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2023年5月16日
米国ではNASDAQが高値を更新、日本も日経平均の年初来高値更新が続く
鈴木一之です。大型連休が終わりました。3年ぶりに行動規制の外れたGWは、全国どこの観光地、商業施設ともにたいへんな人出でした。東海道新幹線は瞬間風速でコロナ前を回復したようです。
賃上げ、給付金、それにしばらく出費を抑えていた反動もあって、人々のお財布の中は潤沢です。日本だけは物価の上昇と景気の先行きに対する不透明感を吹き飛ばす勢いです。
「リベンジ消費」という言葉は語感があまり好きではないのですが、実際にはコロナの3年間でできなかったこと、やりたかったことを取り戻そうという意欲が街角のそこかしこに感じられます。懐かしい友人に会いに行こう、という気持ちが強まっているようにも思います。何かを急いで取り戻そうという気持ちばかりがあふれる、今年の初夏の光景です。
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連休明けの株式市場も好調を続けています。先週の日経平均は3日上昇して2日下げ、週末には29,000円に乗せたまま年初来高値を更新しました。大型株を中心に物色の輪が日ごとに広がっています。
現在の日本の株価上昇は、必ずしも米国市場に牽引されたものではありません。日本の連休中に開催された5月FOMCでは、事前の予想通りにFFレートの0.25%引き上げが決定されました。ユーロ圏でも利上げが継続し、FRBの決定と前後してECBも0.25%の利上げを決定しました。
米国発の金融システム不安はくすぶり続け、簡単には消えません。今月初めにファースト・リパブリック・バンクの経営が破綻した後も、次に標的となる地方銀行を探して株価の急落が続いています。
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FRBが5月8日に公表した「銀行融資担当者調査」によれば、今年1-3月期の企業向け融資指数は46ポイントとなり、前期比+1.2ポイントの上昇でした。数字が高まるほど銀行の融資担当者の貸出姿勢が厳しくなっていることを示します。
3月のシリコンバレーバンク破綻の直後から指摘されていたように、銀行の経営不安はそれだけで融資態度の厳格さを通じて金融引き締めと同じ効果をもたらします。その懸念が現実のものとなっています。
米国景気の先行きはそれだけで不安視されることにつながり、先週の米長期金利は低下方向に向かいました。成長志向のNASDAQが先行して高値を取っているのはこの辺に理由がありそうです。
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そこに加えて米連邦政府の債務上限問題がいよいよ心配の核心となってきました。
6月1日は米国政府が債務不履行となる可能性として警戒されるタイムリミットです。その期日まで3週間を残し、今週は火曜日にバイデン大統領とマッカーシー下院議長が初めてこの問題で会談を行いました。
しかし予想通り、話し合いで新しい進展は見られませんでした。連邦政府の債務上限引き上げが合意に至る道のりが遠いことが確認されただけです。
最終的には民主・共和両党とも問題を複雑化させたのちに合意に至るだろう、と誰しもが思っているのですが、交渉ごとはわかりません。人間の行うことですから安易な結論は出せません。まだしばらくは引きずることになりそうです。
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日本にも直接・間接の影響が出ています。マッカーシー議長との会談不調を受けて、バイデン大統領は今週末のG7広島サミットを欠席する可能性を匂わせました。それどころではないという状況です。
今回のG7サミットでは議論されるテーマが満載です。対ロシア、対中国政策、経済安保、金融システムの維持、気候変動、人工知能に対するルール作りなど、西側先進国として一つでも多く足並みをそろえたいところです。それが中心となる米国がG7どころではないという状況では意気込みもそがれてしまいます。
バイデン大統領は不参加から「オンラインでの参加」に変わり、週末の時点ではどうやら正式に参加される方向に変わった模様です。厳戒態勢の続く日本ではこのところ各地で地震が発生しています。とにかく何ごともなく無事に今週末のG7首脳会談を終えることを願うばかりです。
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この状況で株価を突き動かしたのは、良好な企業業績です。先週は3月決算企業の決算発表がピークを迎え、大手企業ほど好調な決算内容だったことが確認されました。
月曜日のHOYA(7741)、火曜日のJFEホールディングス(5411)、三菱商事(8058)、水曜日の三菱重工業(7011)、丸井グループ(8252)、木曜日のパナソニックHD(6752)、そして金曜日の神戸製鋼所(5406)、東京エレクトロン(8035)。
いずれも決算発表を受けて、大型株の株価が大きく上昇しています。それが日経平均やTOPIXを押し上げた最大の原動力です。
対照的に中堅企業や小型・新興企業は業績面で苦戦しているところが目立ちます。そのあたりは株価にストレートに反映されています。大型株指数の値動きがよく、小型株指数が出遅れ気味となっています。
原材料価格を吸収して値上げを行い、賃金を引き上げて優秀な人材を獲得する。あるいは研究開発費を増やしてデジタルトランスフォーメーションの最先端を突き進む。物量作戦がモノを言う時、社会の方向性が明確になった時は体力のある大企業が有利です。
植田体制に変わった日銀が金融政策を当分の間は変更しそうにない、との確信が市場に浸透しつつあることも大型株には追い風となります。
世界中が利上げを急ぐ状況にあって、日本だけが利上げをせずに超低金利を持続するとなると、投資資金が日本に流れ込みやすくなります。ここでも大型株優勢の状況が生まれつつあるようです。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが上昇しました。これで5週連続での上昇です。週間上昇率は+1.01%となり、前週の+0.88%から拡大しました。
規模別では大型株が優位ですが、前の週とは異なり中型株、小型株にも物色が広がりました。いずれも5週連続での上昇です。新興市場の東証マザーズ指数も4週ぶりに反発しています。
スタイル別では、引き続きグロース株が優勢です。加えて先週はバリュー株もかなり盛り返しました。グロース株とバリュー株が両立して上昇する展開が見られます。
日経平均採用銘柄のうち、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る銘柄数は104銘柄で、前週と変わりませんでした。採用銘柄(225銘柄)の46%を占めています。
テクニカル面では、騰落レシオが5月9日に142.24%まで上昇した後、週末は124.58%で終わりました。これで過熱圏とされる「120%超」の状態を16日間、続けていることになります。日経平均のサイコロジカルラインは「8」の状態を4日間続けた後に、週末は「9」まで再び上昇しました。
日経平均ボラティリティ指数は反落しています。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落は、12業種が値上がりし、5業種が下落しました。
値上がり上位のセクターは「自動車・輸送機」、「商社・卸売」、「不動産」です。反対に値下がりセクターは「医薬品」、「エネルギー資源」、「鉄鋼・非鉄」となりました。
値上がりトップの「自動車・輸送機」は、トヨタ自動車(7203)、日産自動車(7201)、ホンダ(7267)のビッグ3が一斉に決算発表を行い、いずれも株価が堅調でした。
トヨタ自動車は自社株買いも発表したことが株価を押し上げましたが、好決算で堅調だったのはホンダや日産の方です。特にホンダは今期の営業利益が1兆円(+19%)と復調ぶりを印象づけて年初来高値を更新しています。
値上がり第2位の「商社・卸売」は、総合商社の一角が大きく上昇しています。中でも株価の上では三菱商事に加えて住友商事(8053)、伊藤忠(8001)が目立ちました。
専門商社でも稲畑産業(8098)、東京産業(8070)、高島(8007)、ダイワボウHD(3107)などが決算発表を受けて大きく上昇しました。不動産株も金融緩和政策のさらなる長期化予想から幅広く上昇しています。
値下がりセクターの上位は医薬品ですが、前週まで堅調だった分だけ下落したところがあります。武田薬品工業(4502)が
(後略)