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2022年5月30日
米国株式が反転、NYダウ工業株は9週ぶりにプラスに
◎日経平均(27日大引):26,781.68(+176.84、+0.66%)
◎NYダウ(27日終値):33,212.96(+575.77、+1.76%)
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鈴木一之です。米国の株式市場が週間ベースでようやく反転、上昇しました。9週間ぶりのことです。
先週発表された米国の小売企業の2-4月期の決算内容が、心配されたほどには悪くなかったこと、およびFOMC議事録でこの先に過度な「タカ派」的な政策が打ち出される可能性が和らいだこと、このふたつがマーケットの弱気心理をわずかながら改善させる効果を持ちました。
それでも前の週までの歴史的な株価下落、NYダウ工業株が8週連続して下落した点については、議論に決着がついたわけではありません。
株価は経済の状況を最もよく映し出す鏡と言われます。それだからこそこれほどまでの株価下落は、明らかに米国の景気後退を示唆するものだ、という論調に始まり、それとは正反対にこのような株価の連続安記録は単にテクニカル的なものに過ぎないので、さほど意味があるものではない、という見方のぶつかり合いです。
4月から5月にかけては、ただでさえ米国の株式市場は軟調な動きを取りやすいものです。それだけに1932年以来、90年ぶりの続落記録となるとおもわず身がすくんでしまいます。
景気と株価との関連ではもうひとつ、S&P500指数のピークからの20%下押しでリセッション入り、という経験則も、今回の下げ過程で瞬間的には実現しました。したがってそれは弱気相場に入ったことになり、景気はリセッションに入ったという見方も日増しに強まっているようです。
昨年までの米国の強気相場を引っ張ったアップルは、上海ロックダウンの影響で生産が思うように進まず、この8週間で▲20%以上も下落しました。業績見通しが芳しくないアマゾンも▲35%の株価下落となっています。
問題の根源にあるのが物価の高騰と、それを抑え込もうとするFRBの急激な引き締め政策への転換です。先週半ばには、0.5%の利上げとQTを決定した5月3-4日のFOMC議事要旨が公開されました。
その中で、7月までに3回開かれるミーティングではいずれも0.5%ずつ利上げを行うことが適切、との議論が交わされたことが示されており、それを支持したメンバーが参加者の大半を占めたことも同時に明らかになりました。
事前に予想された内容の範囲内にあり、物価の先行きに対してはそれ以上の厳しい評価は目下のところ下していないことも判明しました。必要以上にタカ派的な論調ではなかったことが好感されて、週末にかけて米国の株式市場は大きく値を戻しました。ごく短期の悪材料はほぼ出尽くしたと見られます。
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加えて、2-4月期の決算発表を行ったメーシーズやダラー・ゼネラルの株価の高騰が。疑心暗鬼となっている米国の株式市場を安心させたのも事実です。
しかし前週はウォルマートやターゲットの決算悪化で市場全体が急落しており、まだ楽観は許されません。個々の企業の決算内容をひとつずつ確認しながら、前進後退を繰り返す状況からは抜け出し切れていません。業績相場とはそういうものです。
そうこうするうちに次第に株価の反応が、上昇するケースよりも下落する場合が強まってくることが増えやすくなります。インフレ期は企業業績は原材料価格の上昇につれて動くため、極端に上下に振れやすくなります。
新聞ニュースによれば、アマゾンの倉庫スペースには空きが増えており、それ自体が経営課題のひとつに浮上している模様です、旧・フェイスブックのメタやウーバーテクノロジーズが新規の採用を一時的に凍結したとか、個々の企業ではこれまでに見られなかった景気の悪いニュースが目立ち始めています。
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ウクライナ情勢も依然として混沌としたままで推移しています。2-3か月前と比べてニュース報道は減ってきましたが、こうしている間も東部地区での戦闘は続いており、先行きの落としどころがまったく見えない状態です。
EUとG7はロシア産石油の禁輸を決定しました。こうなるといつまでもサハリン1、2の天然ガスを輸入している日本に対して、世界の風当たりはますます強まる一方です。
経済制裁の抜け穴を防ぐという意味において、いつまでもロシア産エネルギーを使うことが許されるものではなくなっており、そうなると日本も代替エネルギーの調達先を急ぐ必要があります。原油や天然ガスの価格上昇が静かに続いており、インフレは着実に増殖しています。
原油ばかりでなく、この夏は世界的に食料危機が懸念されつつあります。ウクライナからの穀物輸出の生命線は黒海であり、そこからの輸出を再開させることがなによりも急がれます。
アサヒビールに続いてキリンも、10月からビールや缶チューハイの値上げを決定しました。家庭用ビールの値上げは2008年2月以来、14年ぶりのことで、人々の生活はますます防衛的にならざるを得ません。事態はなにも進展がないまま、株価だけが大きく上下に動いています。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが続伸しました。2週続けて上昇するのは3月中旬以来のことです。
しかし反発力は依然としてさほど強いものではなく、2週間の合計でも+1.3%程度のものです。3月中旬の時は1週間で+6%もの上昇が見られました。
規模別指数では、大型株、中型株、小型株がまんべんなく上昇しました。前の週に7週ぶりにようやく反発した東証マザーズ指数は、早くも下落に転じています。依然として小型グロース株には弱い動きが目立ちます。
テクニカル面では、日経平均のサイコロジカルラインは「7」の中立状態に貼りついています。騰落レシオも週末は99%で、こちらもほぼニュートラルの状態です。決算内容を確認した上で、上昇する銘柄と下落する銘柄がはっきりと分かれており、その分が騰落レシオの横ばいに表れていると見られます。
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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がり業種が13業種に広がりました。値下がり業種は4業種ですが、いずれも小幅の下落にとどまっています。
上昇率のトップは「金融(除く銀行)」です。決算シーズンの最終盤に決算を発表した東京海上HD(8766)、SOMPOホールディングス(8630)などがそろって上昇しています。
決算内容が好感された点、ウクライナ危機の影響がほとんど見られなかった点、合わせて大規模な自社株買いを発表した点、それらが株価を大幅に押し上げました。ジャックス(8584)、オリックス(8591)の信販、クレジット、リースも堅調です。
値上がり第2位の「不動産」は、三井不動産(8801)、三菱地所(8802)を筆頭に大手不動産が軒並み上昇しました。インフレ傾向が一段と鮮明になっている上に、日銀による金融緩和スタンスは当面変わりそうにないことが、不動産市場にさらなる資金流入をもたらすと期待されています。
値上がり第3位の「運輸・物流」は、空運、陸運、海運がそろって大きく上昇しました。これまでは陸海空の3業種がそろって上昇することはありませんでしたが、それが海運では業績好調の川崎汽船(9107)、株式分割を発表した日本郵船(9101)が牽引し、そこに経済再開期待で空運株と鉄道会社の株高が加わりました。
6月になると外国人観光客にも日本は一部ですが門戸を開くことになります。まさに「新しい日常」下でのインバウンド消費への期待がここからスタートします。
反対に値下がり率の上位セクターには「機械」、「情報通信・サービス」、「食品」が登場しました。いずれもその前の週まで堅調だった銘柄群が小幅ですが反落しています。
それでも機械セクターでは、引き続きガスタービン、および防衛軍事関連の三菱重工業(7011)、IHI(7013)が堅調でした。
受注好調の工作機械各社もDMG森精機(6141)、オークマ(6103)などがしっかり上値を追いかけています。建設機械のコマツ(6301)、住友重機(6302)も同様です。
「情報通信・サービス」もセクターとしてはマイナスでしたが、NTT(9432)、KDDI(9433)は揺らぐことなくしっかりしています。
また水際対策の緩和による経済再開期待から、ウェディングのテイクアンドギブニーズ(4331)、イベントのアミューズ(4301)、ツアー旅行のエイチ・アイ・エス(9603)、ホテルの共立メンテナンス(9616)の上昇が目立っています。
リクルートHD(6098)は
(後略)