸念も浮上しつつあり、本業であるテスラの方が気になる情勢となってきました。

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ウクライナ情勢も大きな転機を迎えつつあります。先週は5月9日のロシアの対独戦勝記念日を控えて、世界中で緊迫度が高まり厳戒態勢を敷いて臨みました。

「赤の広場」で行われた戦勝記念日パレードは世界に大々的に報道されましたが、プーチン大統領の演説はウクライナへの軍事侵攻を「唯一の正しい決定」と正当化しただけで、具体的な発表や新たな脅威となる発言はありませんでした。

米国ではバイデン大統領が「武器貸与法」に署名しました。これによって第三国経由ではなく直接、ウクライナに向けて武器が貸与されます。軍事的な行動が一段と迅速化することになります。

5月8日にはオンラインでG7首脳協議が開催され、ロシア産原油の輸入禁止の方針がすべての参加国が一致する形で賛同されました。ロシアは1日に7億ドルの石油輸出収入があるとされており、G7加盟国すべてが禁輸に踏み切ればそのうちの2億ドルが失われます。

エネルギーの大半を海外産に頼る日本は、これまでロシア産原油の輸入禁止には慎重でしたがもはやそんなことは許されません。ここからは協調行動に縛られます。岸田首相はG7と足並みをそろえてロシア産原油の禁輸措置を表明しました。

むずかしいのは「サハリン1、2」の扱いです。これに関しては天然ガスの権益は維持したまま、時間をかけて段階的に輸入縮小を図るという、実現不可能に見える困難な課題に挑戦することになります。

フィンランドは長年にわたって確立していた軍事的な「中立政策」の歴史的な転換を果たし、NATOに加盟する方針を打ち出しました。それに対してロシアは間髪を入れずにフィンランドへの電力送電を打ち切りました。

ロシアからの送電量はフィンランド全体の1割程度にとどまり、不足する分はスウェーデンからの送電でまかなうとしています。軍事と経済はますます密接不可分となりました。エネルギー政策に関する政治判断は国民生活に直結します。日本もそれだけの覚悟が求められることになります。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。その前の週に連休の谷間で立ち合い日数は2日しかない状態で反発しましたが、軟調な米国市場に引っ張られて軟化しました。ピークを迎えた決算発表も影響しています。

規模別指数では、大型株の下げが目立つのに対して中・小型株はまだ堅調な方でした。しかし新興市場は引き続き厳しい売り圧力が見られ、東証マザーズ指数は6週連続での下げとなっています。金利上昇局面では成長株はなかなか下げ止まりません。

バリュー株とグロース株との対比では、どちらも大きく下落しましたが、先週はバリュー株の下げが目につきました。東証REIT指数も反落しています。

テクニカル面では、日経平均のサイコロジカルラインは「5」に低下しました。最近の弱い地合いを反映しています。軟調な地合いが続き騰落レシオは80%台を下回って、79~84%台に低下しています。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がり業種が「電力・ガス」の1業種にとどまり、値下がりが16業種に拡大しました。

唯一の値上がりセクターとなった「電力・ガス」では、すでに好決算を発表している東京ガス(9531)、大阪ガス(9532)がそのまま堅調に買い進まれています。新たにJパワー(9513)が今期・2023年3月期の見通しを+26%の営業増益と発表したことから大きく上昇しました。

比較的下げの小さかったセクターは「電機・精密」です。日立(6501)、三菱電機(6503)、明電舎(6508)、シンフォニアテクノロジー(6507)、ダイヘン(6622)など、エレクトロニクスの中でもやはり電力設備投資、エネルギー関連株の上昇が目立ちました。

決算内容の良好なキヤノン(7751)、オリンパス(7733)、KOA(6999)も逆行高が目立ちました。

「建設・資材」も堅調でした。今期の大幅増益が好感された大林組(1802)を筆頭に、清水建設(1803)、大成建設(1801)の大手ゼネコンがそろって上昇しています。最近は決算発表のたびに売り込まれていたゼネコンが、決算をきっかけに市場の評価がプラス方向に動くのは実に久しぶりです。

反対に下落の目立ったセクターでは、ワーストが「商社・卸売」でした。三菱商事(8058)、

(後略)

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鈴木一之