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2022年8月1日

米国の利上げ幅は0.75%で決着、景気鈍化で長期金利は低下、NASDAQは3連騰

鈴木一之

◎日経平均(29日大引):27,801.64(▲13.84、▲0.05%)
◎NYダウ(29日終値):32,845.13(+315.50、+0.96%)

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鈴木一之です。7月も最終週を迎えました。夏休み本番ですが、日本列島は大気の状態が不安定で各地で大雨が降り、コロナ感染者数も10代以下で急拡大しています。そして連日の猛暑、これには体調も神経もまいってしまいます。お身体にはくれぐれもご自愛ください。

世界中の株式市場で水準訂正が始まっています。日経平均は前の週の時点で7連騰、28,000円の大台目前まで回復していたこともあって、今週はむしろおとなしい動きとなりました。

それ以上に海外市場の動きが目立ちました。特に中心となっているのがNY市場です。NYダウ工業株、NASDAQともに週末にかけて3日続伸となり、NASDAQは6月高値を抜き去りました。月間では+12%の上昇と大幅高となっています。

先週の出来事はまとめて最後に記しますが、何と言っても最大の注目点は米国のFOMCです。ここで0.75%の利上げが決定されました。

いまやマーケットを語る上で、一日たりとてFOMCが話題にのぼらない日はありません。40年ぶりの著しい物価高、金融当局の引き締め転換、景気の後退懸念との綱引き。どのように金融政策のかじ取りを行ってゆくのか、世界中が注視しています。その中でFRBは今回も0.75%の利上げを決定しました。

これによってFFレートの誘導目標は2.25~2.50%となります。景気を熱しも冷ましもしない「中立金利」に達しました。ここから先の利上げが本当の引き締め局面ということになります。

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6月の消費者物価指数が+9.1%もの大幅な上昇となったことから、当初政策金利の引き上げ幅は1.0%に達するとの見通しもありました。が、その後に判明した景気指標の鈍化によって0.75%の引き上げ幅にとどまりました。

ここに至るまでの1か月半、株式市場をはじめとして、債券、為替、商品市場などあらゆるマーケットが上に下に大騒ぎの状況が続きました。

会合ではやはり1.0%の利上げ幅も議論の俎上にのぼったそうです。パウエル議長は記者会見で、今後の景気動向次第では「引き上げペースを緩めることが適切」と述べ、同時に労働市場が引き締まっていることから、米国経済がリセッションに入るという市場の見方は否定しました。

実際にインフレをもたらすほど強い米国経済は、金融引き締めによって徐々に鎮静化に向かっています。カンファレンス・ボードが発表した消費者信頼感指数は急低下しており、米国の7月PMIは分岐点の「50」のラインを下回りました。住宅ローン金利の上昇もあって新築戸建て住宅販売件数は減少しています。

米国の4-6月期の実質GDPが7月28日(木)に発表され、年率換算で▲0.9%の低下となりました。事前予想ではプラスに浮上するとの見方もありましたが、住宅投資が大幅に落ち込んだことから2四半期続けてのマイナス成長となりました。米国ではこれによって自動的に景気後退とみなされます。

GDP発表を受けて為替市場では、ドル円相場が134円台まで1か月ぶりの高値までドルが上昇しました。週末には132円台までさらに円高が進んでいます。

今後も長期金利と株式市場は、景気動向を示す経済統計に一喜一憂を続けることとなりそうです。政治に続いて経済でもホットな夏休みとなることでしょう。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが4週ぶりに反落しました。ただし下落率は▲0.80%にとどまっており、その前の週の+3.35%の上昇と比べれば小さな下げにとどまりました。

規模別指数では、大型株から小型株までそろって小幅に軟調でした。株価指数の動きは小さかったため、特段の差は見られません。グロース株とバリュー株の動きにも大きな差はなく、いずれも小幅低下となりました。東証マザーズ指数は2週連続で上昇しています。
テクニカル面では、日経平均のサイコロジカルラインは7月20~25日にかけてサイコロ「10」の高いレベルにとどまったあと、週末は「9」に低下しました。東証REIT指数は3週連続で上昇しました。上昇幅も4月第1週以来の大きさです。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが6業種にとどまり、反対に値下がりセクターは11業種に広がりました。

値上がりセクターのトップは「エネルギー資源」です。次いで「運輸・物流」、「電力・ガス」となりました。いずれも7月前半に大きく値下がりしたセクターが浮上しています。
「エネルギー資源」ではINPEX(1605)、石油資源開発(1662)、ENEOS(5020)、出光興産(5019)などの石油関連株が総じてしっかりした週となりました。

週末の7月29日に米国のエクソンモービルが4-6月期の決算を発表し、純利益が178億ドル(2.4兆円)と過去最高を更新しました。先週は原油価格は目立った上昇を遂げたわけではありませんが、資源エネルギー株を物色する動きが再び強まっています。

第2位の「運輸・物流」では東急(9005)、京急(9006)、近鉄グループ(9041)などの民間鉄道会社が一斉に上昇しました。

オミクロン変異種の感染拡大で7月上旬に一斉に下落した経緯がありましたが、過去の感染拡大パターンを見ると、今回の感染者数は8月上旬にピークを打つことが考えられます。そこからいわゆるインバウンド銘柄に先回りの買い物が広がっていると見られます。大手海運株が早くも通期の業績を上方修正したことも、物流セクターのひとつとして業種を押し上げています。

第3位の「電力・ガス」では、中部電力(9502)が第1四半期決算での好調が評価されて大きく買い進まれました。岸田首相が記者会見で言及した「年内に原発9基の再稼働」という構想は、その後のマーケットでは大きな動きにはつながっていません。

反対に値下がりセクターの上位には「自動車・輸送機」、「電機・精密」、「医薬品」が登場しました。

値下がりトップの「自動車・輸送機」では、やはり今回の決算発表で自動車・部品各社が苦戦している状況から株価も軟調な動きとなりました。

トヨタ系の部品メーカーではデンソー(6902)、トヨタ紡織(3116)、アイシン(7259)がそろって急落しており、日産自動車(7201)も軟調です。半導体の調達不足で工場の操業度が上がらないところに、原材料高と3月末から5月にかけて発生した上海ロックダウンの影響が色濃く残っています。

同じく第2位の「電機・精密」でも、三菱電機(6503)、キーエンス(6861)、NEC(6701)、明電舎(6508)が同様に4-6月期の決算発表から急落しています。円安による為替差益は確かにありますが、それを打ち消すほどの原材料高、物流費・光熱費の上昇が響いています。

値下がり第3位の「医薬品」では、前の週まで堅調だったアステラス製薬(4503)、キッセイ薬品(4547)、ロート製薬(4527)などが軒並み大きく下落したことが響きました。エネルギー資源株に物色対象が戻っているために、その分だけ医薬品セクターには資金が向かわなくなっていることも考えられます。

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先週起こった出来事を少しだけ記しておきます。

7月26日、IMFは今年3回目の世界経済見通しの引き下げを発表しました。世界経済は4月の3.6%から3.2%に下方修正されました。米国は前回の3.7%から2.3%に引き下げられました。中国は4.4%から3.3%に、日本は2.4%から1.7%にそれぞれ引き下げられています。IMFは「世界はまもなく世界同時不況の淵に立たされる」可能性を指摘しています。

日本でも内閣府が7月25日に2022年度の実質成長率の見通しを、1月の3.2%から2.0%成長に下方修正する試算をまとめました。ウクライナ危機によるインフレと上海ロックダウンの影響を新たに考慮した結果となっています。これによって実質GDPがコロナ前に回復するのは当初の見通しより1年遅れて2023年度になります。

ただ、足元の月例経済報告では、7月の景気判断を「緩やかに持ち直している」に3か月ぶりに引き上げました。行動制限が解除されたことで旅行や外食などサービス消費が回復していることが要因です。

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日米で決算発表が相次いでいます。

米国では小売大手のウォルマートの今2023年1月期期の決算で、1株利益の予想を従来の前期比▲1%から▲11~▲13%に下方修正しました。インフレで消費者の消費行動が影響され、さらなる衣料品の値下げが必要になるという見通しです。

アルファベット(グーグル)の4-6月期の決算は、売上高が696億ドル(9.5兆億円)+13%、純利益は160億ドル(▲14%)でした。インターネット広告事業が鈍化して2四半期続けて減益でした。

マイクロソフトの4-6月期の業績は、売上高が518億ドル(7.9兆円)+12%、純利益は167億ドル(+2%)で市場予想を下回りました。クラウドサービスは堅調でしたがドル高が収益を押し下げました。

メタ(フェイスブック)の4-6月期の決算は、売上高が288億ドル(3.9兆円)▲1%、純利益が66億ドル(▲36%)でした。インターネット広告事業が伸び悩み、2012年の上場以来初の売上高の減少となりました。

広告は景気変動の影響を受けやすく、ザッカーバーグCEOは「デジタル広告も景気後退期に入ったようだ」と決算発表の場で述べました。

アマゾンの4-6月期の売上高は1212億ドル(16.2兆円)+7%、最終損益は▲20億ドルの赤字でした。売上高は過去最高を更新したものの、巣ごもり消費の一巡で伸び悩みも見られました。最終赤字は新興EVメーカーの株式評価損を計上したことが響きました。

アップルの4-6月期の売上高は829億ドル(11.1兆円)+2%、純利益は194億ドル(▲11%)でした。アップルが最終損益で減益となるのは7四半期ぶりのことです。ティム・クックCEOは上海ロックダウンで部品供給が滞ったため、と説明しています。

それでも供給制約が軽くなる7-9月は売上成長が4-6月と比べて加速する見通しから、アップルの株価は決算発表後は堅調な動きをたどっています。

日本企業の決算では、キヤノン(7751)、

(後略)

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鈴木一之