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2024年10月29日
衆院選、米大統領選の直前で動けず、日経平均は週足で続落、2か月ぶり
鈴木一之です。もうすぐハロウィンです。暑かった今年の夏がだらだらと残暑を繰り返していましたが、さすがに秋も深まってきました。気がつけばお正月のおせち料理の予約受け付けが始まっています。
マーケットは神経質な展開を続けています。週を通じてニュースの大半が米大統領選に関する話題でした。その合間に日本の衆院選の状況が伝えられています。
先週のマーケットの主だった話題は以下のようなものです。
・トランプトレード
・ドル高・円安(1ドル=153円台)
・BRICS首脳会議(中露、中印、印露のトップ会談)
・日米での決算発表
・東京メトロ(9023)上場
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選挙イヤーの今年、最後を締めくくる米大統領選の投票まで10日を切りました。民主vs共和の戦いはぎりぎりの終盤までほぼ互角の状況です。
どちらが勝つかまったくわからない状況となっていますが、どうやら世間ではトランプ大統領の誕生を予想している様子で、「トランプ・トレード」に大きくポジションを傾けているようです。
「トランプ・トレード」、それはすなわち財政赤字の一段の拡大を見込んでの金利上昇、ドル高です。ひょっとしたら勝敗はもはやどちらでもよくて、勝った場合の市場に与えるインパクトの大きさを天秤にかけて、相対的にリスクの大きな「トランプ・トレード」に流れているようにも見えます。
あまりポジションが傾き過ぎると、通過後の反動が警戒されるようになると思います。
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日本では衆院選です。本日が投票日。短い選挙期間はあっという間に終わりました。直前の各メディアによる情勢分析では、自公合わせても過半数に届かないという状況です。
過半数どころか、自民党は247議席の改選前議席数に対して、当落線上にいる候補者が120人くらいにのぼるということですから、歴史的な惨敗になりかねません。
やはり自民党総裁選のシコリが影響していると見られます。決選投票で高市早苗氏の支持に回った麻生派を中心に、自民党の半数がそっぽを向いてしまっては戦うことすらできません。
「菅vs反菅」の総裁選での内紛がそのまま選挙に持ち込まれ、そこに非公認候補への政党交付金・2000万円支給問題です。知恵者はみんな反主流側にいるので、このような厳しい事態は目に見えていたようにも思います(まだ投票結果が出ていませんのでわかりませんが)。
かと言って野党もまったくの力不足で、自民党が自滅しただけで終わりそうです。与野党の政策にほとんど差がなく、どこを見ても将来をゆだねるに足る人材に欠いていると言わざるを得ません。2009年のような政権交代の国民的な熱気はまるで感じられない状況です。
60年近く続いてきた「選挙は買い」という株式市場のアノマリーも、単純には踏襲できなくなりました。週明けの株式市場が気がかりです。
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政治の世界で先週、注目されたのは、BRICS首脳会議です。36か国の首脳が集まってロシア西部のカザンで開催されました。そこで中露、中印、印露のトップ会談も行われました。
ウクライナへの軍事侵攻を非難され、西側世界からは経済的に締め出されているロシア。プーチン大統領とインドのモディ首相と中国の習近平・国家主席がそれぞれ会談を行い、中でも中印首脳会談が5年ぶりに開催されました。悪化していた両国関係の修復が始まっていることが印象づけられました。
インドは「インド太平洋」地域を巡る米国、日本、豪州との間で「Quad」の枠組みを構成しています。最近ではカナダのシーク教徒殺害事件で摩擦を引き起こしており、この機に乗じて中国やロシアは、インドを自陣に取り込む動きを強めています。
北朝鮮はロシアに3000人を超える正規軍を派遣し、武器弾薬に続いて軍隊までもウクライナ戦争に投入される可能性があります。アメリカ一極集中と言われる現在の世界経済に、BRICS首脳ははっきりと線引きを示したことは要注意と見られます。
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その中国ですが、追加の経済対策として最優遇貸出金利(ローンプライムレート)の引き下げを発表しました。企業向けの貸出金利の基準であり、前月までの3.35%から3.10%に引き下げました。1年物金利の引き下げ幅はこれまででも最大です。
最近発表された中国の7-9月の実質GDPは、前年比+4.6%にとどまっています。4-6月の4.7%からさらに減速し、不動産不況の長期化と消費の低迷が続いています。
中国政府は景気テコ入れに大きく舵を切りましたが、金融緩和に頼るだけでは目立った効果は表れていないようです。より本質的な問題である需要不足、不動産分野への財政出動にどの時点で踏み込むのか、その点が注目されます。
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そして米大統領選です。投票まであと10日を切ったという時点でも激しい接戦を繰り広げています。特に激戦州とされる7つの州において、両陣営の差がいずれも2ポイント以内という歴史的な僅差で最終盤を迎えています。
ただしそれでもトランプ前大統領がわずかながらリードしているようで、マーケットは「トランプ・リスク」を織り込むような形で推移しています。
その最たるものが金利と為替レートです。「トランプ大統領」の誕生でトランプ減税が延長され、財政赤字の拡大から米国の長期金利が上昇しています。
そこから日米間の金利差拡大によって円売り・ドル買いが広がりました。先週半ばには1ドル=153円台まで円が下落して3か月ぶりの安値を記録しました。
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大統領と議会上下院の3つとも共和党が占める「トリプル・レッド」になれば、関税が引き上げられ、インフレが再燃して財政悪化も懸念されます。市場では160円までドル高・円安が進むとの可能性まで警戒されるようになりつつあります。
加えて米国経済の好調さが加わります。マクロ経済統計にはデコボコがつきものですが、米国経済は総じて堅調な状況を示しています。FRBによる緩和スタンスは当初予想されたほどには強くはない、との見方も広がっています。
先週はIMFが四半期に一度の「世界経済見通し」を公表しました。世界全体では2025年は横ばいの3.2%の成長を見込んでいます。
主要国では米国だけ見通しを引き上げており、「米国1強」という状況が続くと予想しています。ソフトランディング・シナリオが一段と確かなものになりつつあります。日本は2023年の1.7%成長から、2024年は鈍化して0.3%成長になるとの見込みです。
今週末には10月の雇用統計が発表され、来週のFOMCへとつながってゆきます。日本では円安メリット株の一部が物色され、円高メリット株は大きく下落しました。
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先週の東京株式市場はTOPIXが続落しました。下落率は▲2.63%とかなり大きく、前の週の▲0.64%から下げ幅を広げました。
大型株は依然として優位性を保っていますが、その大型株指数でも▲2.37%の下げ幅に達しました。小型株が引き続き軟調で▲3.54%の下げとなっています。グロース250指数は▲5.47%も下落しました。
バリュー株とグロース株の差はほとんどなくなり、両者とも大きく下落しています。大型バリュー株指数は▲2.84%、大型グロース株指数は▲2.24%を記録しました。
騰落レシオは比較的高い水準を保っていましたが、先週末は87.97%まで急低下しています。8月9日以来の低水準です。日経平均のサイコロジカルラインは「6」を3日間続けるまでに低下しています。こちらも9月26日以来の低水準となりました。
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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが「自動車・輸送機」の1業種だけにとどまりました。値下がりセクターは16業種に広がっています。
唯一の値上がりセクターとなった「自動車・輸送機」はトヨタ自動車(7203)を中心に、三菱自動車(7211)、デンソー(6902)、アイシン(7259)、スバル(7270)など自動車株が逆行高となりました。素直に円安を評価したものと見られます。
ただし上昇する銘柄は限定的で、NOK(7240)、プレス工業(7246)、シマノ(7309)など関連企業の株価の多くは下落しました。
下落したものの下げの小さなセクターは「食品」と「電機・精密」でした。
「食品」ではアサヒGHD(2502)、キリンHD(2503)のビール各社の株価上昇が支えです。それを除けば山崎製パン(2212)、日清製粉HD(2002)、日本ハム(2282)、日清オイリオグループ(2602)など、円安をデメリットとする食品株を中心に下落する銘柄が目立ちました。
「電機・精密」も同じく、日立(6501)、ニデック(6594)、キヤノン(7751)、アドバンテスト(6857)など上昇する銘柄は限られ、ソニーG(6758)、KOKUSAI(6525)、NEC(6701)のように下げの目立つ銘柄も数多く見られました。
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反対に値下がりセクターの上位には「銀行」、「電力・ガス」、「機械」が登場しました。
「銀行」セクターは4週ぶりに下落に転じました。米国で金利の上昇が続いていますが、その部分を評価しながら株価は上昇してきただけに、市場全体が軟調な動きに変わる状況で売り物先行となりました。
「電力・ガス」も反落しました。生成AIの普及に伴って電力需要が増大するとの見方は強いものの、電力株にはこのところ軟調な動きが目立ちます。
自民・公明の与党過半数割れが近づいており、原発再稼働の計画が思いどおりに進むのか。野党の主張する原発政策の見直しに対して警戒感が出ていることが一因とも考えられます。
値下がり第3位の「機械」は、IHI(7013)、川崎重工(7012)、三菱重工(7011)の造船重機3社がそろって軟調でした。ここでも自公過半数割れ、防衛政策、原発政策の先行きに対して警戒心が先走っています。
そのほかにもクボタ(6326)、
(後略)