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2021年3月31日
続落のあとに急上昇、年度末の相場は需給的に神経質な展開
◎日経平均(26日大引)29,176.70(+446.82、+1.56%)
◎NYダウ(26日終値)33,072.88(+453.40、+1.38%)
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鈴木一之です。関東地方は桜が満開です。
好天も続いていて、例年であれば絶好のお花見日和となりますが、今年はそうはいきません。新型コロナウイルスの感染者数が再び増加傾向にあります。
緊急事態宣言は解除されたばかりですが、一市民の素直な感情として再々発動されるのだけは避けてほしいものです。
そのあたりを反映してなのか、先週の株式市場は上に下にと、激しい値動きが見られました。日経平均の変動で言えば、先週は週前半に4日続落して28,300円台まで▲2,000円近く急落したあと、今度は週末に向かって2日間で+800円近く値を戻しました。
銘柄物色の中身に関しても、それまでの大型バリュー株への資金シフトが徐々に一巡して、小型成長株へと再び物色の拡大が見られます。株式市場を取り巻く情勢は不透明になっており、数えきれないほどの懸念材料が持ち上がっている状態で、なんとか踏みとどまっている状況です。
懸念材料として挙げられるものは以下の通りです。
(1)ドイツをはじめ欧州でのロックダウン強化
(2)米国と中国の対立激化、欧州の制裁強化
(3)日銀の金融政策決定会合後のETFの買い入れ状況
(4)スエズ運河での大型船座礁の影響
(5)ルネサスエレクトロニクスの工場火災の影響
ざっと挙げただけでもこれくらいです。それぞれの懸念材料の概観だけでも見ておきます。
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(1)ドイツをはじめ欧州でのロックダウン強化
今週末はもう4月です。ヨーロッパ各国はイースター休暇を控えており、感染拡大を恐れて外出禁止令が強化されつつあります。
フランスは感染拡大の第3波に入ったとして、パリが4週間の外出制限に踏み切りました。イタリアもロックダウンを強めています。
ドイツも3月23日(火)にロックダウンの延長を決定しましたが、これを一夜にして撤回しました。メルケル首相は政策の過ちを認めましたが、そこまで混乱が広がっている様子です。
日本も他人事ではありません。3月27日(土)は日本全国で2日続けて2000人を超える新規の感染者が確認されました。東京は430人で3月の最多を更新しました。大阪も386人で2日続けて300人台となっています。感染再拡大、リバウンドは徐々に明らかになっておりいます。
米国は立ち位置が異なります。3月25日に初めての記者会見に臨んだバイデン大統領は、ワクチンの接種を4月末までに2億回にまで増やし、従来の目標ペースを2倍に引き上げました。2兆ドル近い経済対策を決定したばかりですが、早くも次の対策を3兆ドル規模で組む方向でいます。
米国の株式市場は先週末に再び史上最高値を更新しています。ここに来て感染症への対処法は各国それぞれかなり違いが出てくるようになりました。
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(2)米国と中国の対立激化、欧州の制裁強化
10日前の3月18日、米国のブリンケン国務長官と中国の楊(ヤン)政治局員がアラスカのアンカレッジで会談を行いました。そこで繰り広げられた激しい非難の応酬は世界中の人々の目に焼きつけられました。
米国が中国に対して人権問題上で「深刻な懸念」を指摘すれば、中国は米国に対して「内政干渉だ」と猛烈に反発しました。1時間以上にわたってわざわざメディアの前で激しい言葉の応酬が繰り出されました。
米国の動きに呼応して欧州は先週、ウイグル自治区の人権侵害に対して制裁を発動しました。天安門事件以来、30年ぶりのことです。中国もすかさず欧州への制裁を発動し、「新冷戦」は懸念という段階から現実のものへと移りつつあります。先週の株安の原因のひとつがこの辺にある可能性も否定できません。
(3)日銀の金融政策決定会合、ETFの買い入れ状況
3月18-19日、日銀が金融政策決定会合を開催し、金融政策の「点検」を行いました。そこでこれまでの緩和政策に若干の変更が行われ、何かと議論の対象となっていたETFの買い入れに対して「年6兆円」の枠を外し、同時に日経平均型のETFではなく、買い入れ対象をTOPIX型に限定しました。
株価が下落した時には機動的に買いを入れることは変わりありませんが、以前ほどには市場への資金注入は活発ではなくなることは避けられない状況です。先週からファーストリテイリング(9983)やソフトバンクG(9984)など、日経平均への影響度の大きな銘柄が下落しやすい状態となっています。
実際に先週の株価の動きを見てみると、3月22日(月)に日経平均が▲617円の下落を記録した時に、日銀は501億円のETFの購入を実施しました。同じく3月24日(水)にやはり▲590円下落した時も701億円のETFを購入しました。買い入れ額としては今年最大です。
午前の時点で▲2%以上の株価下落があった場合は、これまで通りにETFへの買いを入れてくるようです。それがはっきりしたことでひとまず市場参加者は安心したと見られますが、週後半の株価の持ち直しにどこまで影響したのか、定かではありません。
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(4)スエズ運河での大型船座礁の影響
(5)ルネサスエレクトロニクスの工場火災の影響
市場を取り巻く状況は刻々と変わります。世界ではあらゆることが起こっており、それがどこまでマーケットの地合いに影響するかは、その時のモメンタムの強さによって変わります。
マーケットの地合いが強い時であれば平気で吸収できる材料も、地合いが弱っている時は埋め止めきれずに株価の勢いは一段と弱まってしまいます。
エジプトのスエズ運河で大型コンテナ船が座礁事故を起こし、狭い運河の航路をふさいでしまった一件では、当初考えられていた以上に復旧に時間を要することが次第にわかってきました。この問題に関して今後の展開はさらに不透明さが増しています。
ルネサスエレクトロニクスの工場火災もそうですが、今回のような不測の事故は決してヒマを持て余しているような職場では起こりません。繁忙を極めるような場所で発生します。
コロナ危機で人々の流れが途絶えたままの状況が続いていますが、その分だけ物流のニーズは高まっています。コンテナ船のコンテナが世界中で不足しており、海運業界は貨物船市況の上昇によって恩恵を受けますが、それ以外の業界はコストアップに直面しています。
サプライチェーンはますます寸断されるリスクが高まっており、自動車業界をはじめ在庫を多めに抱える機運が続くことでしょう。生産が落ちない、生産を落とさない状況が生じ座礁事故や火災で一時的な影響は避けられないとしても、少し長い目で見ればプラスの要素に転じてくる事案ではないかと思います。
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先週の株式市場の動きについて。
3月第4週の東京株式市場は、TOPIXが4週ぶりに反落しました。すでに述べたように、非常に不透明感の強い地合いとなり、そこに3月の期末要因が重なって軟調な動きが広がりました。
下落幅は▲1.39%とさほど大きなものにはなっておりません、これは週末にある程度の持ち直しがあったためです。それまでの3週間の値上がりで+8%近く上昇していたことから見れば、比較的小さな下げでもあります。
物色の動向は、大型株よりも小型株が選好された週となりました。規模別指数では見えにくいのですが、小型グロース株に流れが戻りつつあります。大型バリュー株は上昇の一服感が強まっています。
東証2部株指数の下落は▲0.69%にとどまりました。反対に東証マザーズ指数は▲2.56%も下げています。REITは堅調を持続しており、東証REIT指数は3週連続での上昇となりました。
TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、3業種だけが値上がりし、14業種がマイナスとなりました。
値上がりしたセクターのトップは「電力・ガス」です。北陸電力(9505)が2021年3月期の業績の上方修正を発表しており、コスト削減効果が大きく出ています。東京電力(9501)を除くそれ以外の地方電力株も総じて堅調です。
マーケットでは「最後の出遅れ株物色」と見る向きもあります。福島第一原発事故で認識がすっかり変わってしまいましたが、以前は電力株それ自体が配当利回りも高くバリュー株、資産株として位置づけられていました。
温暖化ガス削減を目指して再生可能エネルギーを重視する世の中になれば、電力エネルギーのあり方も大きく変わります。日経平均に続いてTOPIXも30年ぶりの高値圏に到達しています。徐々に往時の認識に戻りつつあるのか、電力株の位置づけそのものが変わってゆくのか。ここからの動きが非常に興味深いところです。
値上がりセクターの第2位は「資源エネルギー」、第3位が「食品」でした。いずれも前の週までセクター騰落率の下位にあった業種です。それが相対的に浮上しました。
実際にキユーピー(2809)、日清製粉G(2002)、三井製糖(2109)、森永乳業(2264)、SFOOD(2292)など食品株の堅調さが目立ちます。巣ごもり消費は社会に定着し、コロナ危機が去った後もしばらくは残るような気配さえ感じられます。誰もが内向き志向になりつつあるように感じられます。
家の中の楽しみはやはり三度の食事ですので、現在の食品株の強さもなんとなくわかるような気がします。
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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)
「電力・ガス」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=281&mode=D
「エネルギー資源」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=272&mode=D
「食品」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=271&mode=D
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反対に値下がりセクターのトップには「銀行」が登場しました。▲3.5%の大きな下げとなっていますが。その前の週まで大幅高を続けただけに、反動安が出たものと見られます。
「銀行」に続くマイナス業種の一角に「自動車・輸送機」も入っていますが、これも前の週に大きく買われたセクターです。下落というよりも、上昇一服という動きが広がったためととらえられます。
このほかにも値上がりセクターには、「運輸・物流」、
(後略)