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2024年10月15日

米国株式市場は最高値を更新中、ハリケーン、決算発表、衆院選

鈴木一之

鈴木一之です。どれほどの出来事が一度に起きたのでしょうか。日本の株価の変動は小さなものでしたが、あまりの目まぐるしさでうろたえているうちに1週間が過ぎてしまいました。

確実に何かが変わりつつあるようです。主だった出来事は以下の通りです。

(1)米国の景況感(ドル高への転換)
(2)ノーベル物理学賞、化学賞(AIの関与)
(3)小売セクター決算(セブン、イオン、ファストリ)
(4)衆院解散、総選挙

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週初は米国南部を襲った大型ハリケーン「ミルトン」の上陸の話題に集中しました。9月に「ヘリーン」が直撃したばかりの米国がまたもや激しい自然災害に見舞われました。

今回の「ミルトン」はフロリダに上陸し300万世帯が停電。少なくとも16人の死亡が確認されています。最大風速は時速249キロメートルで、タンパベイ・レイズのドーム球場は屋根が吹き飛ばされたそうです。想像することがむずかしいほどの猛威となっています。

この地区を管轄するアトランタ連銀によれば、ハリケーンが襲った地区の経済活動は少なくとも今後6か月間ほど続くということです。物流やエネルギー、消費への影響ももちろん、損害保険会社の保険金支払いも心配されます。

それでも米国経済は堅調です。NYダウ工業株、S&P500は週末もそろって史上最高値を更新しました。

決算発表シーズンが始まり、トップを切る金融セクターの決算内容が予想を上回る好調ぶりで、JPモルガンチェースの株価は+4.4%の上昇。ウェルズ・ファーゴも+5.6%と大きく値上がりしています。

インフレや中東情勢の影響など不安材料には事欠きませんが、毎回トップを切って発表される金融セクターの決算と株価が好調であれば、それに続く会社の業績もおおむね好調となる傾向があります。

これらの決算を受けて、投資銀行のストラテジストの中には早くもS&P500の予想レンジを引き上げています。

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米国の株価が堅調な理由は、企業業績のほかにも、米国経済そのものが絶好調の状態にあるためです。

月初に発表された9月雇用統計のポジティブ・サプライズがいまだに余韻として続いています。米国の金融政策はそれまでの引き下げ継続との見通しから、急速に利下げ幅が縮小する方向に向かっています。

10月10日(木)には9月のCPIが発表されました。これが市場の予想を上回る結果となって、ドルはさらに上昇する結果となりました。週末のドル円相場は1ドル=149円20銭までドル高・円安に振れています。

アトランタ連銀のボスティック総裁は11月のFOMCでの利下げ見送りを示唆したとも伝えられています。ドル円相場を巡って世界の投資家は、9月中旬以降に広まったドル安シナリオから、急速にドル高シナリオに方針を転換していると見られています。

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日本では何と言っても衆院が解散されました。岸田政権ではついに果たせなかった解散・総選挙に突入しています。公示は3連休明けの10月15日(火)で、街中にはちらほら選挙カーも見かけます。選挙用ポスターも張り替えられています。

衆参両院での代表質問を終え記者会見に臨んだ石破首相は、今回の衆院選を「日本創生解散」と名付けました。持論である「地方創生」から「日本創生」へと対象を一気に広げたことになりますが、争点が定まっていないためか、キャッチフレーズもかなり大味な感じがします。

野党第1党の立憲民主党は「裏金隠し解散」と呼んでおり、その方が実感に近いように思います。解散の大義名分が見当たらず、政権が発足したばかりで内閣支持率が高いうちに、面倒な物事はさっさと済ませてしまうという印象が強く感じられます。

世論の風を受けて石破首相は、収支報告書不記載の議員の非公認に踏み切りました。「10増10減」下での初めての総選挙で勢力図がどのように変わるのか。誰にも読めません。

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政権交代を唱える野党の意気込みは相当のものですが、しかし野党共闘の道はほぼ閉ざされています。

勝敗ラインは「自公合わせて過半数」とかなり低く設定されました。株価は堅調、賃上げは大手企業を中心に順調に進み、インバウンドを中心に消費も好調です。このような経済環境であれば、石田首相の政策がどんなに前言撤回、ブレブレとなっても与党の勝利は(現時点では)ほぼ確実と見られています。

公示後すぐに第1回目の世論調査がメディア各社から出てくると見られます。それが最初のカギを握ります。番狂わせはどこかにあるのか、焦点は早くも来年の参院選に向けられています。

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日本の小売セクターの決算発表では、何と言ってもセブン&アイ・ホールディングス(3382)です。

10月10日(木)に発表された第2四半期の決算では、売上高は+8.8%の6兆355億円と伸びましたが、営業利益は▲22.4%の1869億円と大きく減少しました。

国内コンビニ部門が売上、利益ともに減少したのに加えて、成長戦略の中核に位置づける海外コンビニ部門が▲35.0%の営業減益となったことが響きました。米国を中心に消費の二極化が進み、中低所得者の消費が厳しいという状況が浮き彫りになっています。

同時にセブン側は、カナダのアリマンタシォン・クシュタールから買収金額の再引き上げが提案されたことを認めましたが、詳細は守秘義務によって語られませんでした。

代わりに「株主利益の最大化を図る」ための事業構造改革案が公表されました。

内容は、(1)イトーヨーカ堂、ヨークベニマル、デニーズなどスーパー、外食企業を中間持株会社「ヨーク・ホールディングス」に集約する、(2)「ヨークHD」を将来的に外部に売却する、(3)コンビニ事業に集中、「セブンイレブン・コーポレーション」へと社名を変更する、(5)セブン銀行とも資本関係を見直す(案)、となっています。

巨大企業の構造改革には時間がかかります。海外企業からの買収提案と自らの構造改革。先に動き出すのはおそらく前者と見られますが、ここからの株価の行方が気になるところです。

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このほかにも、イオン(8267)の減益転落、ファーストリテイリング(9983)の大幅増益、Jフロント.リテイリング(3086)の好調、吉野家HD(9861)の苦戦が明らかになりました。

「金利ある世界」における金利上昇ばかりでなく、現在の企業経営にはかつてはなかったようなコスト上昇要因がいくつも降りかかっています。そのような状況では勝者と敗者がはっきりと分かれるようになります。

今回の小売セクターの決算発表で見られる「二極化」現象は、1か月後に始まる3月決算企業の決算発表にもそっくりそのまま引き継がれるでしょう。企業間の優劣をしっかりと見定めるべきところに来ています。

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先週の東京株式市場はTOPIXが反発しました。上昇率は+0.45%と小さく、前の週の▲1.71%と比べるとかなり弱い反発でした。

前の週に軟調だった大型株が反発し、大型株指数は+0.89%と上昇しました。一方で小型株指数は▲0.62%、中型株指数は▲0.33%といずれも続落しています。

スタイル別でも大型株が堅調です。大型グロース株が+0.99%、大型バリュー株が+0.20%とそろって上昇したのに対して、小型グロース株は▲0.45%、小型バリュー株が▲0.80%とどちらも下落しました。大型株優位の展開となっています。

騰落レシオは、115.17%(月)~101.98%(木)の範囲で推移し、週末は106.39%と中立付近で終わっています。日経平均のサイコロジカルラインは「9」に高止まりしています。

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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが7業種、値下がりセクターは10業種となりました。

値上がり上位のセクターは「銀行」、「小売」、「電機・精密」です。

値上がりトップの「銀行」は、米国で長期金利が再び上昇傾向に向かったことが株価を押し上げています。三菱UFGFG(8306)、三井住友FG(8316)、りそなHD(8308)の大手銀行が堅調でした。ただし地銀株にはまだ明確な動きは出ていません。

値上がり第2位の「小売」は、ファーストリテイリング(9983)が週末にかけて好決算から大幅高となり、セクター全体の動きを牽引しました。

ほかにもアダストリア(2685)、パルグループ(3726)、しまむら(8227)、ユナイテッドアローズ(7606)など、決算内容のよかった小売の主力銘柄が上昇しています。

値上がり第3位の「電機・精密」では明暗が分かれました。電機セクターはアドバンテスト(6857)、キヤノン(7751)、リコー(7752)などごく少数の銘柄に上昇が限られています。

それに対して精密セクターでは、テルモ(4543)、オリンパス(7733)、島津製作所(7701)、ニコン(7731)、HOYA(7741)など、代表的な銘柄の多くがいずれも週を通じて株価が堅調でした。

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値下がりセクターは「商社・卸売」、「不動産」、「建設・資材」でした。

値下がりトップの「商社・卸売」は資源価格が一服したのに合わせて三菱商事(8058)、

(後略)

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鈴木一之